キツネつきのお殿さま

唯純 楽

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さんにんよればXXの知恵 6

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「いい加減、別の傘に移らなきゃならねぇってわかってんだけどよ。しっくりくるのがなかなか見つからなくて、ずるずると先延ばしにしているうちに、穴だらけになっちまって。これじゃあ傘化けじゃなくて、骨化けにならぁな」

「別の傘に移る……?」

 どういうことだと秋弦がつい聞き返すと、一本足の傘はくるくると回って、頭部分に描かれた白い円をくっきりと浮かび上がらせる。

「似たような年季の入った傘があれば、そっちへ引っ越すのさ。しかし、最近俺の趣味に合う、いい塩梅のものが見つからねぇときたもんだ」

 年季の入った傘を探せと言うのだろうか。

 それはなかなか難しそうだと秋弦が腕を組んで考え込んでいると、一本傘は「そうじゃねぇよ」と答えた。

「そっちは自分で気に入ったのを見つける。殿さまには、ちいと修繕を手伝ってもらいたいんだ。腕はあっても見えねぇから、自分ではうまく継ぎ接ぎできねぇんだよ」

 確かに、見えない状態ではどこをどう修繕すればいいかもわからないだろう。
 秋弦が、和紙で接ぎを当てればいいのだろうかと問えば、傘はそうだと頷く。

「好みってもんもあるからな。和紙は持参した」

 傘の内側から差し出されたものを見て、秋弦は口を開きかけてやめた。

「なかなかいいだろう? 闇夜に黒は目立たねぇからな」

 確かにそうだが……桜色で、しかも花びら型というのはどうなのだろう。

 妖とは、人を脅かすのが――少なくとも驚かせるのが仕事の一部ではなかったかと思うが、桜の花を散らした一本足の傘が現れたら、怯えていいのかどうか迷いそうだ。 

 しかし、四の五の言っていても、始まらない。 
 さっさと修繕して、さっさとお引き取り願わなければ……。

「よし、わかった。さっそく取り掛かろう」

 秋弦が和紙を手にして一本足の傘に床へ転がるよう命ずると、楓も手伝うと言い出す。

「糊はどうする?」

「舐めれば貼れる」

 妖の和紙なのだろうと、深く考えずにぺろりと舐めて、穴のある場所にぺたりと貼る。
 不思議なことに、桜の花びらは穴の大きさに合わせて自由自在に伸び縮みする。

「……なんだか、甘い味がします」

 隣の楓が首を傾げながらぺろりぺろりと和紙を舐めて傘に貼ろうとするのを見て、秋弦はとっさにその手を掴んで引き止めた。
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