キツネつきのお殿さま

唯純 楽

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浮気ものへのおしおき 12

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「私は、秋弦さまとつがいになりたいのです。人間でも、狐でも、狼でも……秋弦さまとならば、よいつがいになれます」

 昨夜からずっと探していた温もりを受け止めたはずなのに、どういうわけか、なお一層秋弦の胸は痛んだ。

「私も、秋弦さまのお傍にいられないと、寂しくて……尻尾が減ってしまいます」

 柔らかい唇を慎ましく重ねてくる楓を貪ったりしないよう、秋弦は膨れ上がる欲望を抑えるため、別のことを考えようとした。

 減った尾は元に戻るのか、とか。今は四本でも、いずれ増えるのだろうか、とか。九尾以上の尾を持つ狐はいないのだろうか、とか……。

「秋弦さま……他の女子のことを考えては、いやです」

 秋弦が集中していないことに気付いた楓が、秋弦のわき腹をぎゅっとつねった。

「うっ! ま、待て、楓っ! ご、誤解だっ!」

「銀嶺の国の使者は、お姫さまとの縁談を持って来たのでしょう? お姫さまと会う気でいると右近左近から聞きました。断らなかったということは、子種を注ぐ気では……?」

 きらりと光る金の瞳に睨まれて、秋弦は違うと首を振った。

「ち、違う! 更姫との縁談を断らなかったのは、顔合わせの場を設けて、向こうの様子を探ろうと……」

「右近左近は、人間は求愛したその日に交尾はしないと言っていましたが、秋弦さまは私が夜這いしたその日に……しました」

「あれは、楓がっ!」

「私が……こうしたからですか?」

 上目遣いで見上げる楓の金の瞳に捉えられると、身体が痺れて動けなくなった。

◇◆◇

――いくら楓に煽られたからと言って、これではまさに盛りのついた犬。

 さんざん秋弦に貪られ、はぁはぁと荒い呼吸を繰り返す楓を見下ろしていると、鎮まったはずのものがゆらりと立ち昇る。

「んん……秋弦さま」

 突き動かされるままに口づけると、楓はうっとりと幸せそうな顔をする。

 そんな楓を見るだけで、暗く沈んでいた心が少し軽くなる。

 唇を離そうとするたびに、追いかけてもっとと強請る楓の姿に、つい「午後の政務もなしにする」と言いたくなる。

「楓、残りの手は今夜……」

「はい、秋弦さま。さきほどのも四十八手の手の一つでしたので、今日で六手。毎日六手ずつで、八日で一通り全部お試しできますね!」

 目を輝かせる楓に、秋弦は「そうだな……」と返すだけで精一杯だった。
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