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異世界と哀れな少年
第11話 国王
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山田 孝視点
8人もの人の命が失われたというのに、城の中は騒然とする事も無く穏やかだった。
いや、銃の暴発で死んだ小倉も合わせれば9人か。
9人のクラスメイトを失って流石に俺も勇治も城の外でレベルアップって感じじゃあ無くなって。
それから俺達はこの世界の葬儀を体験する事になった。
9人のクラスメイトの訃報は俺等異世界人全員に伝えられ、一部の人間を除く殆どのクラスメイトが白い大理石で出来た神殿に集まった。
この国の最高位の司祭様だという女性は小柄だった。
もっとも、白いフードを深く被っているためほぼ顔は確認出来なかったが。
「天に住まわし麗しの
貴方に乞い 願い奉りまする」
その女性の発した声は少し高く、澄んだものだった。
司祭様の祈りの言葉と共にクラスメイトのすすり泣く声が聞こえ、それらの視線は祭壇の下に白い布で巻かれた死んでしまったクラスメイトへと注がれている。
そして司祭様の声が徐々に高まり、
「今は一度天へと帰り
また出会うべく一時の眠りにつけ!」
「ファン・アー・イート!」
そう一際大きく祈りを捧げると、白い布にくるまれたクラスメイトが淡く光って、
何となく、
(天に召されたのだろうな)
なんて思った。
これでお仕舞いと言わんばかりに、司祭様は立ち去り、クラスメイトの遺体が運び出されると、
空城達が囲まれて質問攻めにされた。
「何があったんだよ!」
そう聞かれた空城は、
「酷かった、もう少しで砦に付くというその時に、魔物に馬車が囲まれ、止む負えず俺達も馬車から降りて魔物と戦ったんだが、、、彼等は悲しくも、、、」
「スキルは?スキルはどうだっだんよ!」
「当てる事が出来なかった。俊敏に俺達の攻撃を避けて、、、」
「敵は?そんなに強い魔物が現れたのか?」
空城は少し躊躇いながら、
「、、ゴブリンやオーク」
空城を囲んでいる中の一人が、「ちょっと待てよ!ゴブリンやオークなんて雑魚じゃないか!そんな奴等も倒せなかったのかよ!」と捲し立てる。
「いや!オーガもいた!」
オーガか、
クロードさんからオーガとは絶対に戦うなと言われてた。
オーガと聞いて空城を囲む奴等も黙る。
そして「田中君もいた」そう空城が言った。
すると田中と唯一仲の良かった神田 彩香が、「ウソ!無事だった!田中君は?ちゃんと生きてるの?」そう言いながら空城に詰め寄るが、
空城は冷たく、「無事さ、オーガ相手に無双してたよ」と言い放つ。
その言葉に、「嘘だろ?」とか、「田中のくせに?」、「アイツがそんな事出来る訳がねぇ」とか、皆色々言っている。
「それに田中君は彼等を見殺しにした」
その言葉に全員が息を飲む。
がしかし、俺達が今まで田中にしてきた事を思えば文句は言えない。
田中からしたら俺らを助ける理由が無いだろう。
しかしそれからも空城は何度も繰り返し田中を責める言葉を口にした。
「田中君はクラスメイトが死んでも何にも感じないと言っていたよ」
だとか、
「田中君は手と足の無い女性を奴隷として連れ回してた。しかも、彼は多分その女性を強姦する事で強くなっていた」
他にも、
「田中君は死んでしまった彼等をゴブリンやオークと比べて、たいした違いは無いとも言っていたよ」
そんな言葉を聞いて自分より弱い顔から血の気が引くのを感じた。
今まで田中にしてきた事を思い出したからだ。
自分の受けていたストレスをいつも田中にぶつけて発散させていた。
会ったら殺される?
そんな事が頭に浮かぶ。
さっきコイツらはゴブリンやオークを雑魚だと言っていたが、俺には正直言って強敵だった。
それに、最初ゴブリンを一匹殺すのにどれだけ時間が掛かったか。
それは力の差が問題だった訳じゃない。
命を奪う事に対する恐れだ。
俺と勇治がクロードさんに剣術を教えて欲しいと頼んだその日、クロードさんは俺と勇治を城の外に連れ出すと、瀕死のゴブリンを二匹連れてきた。
そしてクロードさんは、「では、このゴブリンに止めを刺してください。そうしたらお二人に剣術を教えて差し上げましょう」そうニコニコしながら言った。
俺と勇治は剣を渡されて、地面に転がるゴブリン相手に剣を構えてたままで、剣を降り下ろす事が出来ずに何時間も震えていた。
それでも何とかゴブリンを殺して、クロードさんに認めてもらい。ゴブリンを自分達だけで殺せるように成るにはかなり時間が掛かった。
ましてや、オークなんて力も強いし、体格も俺らと変わらない。
そんな相手を雑魚だと言えるのは確実に魔物を殺した事の無い奴の発言だろう。
そして、田中はオーガ相手に無双した。
つまり、オーガ相手に一人で十分に立ち回れる力量を身に付けたって事だ。
田中がそこまでの力を付けたなんて、、、。
もしも田中が俺達を殺そうと襲ってきたら、、、。
そう思い唇をグッと噛んだ。
・
クロード・ティント視点
「どうであった?」
という言葉の言葉に「ハッ!」と返事をして、敬礼したまま喋る。
「予定していたダンジョン内での殺害にはなりませんでしたが、クウジョウツルギとその取り巻き女3名を除く8名の転移者の間引きに成功いたしました!」
「よくやった」
そう国王は頷いた。
どうしてダンジョン内での殺害に至らなかったかは別の者が説明済みだ。
「して、クウジョウとやらをクロードはどうみる?」
「豚に真珠という言葉が一番似合うかと。スキルはかなり強力で、汎用性も高いかと思うのですが、短慮で、感情に直ぐ身を任せます。そしてプライドも高く人の言う事にはなかなか従いません。契約魔法で奴隷にするぐらいしか私には使い道は思いつきません」
俺がそう言うと国王様は首を左右に振って、
「やはりな、、、。本当にエマは人を見る目が無い」
と言った。
エマとは王女様のお名前で無論国王様のお子様であらせられる。
国王様はこの国の元首の座をエマ様にお譲りになったのだが、エマ様の治世は中々国王様の思うようには成らず、
そして、今も気落ちしていらっしゃる国王様を少しでも元気付ける為に吉報をと思い口を開く、
「タナカヨウイチなる者との接触に成功しました!」
「ふむ、どうであった?」
「神聖魔法の使い手と確認しておりましたので、わざとオークに腕を切らせその傷をタナカヨウイチに治させたのですが、
『レビ様に傷を治し直して頂く必要はありません』
完治しております」
俺がそう言うと、国王様は目を見開いて、
「まことか!」
そう言った。
傷を負うと神聖魔法で傷を治したり、ポーションという魔法薬で傷を治したりするのだが、深い傷はどうしても治しきれない所があった。
それは、高価なポーションを使ったり、より高位の神聖魔法の使い手に治してもらう必要があるのだか、骨を切られて完治させる事の出来る神聖魔法の使い手はこの国ではレビ様の他にはいらっしゃらない。
「そこで、申し訳内のですが、国王様より、『謝罪として金貨一万枚を即支払う準備がある』とお伝えしてしまいました」
「良い、良く判断できた」
そう誉めてくださる。
「あと、『国王様もタナカ様にお会いしたいと仰っておりました』ともお伝えしてしまったのですが、、」
「うむ、是が非でも会わねばな」
その通りだ。
あの者を他国に流出させる事は国にとって大きな損失だ、国王様にもお会い頂いて親睦を深める必要がある。
「そのような者を城から追い出して放置するとはな、、、」
エマ様の対応の事を言っているのだろう。
言いにくいが確かにその通りだ。エマ様は即座にタナカヨウイチを探しだし保護するべきだった。
しかしまた国王様が気落ちしてしまうので、
「剣術の腕も中々見込みのある腕をしておりました。剣術のスキルの使用も滑らかであり、日頃の訓練かしかと見受けられます。また、タナカヨウイチの所有するスキルの詳細は直接確認は出来ませんでしたが、女との性行為に寄って自身の能力を上げるものらしく、どれぐらい上がるのかは確認出来なかったのですが、経験人数によってどんどん上がるそうで、、、」
「え?何そのスキル?」
「連れ込み宿(ラブホテル)というスキルなのだそうですが、すみませんこれ以上は分かりませんでした。しかし使用に制限もあるらしく、簡単に性行為をしたら上がるという物ではなさそうです」
俺がそう説明すると、国王様は頭を抱えてしまった。
俺もその気持ちが分かる。
こんなスキル聞いたことが無い。
それに神様が与えたスキルにしてはちょっと下世話というか、変なスキルだ。
「しかし、良いスキルだ。女との性行為で強くなるなら、いくらでも抱けば良いではないか。どんどん女と性行為をさせて、、、」
と国王様は言うのだが、
「それが、、、少し問題というか、、」
と俺が良い難そうにしてると、「なんだ!」と先を急かさせる。
「タナカヨウイチは凡そ人らしく無い外見をしており、その容姿はまるで、オークとドワーフを足して2で掛けた様な顔をしており、、、」
混乱した国王様は再び頭を抱えてしまった。
「え?な?人?その異世界人は人なの?人なのか?」
そう言われてしまうと俺にも良く分からない。
「いや、そもそも異世界人とは我等と同じ人という事で良いのでしょうか?」
と俺も質問に質問で返してしまう。
国王様は一瞬考える様な顔を歪ませて見せてから、
「いや、人でしょ。二千年前に現れた勇者はこの世界の人と間に何人も子供を成したではないか!」
「確かに、、、」
たしか、その者は人間以外の獣人やエルフ達との間にも子を成したと伝わっていた。
「まぁ良い。兎に角何としてでもそのタナカヨウイチとやらを取り込まねばな。その者は人格にも問題は無いのだろう?」
「ハッ!クラスメイト同士の間では問題は有った様ですが、タナカヨウイチ自身は温厚です、手も足も無い傷だらけの奴隷を買って手厚く迎い入れるなど、神聖魔法の使い手らしい、温厚で優しい性格をしております」
顔は凶悪だが。
「ふむ、能力次第ではエマの婿に迎い入れても良いやもしれぬな、、、」
「いや!」と思わず王の言葉を否定してしまい慌てて、「その、かなり特殊な面をしておりまして、、、」
絶対にエマ様は嫌がると思われる。
「そんなにか?」
「オークとドワーフの顔を足して2で掛けた、と言うのは何の比喩でも無くですね、、、」
そう俺が言うと国王様は考え直して下さり、
「では、レビ様は?レビ様とはどう思う?」
「あぁ~。レビ様ですか、、、」
成る程、失念していた。
そうだレビ様か、、、。
レビ様はこの国の司祭様なのだが元はエルフの統治する国のエルムガルドの司祭をされていた、そこをこの国の王子であらせられる、バルム様の身柄と交換といった形で、レビ様にこの国にきて頂いていた。
レビ様はもちろんエルフで、まだ幼いお姿であるのだが110歳になるそうだ。
そのレビ様の男性に対する趣味は少し変わっていて、
「ではその様に進めます。タナカヨウイチにも、報酬の一部としてレビ様に高位の奇跡の教授を賜る事を含んでおりますので合わせて自分が対応致します」
「分かった。レビ様の相手としても神聖魔法への適正が高いタナカヨウイチは相応しいと言える。そしてレビ様もこの国からは離れられんタナカヨウイチを繋ぎ止めるには丁度良かろう」
そう言って国王様は俺の意見を肯定して、「ふぅ」と大きく息を吐いた。
そして、「座れ」そう言った。
国王様とお話ししなければいけない所、避けていた話題がある。
そして俺が頭を深く下げてから、国王様の正面の椅子に座らせて頂くと、
「クロードから見てどう思う?」
と聞かれた。
それは砦が魔物の手に落ちた事だ。
「まず、砦が落ちる際に危険の狼煙が上がらなかった事から、砦はかなり短時間で落ちたと考えられます。
能力が低いものがあの砦の勤務を命じられます。しかし、どんなに能力が低いにしても普通の戦闘であったのなら、狼煙を上げる余裕が無いとは考えられません」
「では?」
「大きな力であっという間に落ちたら考えるのが妥当です」
「砦の様子は確認したのか?」
「いえ、しておりません。しかし只今手練れに偵察に向かわせてます。戻り次第国王様にもご報告いたしますので」
砦の状態が分かればどんな落ちかたをしたか分かる。
強力な魔法の力で落ちたのか、魔物の数によって押されたのか、もしくは全然違う天変地異に依るものなのか。
国王様が気にされるのも分かる。
俺も気になっているからな。
そして確認するまでも無い。
確実にダンジョンは活性化している。現れる魔物の量がそれを物語っている。
そしてこれをどうやって静めるか。
それが命題だった。
しかしどうしてこんなに城に近い位置にダンジョンが未だにあって、その近くに砦なんて作ってダンジョンを監視していたのかというと、
それはダンジョンから現れる魔物から取れる魔石がこの国の貴重な収入源だからだ。
ダンジョン自体はそんなに深く、強い魔物が現れるダンジョンでは無かったのだが、活性化してしまったとなるとダンジョンを攻略して、只の洞窟にしてしまわなかった事が悔やまれる。
そのダンジョンをこれから攻略してしまうとすると、、、
「今の我等の力でダンジョンを攻略、もしくは静める事は出来ると思うか?」
そう国王様が聞いてきた。
「私としては、砦の落ちかたをを確認してから判断したいのですが。兎に角、主力としてダンジョンに潜るのは我々に成るでしょう。異世界人の中でダンジョンの攻略に参加出来る力を持つのはタナカぐらいでしょう」
「お前が手を掛けている、ヤマダタカシ、ムラタユウジはどうだ?」
「ダンジョンの外の警備ぐらいなら出来るでしょうが」
まだそこまで育ってはいない。
「では、ナカムラユイは?」
ナカムラが守から授かったスキルも変わっていて、性行為をして、その報酬として相手のスキルを得る事が出来るというユニークスキルを所有していた。
おそらく今日も死刑囚と性行為をしてそのスキルを報酬として受け取っているはずだが。
「強くはなるかと思いますが、彼女のレベルはまだ1ですから」
「そうか、、、」
そして、
あのダンジョンの最下層は20階。
最低でも6日間はダンジョンの中から出られないという事になる。
あの異世界人達の心が持つとは思えなかった。
8人もの人の命が失われたというのに、城の中は騒然とする事も無く穏やかだった。
いや、銃の暴発で死んだ小倉も合わせれば9人か。
9人のクラスメイトを失って流石に俺も勇治も城の外でレベルアップって感じじゃあ無くなって。
それから俺達はこの世界の葬儀を体験する事になった。
9人のクラスメイトの訃報は俺等異世界人全員に伝えられ、一部の人間を除く殆どのクラスメイトが白い大理石で出来た神殿に集まった。
この国の最高位の司祭様だという女性は小柄だった。
もっとも、白いフードを深く被っているためほぼ顔は確認出来なかったが。
「天に住まわし麗しの
貴方に乞い 願い奉りまする」
その女性の発した声は少し高く、澄んだものだった。
司祭様の祈りの言葉と共にクラスメイトのすすり泣く声が聞こえ、それらの視線は祭壇の下に白い布で巻かれた死んでしまったクラスメイトへと注がれている。
そして司祭様の声が徐々に高まり、
「今は一度天へと帰り
また出会うべく一時の眠りにつけ!」
「ファン・アー・イート!」
そう一際大きく祈りを捧げると、白い布にくるまれたクラスメイトが淡く光って、
何となく、
(天に召されたのだろうな)
なんて思った。
これでお仕舞いと言わんばかりに、司祭様は立ち去り、クラスメイトの遺体が運び出されると、
空城達が囲まれて質問攻めにされた。
「何があったんだよ!」
そう聞かれた空城は、
「酷かった、もう少しで砦に付くというその時に、魔物に馬車が囲まれ、止む負えず俺達も馬車から降りて魔物と戦ったんだが、、、彼等は悲しくも、、、」
「スキルは?スキルはどうだっだんよ!」
「当てる事が出来なかった。俊敏に俺達の攻撃を避けて、、、」
「敵は?そんなに強い魔物が現れたのか?」
空城は少し躊躇いながら、
「、、ゴブリンやオーク」
空城を囲んでいる中の一人が、「ちょっと待てよ!ゴブリンやオークなんて雑魚じゃないか!そんな奴等も倒せなかったのかよ!」と捲し立てる。
「いや!オーガもいた!」
オーガか、
クロードさんからオーガとは絶対に戦うなと言われてた。
オーガと聞いて空城を囲む奴等も黙る。
そして「田中君もいた」そう空城が言った。
すると田中と唯一仲の良かった神田 彩香が、「ウソ!無事だった!田中君は?ちゃんと生きてるの?」そう言いながら空城に詰め寄るが、
空城は冷たく、「無事さ、オーガ相手に無双してたよ」と言い放つ。
その言葉に、「嘘だろ?」とか、「田中のくせに?」、「アイツがそんな事出来る訳がねぇ」とか、皆色々言っている。
「それに田中君は彼等を見殺しにした」
その言葉に全員が息を飲む。
がしかし、俺達が今まで田中にしてきた事を思えば文句は言えない。
田中からしたら俺らを助ける理由が無いだろう。
しかしそれからも空城は何度も繰り返し田中を責める言葉を口にした。
「田中君はクラスメイトが死んでも何にも感じないと言っていたよ」
だとか、
「田中君は手と足の無い女性を奴隷として連れ回してた。しかも、彼は多分その女性を強姦する事で強くなっていた」
他にも、
「田中君は死んでしまった彼等をゴブリンやオークと比べて、たいした違いは無いとも言っていたよ」
そんな言葉を聞いて自分より弱い顔から血の気が引くのを感じた。
今まで田中にしてきた事を思い出したからだ。
自分の受けていたストレスをいつも田中にぶつけて発散させていた。
会ったら殺される?
そんな事が頭に浮かぶ。
さっきコイツらはゴブリンやオークを雑魚だと言っていたが、俺には正直言って強敵だった。
それに、最初ゴブリンを一匹殺すのにどれだけ時間が掛かったか。
それは力の差が問題だった訳じゃない。
命を奪う事に対する恐れだ。
俺と勇治がクロードさんに剣術を教えて欲しいと頼んだその日、クロードさんは俺と勇治を城の外に連れ出すと、瀕死のゴブリンを二匹連れてきた。
そしてクロードさんは、「では、このゴブリンに止めを刺してください。そうしたらお二人に剣術を教えて差し上げましょう」そうニコニコしながら言った。
俺と勇治は剣を渡されて、地面に転がるゴブリン相手に剣を構えてたままで、剣を降り下ろす事が出来ずに何時間も震えていた。
それでも何とかゴブリンを殺して、クロードさんに認めてもらい。ゴブリンを自分達だけで殺せるように成るにはかなり時間が掛かった。
ましてや、オークなんて力も強いし、体格も俺らと変わらない。
そんな相手を雑魚だと言えるのは確実に魔物を殺した事の無い奴の発言だろう。
そして、田中はオーガ相手に無双した。
つまり、オーガ相手に一人で十分に立ち回れる力量を身に付けたって事だ。
田中がそこまでの力を付けたなんて、、、。
もしも田中が俺達を殺そうと襲ってきたら、、、。
そう思い唇をグッと噛んだ。
・
クロード・ティント視点
「どうであった?」
という言葉の言葉に「ハッ!」と返事をして、敬礼したまま喋る。
「予定していたダンジョン内での殺害にはなりませんでしたが、クウジョウツルギとその取り巻き女3名を除く8名の転移者の間引きに成功いたしました!」
「よくやった」
そう国王は頷いた。
どうしてダンジョン内での殺害に至らなかったかは別の者が説明済みだ。
「して、クウジョウとやらをクロードはどうみる?」
「豚に真珠という言葉が一番似合うかと。スキルはかなり強力で、汎用性も高いかと思うのですが、短慮で、感情に直ぐ身を任せます。そしてプライドも高く人の言う事にはなかなか従いません。契約魔法で奴隷にするぐらいしか私には使い道は思いつきません」
俺がそう言うと国王様は首を左右に振って、
「やはりな、、、。本当にエマは人を見る目が無い」
と言った。
エマとは王女様のお名前で無論国王様のお子様であらせられる。
国王様はこの国の元首の座をエマ様にお譲りになったのだが、エマ様の治世は中々国王様の思うようには成らず、
そして、今も気落ちしていらっしゃる国王様を少しでも元気付ける為に吉報をと思い口を開く、
「タナカヨウイチなる者との接触に成功しました!」
「ふむ、どうであった?」
「神聖魔法の使い手と確認しておりましたので、わざとオークに腕を切らせその傷をタナカヨウイチに治させたのですが、
『レビ様に傷を治し直して頂く必要はありません』
完治しております」
俺がそう言うと、国王様は目を見開いて、
「まことか!」
そう言った。
傷を負うと神聖魔法で傷を治したり、ポーションという魔法薬で傷を治したりするのだが、深い傷はどうしても治しきれない所があった。
それは、高価なポーションを使ったり、より高位の神聖魔法の使い手に治してもらう必要があるのだか、骨を切られて完治させる事の出来る神聖魔法の使い手はこの国ではレビ様の他にはいらっしゃらない。
「そこで、申し訳内のですが、国王様より、『謝罪として金貨一万枚を即支払う準備がある』とお伝えしてしまいました」
「良い、良く判断できた」
そう誉めてくださる。
「あと、『国王様もタナカ様にお会いしたいと仰っておりました』ともお伝えしてしまったのですが、、」
「うむ、是が非でも会わねばな」
その通りだ。
あの者を他国に流出させる事は国にとって大きな損失だ、国王様にもお会い頂いて親睦を深める必要がある。
「そのような者を城から追い出して放置するとはな、、、」
エマ様の対応の事を言っているのだろう。
言いにくいが確かにその通りだ。エマ様は即座にタナカヨウイチを探しだし保護するべきだった。
しかしまた国王様が気落ちしてしまうので、
「剣術の腕も中々見込みのある腕をしておりました。剣術のスキルの使用も滑らかであり、日頃の訓練かしかと見受けられます。また、タナカヨウイチの所有するスキルの詳細は直接確認は出来ませんでしたが、女との性行為に寄って自身の能力を上げるものらしく、どれぐらい上がるのかは確認出来なかったのですが、経験人数によってどんどん上がるそうで、、、」
「え?何そのスキル?」
「連れ込み宿(ラブホテル)というスキルなのだそうですが、すみませんこれ以上は分かりませんでした。しかし使用に制限もあるらしく、簡単に性行為をしたら上がるという物ではなさそうです」
俺がそう説明すると、国王様は頭を抱えてしまった。
俺もその気持ちが分かる。
こんなスキル聞いたことが無い。
それに神様が与えたスキルにしてはちょっと下世話というか、変なスキルだ。
「しかし、良いスキルだ。女との性行為で強くなるなら、いくらでも抱けば良いではないか。どんどん女と性行為をさせて、、、」
と国王様は言うのだが、
「それが、、、少し問題というか、、」
と俺が良い難そうにしてると、「なんだ!」と先を急かさせる。
「タナカヨウイチは凡そ人らしく無い外見をしており、その容姿はまるで、オークとドワーフを足して2で掛けた様な顔をしており、、、」
混乱した国王様は再び頭を抱えてしまった。
「え?な?人?その異世界人は人なの?人なのか?」
そう言われてしまうと俺にも良く分からない。
「いや、そもそも異世界人とは我等と同じ人という事で良いのでしょうか?」
と俺も質問に質問で返してしまう。
国王様は一瞬考える様な顔を歪ませて見せてから、
「いや、人でしょ。二千年前に現れた勇者はこの世界の人と間に何人も子供を成したではないか!」
「確かに、、、」
たしか、その者は人間以外の獣人やエルフ達との間にも子を成したと伝わっていた。
「まぁ良い。兎に角何としてでもそのタナカヨウイチとやらを取り込まねばな。その者は人格にも問題は無いのだろう?」
「ハッ!クラスメイト同士の間では問題は有った様ですが、タナカヨウイチ自身は温厚です、手も足も無い傷だらけの奴隷を買って手厚く迎い入れるなど、神聖魔法の使い手らしい、温厚で優しい性格をしております」
顔は凶悪だが。
「ふむ、能力次第ではエマの婿に迎い入れても良いやもしれぬな、、、」
「いや!」と思わず王の言葉を否定してしまい慌てて、「その、かなり特殊な面をしておりまして、、、」
絶対にエマ様は嫌がると思われる。
「そんなにか?」
「オークとドワーフの顔を足して2で掛けた、と言うのは何の比喩でも無くですね、、、」
そう俺が言うと国王様は考え直して下さり、
「では、レビ様は?レビ様とはどう思う?」
「あぁ~。レビ様ですか、、、」
成る程、失念していた。
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レビ様はもちろんエルフで、まだ幼いお姿であるのだが110歳になるそうだ。
そのレビ様の男性に対する趣味は少し変わっていて、
「ではその様に進めます。タナカヨウイチにも、報酬の一部としてレビ様に高位の奇跡の教授を賜る事を含んでおりますので合わせて自分が対応致します」
「分かった。レビ様の相手としても神聖魔法への適正が高いタナカヨウイチは相応しいと言える。そしてレビ様もこの国からは離れられんタナカヨウイチを繋ぎ止めるには丁度良かろう」
そう言って国王様は俺の意見を肯定して、「ふぅ」と大きく息を吐いた。
そして、「座れ」そう言った。
国王様とお話ししなければいけない所、避けていた話題がある。
そして俺が頭を深く下げてから、国王様の正面の椅子に座らせて頂くと、
「クロードから見てどう思う?」
と聞かれた。
それは砦が魔物の手に落ちた事だ。
「まず、砦が落ちる際に危険の狼煙が上がらなかった事から、砦はかなり短時間で落ちたと考えられます。
能力が低いものがあの砦の勤務を命じられます。しかし、どんなに能力が低いにしても普通の戦闘であったのなら、狼煙を上げる余裕が無いとは考えられません」
「では?」
「大きな力であっという間に落ちたら考えるのが妥当です」
「砦の様子は確認したのか?」
「いえ、しておりません。しかし只今手練れに偵察に向かわせてます。戻り次第国王様にもご報告いたしますので」
砦の状態が分かればどんな落ちかたをしたか分かる。
強力な魔法の力で落ちたのか、魔物の数によって押されたのか、もしくは全然違う天変地異に依るものなのか。
国王様が気にされるのも分かる。
俺も気になっているからな。
そして確認するまでも無い。
確実にダンジョンは活性化している。現れる魔物の量がそれを物語っている。
そしてこれをどうやって静めるか。
それが命題だった。
しかしどうしてこんなに城に近い位置にダンジョンが未だにあって、その近くに砦なんて作ってダンジョンを監視していたのかというと、
それはダンジョンから現れる魔物から取れる魔石がこの国の貴重な収入源だからだ。
ダンジョン自体はそんなに深く、強い魔物が現れるダンジョンでは無かったのだが、活性化してしまったとなるとダンジョンを攻略して、只の洞窟にしてしまわなかった事が悔やまれる。
そのダンジョンをこれから攻略してしまうとすると、、、
「今の我等の力でダンジョンを攻略、もしくは静める事は出来ると思うか?」
そう国王様が聞いてきた。
「私としては、砦の落ちかたをを確認してから判断したいのですが。兎に角、主力としてダンジョンに潜るのは我々に成るでしょう。異世界人の中でダンジョンの攻略に参加出来る力を持つのはタナカぐらいでしょう」
「お前が手を掛けている、ヤマダタカシ、ムラタユウジはどうだ?」
「ダンジョンの外の警備ぐらいなら出来るでしょうが」
まだそこまで育ってはいない。
「では、ナカムラユイは?」
ナカムラが守から授かったスキルも変わっていて、性行為をして、その報酬として相手のスキルを得る事が出来るというユニークスキルを所有していた。
おそらく今日も死刑囚と性行為をしてそのスキルを報酬として受け取っているはずだが。
「強くはなるかと思いますが、彼女のレベルはまだ1ですから」
「そうか、、、」
そして、
あのダンジョンの最下層は20階。
最低でも6日間はダンジョンの中から出られないという事になる。
あの異世界人達の心が持つとは思えなかった。
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ハズレスキル【収納】のせいで実家を追放されたが、全てを収納できるチートスキルでした。今更土下座してももう遅い
平山和人
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侯爵家の三男であるカイトが成人の儀で授けられたスキルは【収納】であった。アイテムボックスの下位互換だと、家族からも見放され、カイトは家を追放されることになった。
ダンジョンをさまよい、魔物に襲われ死ぬと思われた時、カイトは【収納】の真の力に気づく。【収納】は魔物や魔法を吸収し、さらには異世界の飲食物を取り寄せることができるチートスキルであったのだ。
かくして自由になったカイトは世界中を自由気ままに旅することになった。一方、カイトの家族は彼の活躍を耳にしてカイトに戻ってくるように土下座してくるがもう遅い。
復讐完遂者は吸収スキルを駆使して成り上がる 〜さあ、自分を裏切った初恋の相手へ復讐を始めよう〜
サイダーボウイ
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「気安く私の名前を呼ばないで! そうやってこれまでも私に付きまとって……ずっと鬱陶しかったのよ!」
孤児院出身のナードは、初恋の相手セシリアからそう吐き捨てられ、パーティーを追放されてしまう。
淡い恋心を粉々に打ち砕かれたナードは失意のどん底に。
だが、ナードには、病弱な妹ノエルの生活費を稼ぐために、冒険者を続けなければならないという理由があった。
1人決死の覚悟でダンジョンに挑むナード。
スライム相手に死にかけるも、その最中、ユニークスキル【アブソープション】が覚醒する。
それは、敵のLPを吸収できるという世界の掟すらも変えてしまうスキルだった。
それからナードは毎日ダンジョンへ入り、敵のLPを吸収し続けた。
増やしたLPを消費して、魔法やスキルを習得しつつ、ナードはどんどん強くなっていく。
一方その頃、セシリアのパーティーでは仲間割れが起こっていた。
冒険者ギルドでの評判も地に落ち、セシリアは徐々に追いつめられていくことに……。
これは、やがて勇者と呼ばれる青年が、チートスキルを駆使して最強へと成り上がり、自分を裏切った初恋の相手に復讐を果たすまでの物語である。
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