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(23) 探し物
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黒厳は、探偵に調査の報酬を支払った。そして、受け取った調査の報告書を見る。
『隅田太(すみた ふとし)17歳。職業は大学生・・・。』
通っている場所は母親の弟のマンション。大学生だが、大学には通学していない。それらは、黒厳が知っている事だった。
「やっぱり、分からなかったか。」
持っている報告書が炎を上げて燃える。手を離すと宙で燃え去った。跡形も無く。
彼が知りたかったのは、もっと、深い事だ。恐らく、調べても出ないだろう。
「何を知りたいのかしら?」
自分だけのはずなのに、重役室に女の声が響いた。黒厳は顎を上げて、背後のソファーに座っている相手に言う。
「何の用だ、消すぞ!」
「かまわないわよ。私は、幾らでも変わりが居るんですもの。1人くらいはね。」
黒厳は、ゆっくりと振り向いた。ソファーに居るロングドレスを着た極上の美女が微笑みかける。
その振り撒く空気は妖艶で、男を虜にする魔性の女だ。
「教えろ、何が目的だ?」
「私の目的は、パトリシアと弟子たちよ。協力して下さったら、望みの物を差し上げてよ。」
「私には、何でもある。」
「1番、欲しい物以外はね。」
「ほう、訳知りのよな言い方だな。何を知っていると言うんだ?」
「私は、何百人もの魔法使いの魔力を集めてきたの。それくらい、簡単よ。考えておいてね。またね!」
女は、かき消すように消え去った。黒厳は、不機嫌になる。
芙蓉の部屋では、美女達が集まって何かをしていた。リビングが、それには良い場所なのだそうだ。
「じゃ、力を合わせるのよ。初めてー。」
「クソオヤジ!」「クソオヤジ!」「クソオヤジ!」
3人の前に置かれた紙のマップは、震えた。だが、それだけだ。
「もう1度よ、初めて!」
繰り返しやるのをキッチンへ追いやられた芙蓉と太が見学している。笑いをこらえながら芙蓉は太に聞いた。
「フッフフ、ハハハハ!お嬢さん達は、何をやってるんだ。ふーちゃんは、知ってるかい?」
太は彼女たちと仲がいいので詳しい。
「お姉さんたちのチームメンバーが満つかってないから探してるんだって。魔法で。」
「笑える。へー、魔法ねえ。「クソオヤジ」は呪文か。」
「そうらしい。パトリシアさんが先生で、皆に呪文を与えたって。覚えやすいから、「クソオヤジ」にしたらしいよ。」
「与えたって事は、パトリシアさんから受け取らないと魔法は使えないのかな。ひゃはははー!」
芙蓉、腹を抱えて笑いだす。美女たちから冷たい視線を受ける事になった。
元々は、魔力の無い一般人。それを、素質を見定めてパトリシアが教えているという。魔法使いになるのも簡単じゃなさそうだ。
「何なの?エドワードは、何処に居るのよ。反応が無いじゃない!」
耐えきれずに、エリザベスが泣き出した。彼女は、エドワードの恋人らしい。恋人が見つからないので焦っているようだ。
慰めながら、エレンが言う。
「諦めないで、エリザベス。私は、エドワードを感じてるわ。居るのよ、何処かに。」
空からアグアニエベと探しているパトリシアも、エドワードを感じていた。
「アグアニエベさん、エドワードは居るはずなんですが。どうして、分からないんでしょうか?」
「この世界に確かに入ってますね。こうなると、閉じこめられてるのでは。」
「閉じこめられてる、誰に?」
「魔女とか。複数に分割しているのなら、何人かで捕まえている可能性があります。」
あの魔女のことだ。エドワードを捕まえて魔力を奪う事など簡単だろう。そうなれば、パトリシアが見つけるのは困難だ。
「そうだとすれば、取り引きを持ちかけてくるでしょう。待ちましょう。」
「取り引き?」
「この世界へ飛ばされたのだから、あちらへ戻りたいのでは。」
「成る程、分割してしまっては戻れないか。」
大半の集めた魔力は、パトリシアが奪い取っている。残った魔力では、分割した体が集まっても異世界からは戻れないのだ。
ビュンーー。
噂をすれば影。そこへ、飛んで来たのは魔女だった。
『隅田太(すみた ふとし)17歳。職業は大学生・・・。』
通っている場所は母親の弟のマンション。大学生だが、大学には通学していない。それらは、黒厳が知っている事だった。
「やっぱり、分からなかったか。」
持っている報告書が炎を上げて燃える。手を離すと宙で燃え去った。跡形も無く。
彼が知りたかったのは、もっと、深い事だ。恐らく、調べても出ないだろう。
「何を知りたいのかしら?」
自分だけのはずなのに、重役室に女の声が響いた。黒厳は顎を上げて、背後のソファーに座っている相手に言う。
「何の用だ、消すぞ!」
「かまわないわよ。私は、幾らでも変わりが居るんですもの。1人くらいはね。」
黒厳は、ゆっくりと振り向いた。ソファーに居るロングドレスを着た極上の美女が微笑みかける。
その振り撒く空気は妖艶で、男を虜にする魔性の女だ。
「教えろ、何が目的だ?」
「私の目的は、パトリシアと弟子たちよ。協力して下さったら、望みの物を差し上げてよ。」
「私には、何でもある。」
「1番、欲しい物以外はね。」
「ほう、訳知りのよな言い方だな。何を知っていると言うんだ?」
「私は、何百人もの魔法使いの魔力を集めてきたの。それくらい、簡単よ。考えておいてね。またね!」
女は、かき消すように消え去った。黒厳は、不機嫌になる。
芙蓉の部屋では、美女達が集まって何かをしていた。リビングが、それには良い場所なのだそうだ。
「じゃ、力を合わせるのよ。初めてー。」
「クソオヤジ!」「クソオヤジ!」「クソオヤジ!」
3人の前に置かれた紙のマップは、震えた。だが、それだけだ。
「もう1度よ、初めて!」
繰り返しやるのをキッチンへ追いやられた芙蓉と太が見学している。笑いをこらえながら芙蓉は太に聞いた。
「フッフフ、ハハハハ!お嬢さん達は、何をやってるんだ。ふーちゃんは、知ってるかい?」
太は彼女たちと仲がいいので詳しい。
「お姉さんたちのチームメンバーが満つかってないから探してるんだって。魔法で。」
「笑える。へー、魔法ねえ。「クソオヤジ」は呪文か。」
「そうらしい。パトリシアさんが先生で、皆に呪文を与えたって。覚えやすいから、「クソオヤジ」にしたらしいよ。」
「与えたって事は、パトリシアさんから受け取らないと魔法は使えないのかな。ひゃはははー!」
芙蓉、腹を抱えて笑いだす。美女たちから冷たい視線を受ける事になった。
元々は、魔力の無い一般人。それを、素質を見定めてパトリシアが教えているという。魔法使いになるのも簡単じゃなさそうだ。
「何なの?エドワードは、何処に居るのよ。反応が無いじゃない!」
耐えきれずに、エリザベスが泣き出した。彼女は、エドワードの恋人らしい。恋人が見つからないので焦っているようだ。
慰めながら、エレンが言う。
「諦めないで、エリザベス。私は、エドワードを感じてるわ。居るのよ、何処かに。」
空からアグアニエベと探しているパトリシアも、エドワードを感じていた。
「アグアニエベさん、エドワードは居るはずなんですが。どうして、分からないんでしょうか?」
「この世界に確かに入ってますね。こうなると、閉じこめられてるのでは。」
「閉じこめられてる、誰に?」
「魔女とか。複数に分割しているのなら、何人かで捕まえている可能性があります。」
あの魔女のことだ。エドワードを捕まえて魔力を奪う事など簡単だろう。そうなれば、パトリシアが見つけるのは困難だ。
「そうだとすれば、取り引きを持ちかけてくるでしょう。待ちましょう。」
「取り引き?」
「この世界へ飛ばされたのだから、あちらへ戻りたいのでは。」
「成る程、分割してしまっては戻れないか。」
大半の集めた魔力は、パトリシアが奪い取っている。残った魔力では、分割した体が集まっても異世界からは戻れないのだ。
ビュンーー。
噂をすれば影。そこへ、飛んで来たのは魔女だった。
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