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(11) 資金を作る為に

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何時、隣のビルから苦情がくるかと恐れていた芙蓉だが。

(何も、言って来ないな。という事は、本当に空間を使用しただけなので影響は無いのか?)


パトリシアの説明では、そうだったが信用していない。学校で習ってないような事を聞かされて、信用できるわけない。

当面は、見て見ぬふり。現実問題として、突然の大所帯。
離婚した男は、蓄えを全て妻に渡していた。だから、手持ちの金は少しだけ。


「あの子たち、よく食べるから。これは、早くお金に換えないと食べられなくなるぞ。」


テーブル程に大きくなった即席ラーメンはあるが、そればかりというわけには。美人が3人も揃うと申し訳なくなってきて。

翌日、芙蓉は大学時代の学友の働いている会社へ出掛けていた。学友は、宝石を扱う仕事をしているのだ。


「訪ねて来たと思ったら、貨幣の買い取り?何時から、そんな収集家に。」


真面目な生徒だった芙蓉に相手は意外に思ったらしい。芙蓉が持ってきた金貨を笑いながら見る。



「私の物じゃないんだ。売ってくれと頼まれたんだけど、売れると思う?」
「ちょっと、待って。何処かで見た気がするんだ。知ってる人のコレクションだったか。」
「コレクション?」
「珍しい物だという話だったな。表には出ないけど、高い値段でも手に入れたい物らしい。確か、『勇者』という商品名だったと思うけど。」



その相手がアンティークを扱う業者という事で、話をしてくれる事になった。良ければ、高い値がつくというので気が楽になる。


(1人旅に出るつもりだったのにな。思うようにならない。)


離婚を持ち出した時から、計画を立てていた旅行計画が台無しになった。1人になってみると寂しくなっていたので、大人数で楽しいのは良いのだが。

帰って来ると、マンションの前に知った顔が立っているではないか。高校からの友人の松木 孝弘(まつき たかひろ)だった。


「太くんから電話をもらって驚いたよ。離婚したのか?」


芙蓉は、頷いた。やっぱり、来たかと思いながら。










外で話を終えて帰宅した芙蓉は、賑やかな部屋の中に気持ちが和らぐ。また、太が来ていてワイワイとやっていた。


「芙蓉にいさん。今夜は、シャークザウルス鍋だって。パトリシアちゃんが、デッカイ肉を出してきてね。」


太が両腕を広げて興奮しながら説明する。そんな馬鹿な。大げさだな。デッカイ肉なんて無いよ、と芙蓉は笑う。

すると、エリザベスが何かをヒョイと持ち上げて見せた。


「何なの?現物を見せた方が分かりやすいわよ。これで、どうですかしら?」


金髪の美女が持ってるのは、3メートルはある魚の頭の骨でした。芙蓉は、目を丸くする。

そんな魚は、スーパーには売ってない。売り場に並べられないだろう。太が喜んで骨を叩いた。


「ね、ね、デッカイよねー。」


一応、聞いてみた。


「それ、何処で取れたんですか?」


説明してくれたのは、黒髪のエレンさん。


「私達がダンジョンに入った深層に湖があったんです。パトリシアさんが、1人で湖に入って仕止めました。」


成る程、ダンジョンですか。ゲームの世界ですね。こんな小さな女の子が、1人でデッカイ魚を湖に入って仕止めましたか。

もう、いいです。付き合って、笑います。ハハハ・・・

その夜のシャークザウルス鍋は、本当に旨かった。食べた事の無い味だ。パトリシアが小さなポーチから酒樽を取り出して、太以外は晩酌タイム。



「良かったわ。パトリシアさんの蔵とポーチが繋がってて。保存してるダンジョンで手に入れたモンスターの肉も、出す事が出来るし。」
「魔法も、少しずつ使えるようになりましたわ。」
「何なの?皆、無傷だったし。後は、エドを見つければチームメンバーが揃うでしょ。私達、ついてるのよ。」



エド?まだ、メンバーが居るのか。芙蓉は、飲んだ事の無い酒を飲み干した。胸に残る苦さを酒に酔って流したい気分なのだ。



『お前、どうして離婚なんかするんだよ。里織さんを離すなら、オレがもらうぞ!』



タカは、そう言って怒った。知っていたよ、お前が里織に惚れていたのを。僕達は、3人とも高校時代の同級生だ。

その時から、里織に片思いしてたよな。



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