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異世界と哀れな少年
第8話 八つの死体
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町にやっとの思いで到着すると丁度お昼でお腹はペッコペコ。
しかも睡眠時間が全然足りないって感じで、お腹は減ってるし、眠いしで体はフラフラだった。
でもそれは僕だけじゃ無くて皆も同じで城の門をくぐるとクロードさんがクエスト完了のサインをしてくれると今日はここで解散して明日のお昼にギルドで報酬を受け取るって話になった。
その頃までにはクロードさんが追加報酬をギルドに持ってきてくれるだろうから丁度良いだろうって話だ。
そして解散ってなったら僕とマリアは僕のスキルの『ラブホテル』を使うのを見られない為に人陰を探して歩く、
流石にスキルを使うところはあまり人に見せない方が良いと思うんだよね。何にもない空間にいきなり扉が現れてさ、その中に人が消えていくなんてホラーじゃん。
と、その時突然自分の体が軽くなる感触があった。
(ん?どうした?何があった?)
「どうしました?ご主人様?」
「いや、急に体が軽くなってさ」
僕は何となくステータスオープンと念じてステータスを確認すると、
(昨日の夜に確認したプラス補正が180から190に上がってる、、、)
何かやだな。脈絡も無くいきなり力が強くなってもな、
何でプラス補正が上がったのか原因が分からないとちょっと気持ち悪い。
補正が上がった理由が分からないって事は、補正が下がる時も分からないって事だ。補正の上がった理由次第ではいきなり補正が無くなるとかいう事も無いとは言えない。
戦闘中に何らかの原因で補正が無くなるとか最悪だ。
とりあえず、いきなり補正が上がった時間と今日の日付を忘れないようにして、
人気の無い場所まで来ると、スキル『ラブホテル』を発動。
銀のドアノブから金のドアノブへとクラスチェンジしたドアノブを回してラブホテルの中に入ると、
『テレレッテッテッテー!』
またもや某人気RPGのレベルアップの効果音がして、
『スキル『ラブホテル』をリニューアルオープンしました!
しかも!10部屋解放特典スペシャルスキル『ラブホテル』を解放します。『合鍵』の使用を従者に限定して許可します。あと、出口を任意に指定する事が出来る様になりました』
というアナウンスが流れる。
眠くてなんだか良くわからないが凄いっぽい。
すると背中にマリアが、
「これなんなんですかね?あっ、パネルが一つ新しく光ってますよ」
と言った。
「ホントだ」
今朝というか、昨日日付が変わった後にラブホテルに入った時は、前から使えた一部屋と新しく使える様になった8つの部屋で、合わせて9つの部屋が使用可能になっていたんだけど、今は新しく一部屋使える様に成っていて、全部で10の部屋が選べる様になっていた。
良くわからないが色々出来る様になったし。
その新しく選べる様になった部屋もよく分からない部屋で、
「なんだろこれ?」
前にテレビで見たことのある、陶器を作る釜みたいな写真が写っている。
「いいじゃないですか!楽しそうですよ!行ってみましょうよ!」
まぁ、確かに今朝入ったムチとか手錠とかある部屋より全然良いけど。
その部屋はどうやら特別な部屋で、宿泊が金貨一枚もしくは大魔石一個必要とかなり高価だった。
普通の部屋は銀貨一枚か、中魔石一個で泊まれるのにな。
そしてその新しい部屋に入ってみると、、、
(シュールだ、、、)
その部屋にはなんと鍛治スペースがあったのだ。
火の灯っていない炉の近くの壁には、鞴の様な物や、いくつもの槌、溶けた鉄を掴む用の大きなハサミ。
その下には大きな金床が置かれ。
そして、その鍛治スペースの近くにはベットといつものクローゼット、あと有料冷蔵庫と無料冷蔵庫が置かれてる。
(いや、カオスって言った方がいいか?)
「ここはどんなお部屋なんですか?」
とマリアが聞いてくるので、「いや、鍛治が出来るっぽいねぇ」と言うと、
マリアは少しモジモジしながら、
「あのぉ、それは分かるのですが、、そうではなくて、、、」と少し言いにくそうにしながら、「どんな、どんな事をするのでしょうかぁ」と言う。
ここまで言われれば流石に僕にも分かる。
でも、
「大丈夫?疲れてない?」
「ぇ?ご主人はおイヤなんですか?」
「イヤイヤ、全然イヤじゃないけれど、あんまり寝てないしマリアもキツいんじゃないかって、、、」
「そんな、、私、」マリアは目に涙を溜めて、「ごめんなさいご主人様。私、私変なんです、私、ご主人が欲しくって、、。もう我慢出来ないんです」上目遣いでそう言った。
そして、さらに、
「こんな私はキライですか?」
そんな事を言うのだけど、
むしろそんなマリアが大好きです!
疲れマラ効果って聞いたことはありませんか?
それです。
疲れてるし眠いしお腹も減ってるけど、とりあえずやりました。
ちなみに鍛治師プレイは流石にしませんでしたよ?
・
山田 孝視点
思わず目を閉じた。
(クソ!胸くそ悪ぃもんをみちまった)
小倉 宏の体が爆発で吹き飛んだからだ。
俺は今村田 勇治と一緒に銃の実演を見に来ていた。
小倉は火縄銃の作成に成功したと言ってその観客を募った。
観客の中には、国王や王女、この国の重鎮が沢山きていたのだが、その顔がどれも苦虫を噛み潰した様な顔をしている。
人一人が死んだというのに冷たい反応だ。
そう思うのは俺達が地球の中でも比較的に治安が良いとされる日本から来たからだろうか。
「あんまり良い感じじゃあ無いっすね」
勇治が言った。
「だな、これからどんどん俺達への風当たりが強くなりそうだ」
この世界に最初に連れて来られた時は割と優しくされたのだが、最近は段々対応が冷たくなってきていると感じていた。
無理もない。
俺達なんて実質ただのニートだからな。
こんな金食い虫に優しく何で出来る訳がない。だから俺と勇治は出来るだけ有能だとアピールするためにも戦闘の訓練には積極的に参加していた。
元の世界に戻るまではこの世界に居るしかないんだから。
俺のスキル『弱者優戦』というスキルは自分より弱い敵と戦うときはプラス補正がかかり、強い相手と戦うときはマイナス補正がかかるという内容だ。
だから強くないと何にも始まらない。
しかも勇治の持つスキルが『小判鮫』っていうスキルで、仲間に掛かってる補正と同じよう補正を受けることが出来るというスキルで。
まぁ、俺も勇治も正直カッコいいスキルではない。
でも、俺と勇治の相性は良い。
俺が強くなれば勇治も強くなる。
それに、俺達に戦闘を教えてくれたクロードさんは『良いスキルですよ?』と誉めてくれた。
そもそも魔物との戦闘で自分達より強ければ戦わずに逃げるのが当たり前だそうだ。
そう言って貰って俺も勇治も救われた。
それから戦闘の訓練には積極的に参加し、強くなる為にゴブリンやオークとも戦った。
クラスメイトにバカにされない為にも強くなりたかった。
俺のスキルの名前が、『弱者優戦』というスキルだとわかった瞬間俺が今まで見下してきた奴等が俺を見て笑った。
そしてその中の一人が小倉だ。
小倉は鍛治スキルの所有者で銃の開発グループの長をしていたから、小倉が死んだ事で、これで暫くは銃の研究も進まなくなるだろう。
そう思うだけで、死んだ小倉を哀れむ気持ちが込み上げてこないのは、あの時散々笑われたからだろうか。
(まぁそれはどうでも良い、兎に角いかに俺達が強くなるかだ)
小倉の死体が運び出されるの見送ってから、「おっし!じゃあ今日も城を出てレベルを上げるか」そう言って俺と勇治は城の外へと歩き出す。
「クロードさんが帰ってきたら俺等のレベルにビックリするぜ?」
「ですね!」
ステータスオープンと念じると半透明の板が現れ、俺のステータスが表示される。
山田 孝
レベル 8
HP101/101
MP50/50
力 20
敏捷 18
体力 22
知力 14
魔力 20
《スキル》
・異邦人の杖・
シューザルド言語・文字収得
・弱者優戦・
自分より弱い敵と戦うときは能力値20%プラス補正。
自分より強い敵と戦うときは能力値10%マイナス補正。
・剣術レベル2・
使用可能スキル 二段突き 柳
・風魔法・
ウィンド クイック
少しずつレベルも上がってきた。
実は昨日の戦闘でオークよりもレベルが高くなった為、オーク相手でもプラス補正が得られる事になった。
これでどんどんレベルを上げられる。
レベルが上がって強くなればなるほど得られる補正も大きくなる。今は力も20しかないからプラス補正は4と少ないが、レベルが上がって能力が上がれば得られるプラス補正も大きくなる。
そして俺がプラス補正を得られれば、それは勇治も得られる。
勇治には『小判鮫』というスキルがあるからだ。
この小判鮫というスキルは仲間の得ている補正と同じ補正を得る事が出来るというスキルで、もちろん俺の弱者優戦の補正が発生すれば勇治も同じ補正を受けることが出来る、俺にクイックを掛ければ勇治にもクイックが掛かる。
それもMP無しにだ。
もちろんデメリットはある。
俺がマイナス補正を受けていたら勇治もマイナス補正を受けてしまう。だから、勇治の為にも俺は早く強くなる必要があった。
勇治を見ると宙を見つめている。
俺には見えないが俺と同じようにステータスを見ているんだろう。
他人のステータスは特別なスキルやアイテムが無ければ他人には見えない。
「勇治?今日はレベルをどこまで上げる?」
と聞くと勇治は顔をあげて、
「最低でも10にはしたいっすよね」
「だよな。でもそれぐらいなら余裕だろ。クロードさんにも無理は絶対にするなって言われてっし、無駄に高い目標は立てる必要はなぇよな?」
「そっすね!」
こういう風に事前にたとえ何となくでも、目標を決めておくのは意外と必須だった。
戦闘中に会話で『どうする?』なんて話してたらソッコーで死ぬ。
そして石の廊下を歩いてると勇治が、「クロードさん無事っすかねぇ」と言った。
「ハッ。無事だろ、あの人の強さは半端ねぇぞ?」
体術と魔法を組み合わせた技で、『天駆』という技を使って空中を飛び回りながら剣を振る様は圧巻だ。
「でも空城とかいるじゃないっすか、余計な事をクロードさんに言わなきゃ良いんスけど」
「心配のしすぎだ、たとえ空城達が死んだとしてもクロードさんは帰ってくる」
そんな話をしながら城を出る為に門の方へと歩いてると、目の前からクロードさんが歩いてくるのが見えた。
「あれ?クロードさんじゃん」
俺がそう言うと勇治も、「ホントだ」と言って、二人でクロードさんの近くへと駆け寄った。
(予定よりかなり早いな、本当なら帰ってくるのは最低でも明後日だと言っていたはずだ)
「クロードさん!どうしんスか?」
と俺が聞くと、クロードさんはいつもはニコニコしている顔を歪ませて、
「酷かった」
そう言って後ろを振り返った。
そこには空城とその取り巻きの三人の女がいて、どの顔も暗く沈んでいる。
いや、一人だけ変わらない顔をした女がいるか、黒田 彩だ、黒田は相変わらず、ダルそうにしながら立っている。
後の二人の女、吉田 聖子と秋元 杪は沈痛な面持ちで、顔も青くいつもの感じじゃあ無い。
空城も下を向いたまま顔を上げない所から、ダンジョンに潜ると言って城を出たが、良い結果に成らなかったのか?
兵士達に囲まれながら城の中へと進む空城達。
(ん?他のクラスメイトはどうした?)
勇治も俺と同じ事を疑問に思った様で、「あれ?他の奴等はどうしたんすか?」とクロードさんに言うと、
丁度俺達の前を通り過ぎようとした空城が立ち止まって、おもむろに地面に手をかざすと、
そこにクラスメイト8人の死体を出した。
しかも睡眠時間が全然足りないって感じで、お腹は減ってるし、眠いしで体はフラフラだった。
でもそれは僕だけじゃ無くて皆も同じで城の門をくぐるとクロードさんがクエスト完了のサインをしてくれると今日はここで解散して明日のお昼にギルドで報酬を受け取るって話になった。
その頃までにはクロードさんが追加報酬をギルドに持ってきてくれるだろうから丁度良いだろうって話だ。
そして解散ってなったら僕とマリアは僕のスキルの『ラブホテル』を使うのを見られない為に人陰を探して歩く、
流石にスキルを使うところはあまり人に見せない方が良いと思うんだよね。何にもない空間にいきなり扉が現れてさ、その中に人が消えていくなんてホラーじゃん。
と、その時突然自分の体が軽くなる感触があった。
(ん?どうした?何があった?)
「どうしました?ご主人様?」
「いや、急に体が軽くなってさ」
僕は何となくステータスオープンと念じてステータスを確認すると、
(昨日の夜に確認したプラス補正が180から190に上がってる、、、)
何かやだな。脈絡も無くいきなり力が強くなってもな、
何でプラス補正が上がったのか原因が分からないとちょっと気持ち悪い。
補正が上がった理由が分からないって事は、補正が下がる時も分からないって事だ。補正の上がった理由次第ではいきなり補正が無くなるとかいう事も無いとは言えない。
戦闘中に何らかの原因で補正が無くなるとか最悪だ。
とりあえず、いきなり補正が上がった時間と今日の日付を忘れないようにして、
人気の無い場所まで来ると、スキル『ラブホテル』を発動。
銀のドアノブから金のドアノブへとクラスチェンジしたドアノブを回してラブホテルの中に入ると、
『テレレッテッテッテー!』
またもや某人気RPGのレベルアップの効果音がして、
『スキル『ラブホテル』をリニューアルオープンしました!
しかも!10部屋解放特典スペシャルスキル『ラブホテル』を解放します。『合鍵』の使用を従者に限定して許可します。あと、出口を任意に指定する事が出来る様になりました』
というアナウンスが流れる。
眠くてなんだか良くわからないが凄いっぽい。
すると背中にマリアが、
「これなんなんですかね?あっ、パネルが一つ新しく光ってますよ」
と言った。
「ホントだ」
今朝というか、昨日日付が変わった後にラブホテルに入った時は、前から使えた一部屋と新しく使える様になった8つの部屋で、合わせて9つの部屋が使用可能になっていたんだけど、今は新しく一部屋使える様に成っていて、全部で10の部屋が選べる様になっていた。
良くわからないが色々出来る様になったし。
その新しく選べる様になった部屋もよく分からない部屋で、
「なんだろこれ?」
前にテレビで見たことのある、陶器を作る釜みたいな写真が写っている。
「いいじゃないですか!楽しそうですよ!行ってみましょうよ!」
まぁ、確かに今朝入ったムチとか手錠とかある部屋より全然良いけど。
その部屋はどうやら特別な部屋で、宿泊が金貨一枚もしくは大魔石一個必要とかなり高価だった。
普通の部屋は銀貨一枚か、中魔石一個で泊まれるのにな。
そしてその新しい部屋に入ってみると、、、
(シュールだ、、、)
その部屋にはなんと鍛治スペースがあったのだ。
火の灯っていない炉の近くの壁には、鞴の様な物や、いくつもの槌、溶けた鉄を掴む用の大きなハサミ。
その下には大きな金床が置かれ。
そして、その鍛治スペースの近くにはベットといつものクローゼット、あと有料冷蔵庫と無料冷蔵庫が置かれてる。
(いや、カオスって言った方がいいか?)
「ここはどんなお部屋なんですか?」
とマリアが聞いてくるので、「いや、鍛治が出来るっぽいねぇ」と言うと、
マリアは少しモジモジしながら、
「あのぉ、それは分かるのですが、、そうではなくて、、、」と少し言いにくそうにしながら、「どんな、どんな事をするのでしょうかぁ」と言う。
ここまで言われれば流石に僕にも分かる。
でも、
「大丈夫?疲れてない?」
「ぇ?ご主人はおイヤなんですか?」
「イヤイヤ、全然イヤじゃないけれど、あんまり寝てないしマリアもキツいんじゃないかって、、、」
「そんな、、私、」マリアは目に涙を溜めて、「ごめんなさいご主人様。私、私変なんです、私、ご主人が欲しくって、、。もう我慢出来ないんです」上目遣いでそう言った。
そして、さらに、
「こんな私はキライですか?」
そんな事を言うのだけど、
むしろそんなマリアが大好きです!
疲れマラ効果って聞いたことはありませんか?
それです。
疲れてるし眠いしお腹も減ってるけど、とりあえずやりました。
ちなみに鍛治師プレイは流石にしませんでしたよ?
・
山田 孝視点
思わず目を閉じた。
(クソ!胸くそ悪ぃもんをみちまった)
小倉 宏の体が爆発で吹き飛んだからだ。
俺は今村田 勇治と一緒に銃の実演を見に来ていた。
小倉は火縄銃の作成に成功したと言ってその観客を募った。
観客の中には、国王や王女、この国の重鎮が沢山きていたのだが、その顔がどれも苦虫を噛み潰した様な顔をしている。
人一人が死んだというのに冷たい反応だ。
そう思うのは俺達が地球の中でも比較的に治安が良いとされる日本から来たからだろうか。
「あんまり良い感じじゃあ無いっすね」
勇治が言った。
「だな、これからどんどん俺達への風当たりが強くなりそうだ」
この世界に最初に連れて来られた時は割と優しくされたのだが、最近は段々対応が冷たくなってきていると感じていた。
無理もない。
俺達なんて実質ただのニートだからな。
こんな金食い虫に優しく何で出来る訳がない。だから俺と勇治は出来るだけ有能だとアピールするためにも戦闘の訓練には積極的に参加していた。
元の世界に戻るまではこの世界に居るしかないんだから。
俺のスキル『弱者優戦』というスキルは自分より弱い敵と戦うときはプラス補正がかかり、強い相手と戦うときはマイナス補正がかかるという内容だ。
だから強くないと何にも始まらない。
しかも勇治の持つスキルが『小判鮫』っていうスキルで、仲間に掛かってる補正と同じよう補正を受けることが出来るというスキルで。
まぁ、俺も勇治も正直カッコいいスキルではない。
でも、俺と勇治の相性は良い。
俺が強くなれば勇治も強くなる。
それに、俺達に戦闘を教えてくれたクロードさんは『良いスキルですよ?』と誉めてくれた。
そもそも魔物との戦闘で自分達より強ければ戦わずに逃げるのが当たり前だそうだ。
そう言って貰って俺も勇治も救われた。
それから戦闘の訓練には積極的に参加し、強くなる為にゴブリンやオークとも戦った。
クラスメイトにバカにされない為にも強くなりたかった。
俺のスキルの名前が、『弱者優戦』というスキルだとわかった瞬間俺が今まで見下してきた奴等が俺を見て笑った。
そしてその中の一人が小倉だ。
小倉は鍛治スキルの所有者で銃の開発グループの長をしていたから、小倉が死んだ事で、これで暫くは銃の研究も進まなくなるだろう。
そう思うだけで、死んだ小倉を哀れむ気持ちが込み上げてこないのは、あの時散々笑われたからだろうか。
(まぁそれはどうでも良い、兎に角いかに俺達が強くなるかだ)
小倉の死体が運び出されるの見送ってから、「おっし!じゃあ今日も城を出てレベルを上げるか」そう言って俺と勇治は城の外へと歩き出す。
「クロードさんが帰ってきたら俺等のレベルにビックリするぜ?」
「ですね!」
ステータスオープンと念じると半透明の板が現れ、俺のステータスが表示される。
山田 孝
レベル 8
HP101/101
MP50/50
力 20
敏捷 18
体力 22
知力 14
魔力 20
《スキル》
・異邦人の杖・
シューザルド言語・文字収得
・弱者優戦・
自分より弱い敵と戦うときは能力値20%プラス補正。
自分より強い敵と戦うときは能力値10%マイナス補正。
・剣術レベル2・
使用可能スキル 二段突き 柳
・風魔法・
ウィンド クイック
少しずつレベルも上がってきた。
実は昨日の戦闘でオークよりもレベルが高くなった為、オーク相手でもプラス補正が得られる事になった。
これでどんどんレベルを上げられる。
レベルが上がって強くなればなるほど得られる補正も大きくなる。今は力も20しかないからプラス補正は4と少ないが、レベルが上がって能力が上がれば得られるプラス補正も大きくなる。
そして俺がプラス補正を得られれば、それは勇治も得られる。
勇治には『小判鮫』というスキルがあるからだ。
この小判鮫というスキルは仲間の得ている補正と同じ補正を得る事が出来るというスキルで、もちろん俺の弱者優戦の補正が発生すれば勇治も同じ補正を受けることが出来る、俺にクイックを掛ければ勇治にもクイックが掛かる。
それもMP無しにだ。
もちろんデメリットはある。
俺がマイナス補正を受けていたら勇治もマイナス補正を受けてしまう。だから、勇治の為にも俺は早く強くなる必要があった。
勇治を見ると宙を見つめている。
俺には見えないが俺と同じようにステータスを見ているんだろう。
他人のステータスは特別なスキルやアイテムが無ければ他人には見えない。
「勇治?今日はレベルをどこまで上げる?」
と聞くと勇治は顔をあげて、
「最低でも10にはしたいっすよね」
「だよな。でもそれぐらいなら余裕だろ。クロードさんにも無理は絶対にするなって言われてっし、無駄に高い目標は立てる必要はなぇよな?」
「そっすね!」
こういう風に事前にたとえ何となくでも、目標を決めておくのは意外と必須だった。
戦闘中に会話で『どうする?』なんて話してたらソッコーで死ぬ。
そして石の廊下を歩いてると勇治が、「クロードさん無事っすかねぇ」と言った。
「ハッ。無事だろ、あの人の強さは半端ねぇぞ?」
体術と魔法を組み合わせた技で、『天駆』という技を使って空中を飛び回りながら剣を振る様は圧巻だ。
「でも空城とかいるじゃないっすか、余計な事をクロードさんに言わなきゃ良いんスけど」
「心配のしすぎだ、たとえ空城達が死んだとしてもクロードさんは帰ってくる」
そんな話をしながら城を出る為に門の方へと歩いてると、目の前からクロードさんが歩いてくるのが見えた。
「あれ?クロードさんじゃん」
俺がそう言うと勇治も、「ホントだ」と言って、二人でクロードさんの近くへと駆け寄った。
(予定よりかなり早いな、本当なら帰ってくるのは最低でも明後日だと言っていたはずだ)
「クロードさん!どうしんスか?」
と俺が聞くと、クロードさんはいつもはニコニコしている顔を歪ませて、
「酷かった」
そう言って後ろを振り返った。
そこには空城とその取り巻きの三人の女がいて、どの顔も暗く沈んでいる。
いや、一人だけ変わらない顔をした女がいるか、黒田 彩だ、黒田は相変わらず、ダルそうにしながら立っている。
後の二人の女、吉田 聖子と秋元 杪は沈痛な面持ちで、顔も青くいつもの感じじゃあ無い。
空城も下を向いたまま顔を上げない所から、ダンジョンに潜ると言って城を出たが、良い結果に成らなかったのか?
兵士達に囲まれながら城の中へと進む空城達。
(ん?他のクラスメイトはどうした?)
勇治も俺と同じ事を疑問に思った様で、「あれ?他の奴等はどうしたんすか?」とクロードさんに言うと、
丁度俺達の前を通り過ぎようとした空城が立ち止まって、おもむろに地面に手をかざすと、
そこにクラスメイト8人の死体を出した。
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