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(2) 見つけた転生者

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それは、真夜中の事でした。山の中腹で山羊の群れが鳴き出した。まだ、夜明けでもないのに。山羊飼いの子供は、山羊と野宿して眠っていたのを起こされる。


「ふわー(アクビ)、なんなん?」


眠い目をこすりながら、山の岩影から起き上がる。そして、空に輝くスーパームーンを見上げた。何かを見つけて指差した。


「ああ、天使ちゃまー!」


満月を背中に羽を羽ばたかせる人の姿。天使だ、拝んでおこう。


「天使ちゃま、ご飯に肉が付けてほちいの。お願い!」


お腹、いっぱいに食べてみたい。それが、少女の1番の願いだった。



「困りましたねえ、ボクちゃん。私は、天使ではありませんよ。違うでしょう?」

「だって、羽あるもん。」

「これは、天使の持つ白い羽じゃありませんけど。視力は大丈夫ですか。」

「んー、黒い羽の天使ちゃまー!」

「ぶー、外れ。私は、悪魔です。」



悪魔は、羽を大きく広げて笑った。長い銀髪を月に煌めかせる長身の美形。子供は見つめて、背中を向ける。また、眠ろうとするのを悪魔は呼び起こした。



「ちょっと、寝ないでください。確認しますよ。あなたに遠い場所から会いに来たのですから。パトリシア・バートン。男爵家の5番目の庶子。間違いありませんね。」

「うん、そんな感じ。寝るから、邪魔しないで。おじちゃん。」

「ほら、起きて。おじちゃんは、神さまから頼まれて幸せを運んで来たのです。ほら、喜んで。」

「いやー、寝るにょ。ぐーっ。」

「おやおや、困った子ですねえ。」



本当に眠ってしまった子供を悪魔は扱いに困って見下ろす。これが、貴族の令息なのか。ボロボロのズボンと服に裸足。櫛もあててない髪はボサボサ。ろくに食べてない身体は、ガリガリで骨っぽい。


「どうしたものか。今日は、君の誕生日で生まれ代わる日なんだ。前世の記憶を呼び戻して、人助けをする定め。仕方ない、勝手にやりますか。」


と、やりました。悪魔は魔力を使い、子供の魂の扉を開く。


「私の名前は、アグアニエベ。神のご指示です。前世の記憶の蓋を開くのだ!」


神さまの使いの悪魔は、その者の封印されていた前世の記憶を開封しました。パトリシアは、この時からパトリシアであってパトリシアでは無くなるのだった
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