上 下
33 / 67

「 1・31 」修羅場を治める

しおりを挟む
唖然としてる薫に津海小路氏が腕を伸ばして掴もうとする。それを、御前様が阻(はば)んだ。腕に噛み付いたのだ。


「何をする、沙織。邪魔をすると、お前も潰すぞ。代わりは幾らでも居るんだ!」


そうだ、跡継ぎの代わりは何人も居る。このオヤジが愛人達に産ませた子供達。せっかく手に入った後継者の座を失っても許せない。


「俺には、留目馨は大事なんだ。馨に乱暴する奴は、あんたでも許せない!」


父親の言いなりだったのに宣戦布告した息子。完全に津海小路は怒り爆発。食堂に響き渡る雄叫びを上げた。


「グワーオウウウウ!」


スウツ姿の理事長の姿は、スウツを破って身体が膨張していくではないか。バリバリと服を破って毛むくじゃらの白い狼男が姿を表す。

御前様も、真っ黒な狼に姿を変えた。牙を剥き出して唸りながら睨み合う父と子で闘うのか。食堂から皆が逃げ出した。残ったのは腰を抜かした薫だけ。


「いい加減んに、するのだ!」


天の声。凛と通る声がしたかと思うと、天井から雲が降りて来るではないか。その雲には、三股の猫が乗っていた。

津海小路氏は、叫んで威嚇した。


「邪魔するな、妖怪。お前も、潰すぞ!」

「妖怪とは、情けない。わらわは、如花であるぞよ。その失言、許しがたい。ひれ伏せよ!」


飛び上がった如花は、津海綾路氏(狼男)の鼻先に猫パンチ。


「なんだ、この攻撃は?赤子のような喧嘩のやり方で勝てると思ってるのか。馬鹿にするな!馬鹿に・・?」


怒鳴っていた狼男の大きな身体がグニャリとして崩れ落ちていく。現れた鼠下駄が、宣言した。


「如花様に対する無礼を償うまでは、そうしておれ。動く事も、ままならぬ刑を執行されました!」


御前様と薫は、信じられない光景を見ているしか無かった。何者なのだ、この三股の猫は?

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

モテる兄貴を持つと……(三人称改訂版)

夏目碧央
BL
 兄、海斗(かいと)と同じ高校に入学した城崎岳斗(きのさきやまと)は、兄がモテるがゆえに様々な苦難に遭う。だが、カッコよくて優しい兄を実は自慢に思っている。兄は弟が大好きで、少々過保護気味。  ある日、岳斗は両親の血液型と自分の血液型がおかしい事に気づく。海斗は「覚えてないのか?」と驚いた様子。岳斗は何を忘れているのか?一体どんな秘密が?

キンモクセイは夏の記憶とともに

広崎之斗
BL
弟みたいで好きだった年下αに、外堀を埋められてしまい意を決して番になるまでの物語。 小山悠人は大学入学を機に上京し、それから実家には帰っていなかった。 田舎故にΩであることに対する風当たりに我慢できなかったからだ。 そして10年の月日が流れたある日、年下で幼なじみの六條純一が突然悠人の前に現われる。 純一はずっと好きだったと告白し、10年越しの想いを伝える。 しかし純一はαであり、立派に仕事もしていて、なにより見た目だって良い。 「俺になんてもったいない!」 素直になれない年下Ωと、執着系年下αを取り巻く人達との、ハッピーエンドまでの物語。 性描写のある話は【※】をつけていきます。

【完結】別れ……ますよね?

325号室の住人
BL
☆全3話、完結済 僕の恋人は、テレビドラマに数多く出演する俳優を生業としている。 ある朝、テレビから流れてきたニュースに、僕は恋人との別れを決意した。

十七歳の心模様

須藤慎弥
BL
好きだからこそ、恋人の邪魔はしたくない… ほんわか読者モデル×影の薄い平凡くん 柊一とは不釣り合いだと自覚しながらも、 葵は初めての恋に溺れていた。 付き合って一年が経ったある日、柊一が告白されている現場を目撃してしまう。 告白を断られてしまった女の子は泣き崩れ、 その瞬間…葵の胸に卑屈な思いが広がった。 ※fujossy様にて行われた「梅雨のBLコンテスト」出品作です。

学院のモブ役だったはずの青年溺愛物語

紅林
BL
『桜田門学院高等学校』 日本中の超金持ちの子息子女が通うこの学校は東京都内に位置する野球ドーム五個分の土地が学院としてなる巨大学園だ しかし生徒数は300人程の少人数の学院だ そんな学院でモブとして役割を果たすはずだった青年の物語である

眠るライオン起こすことなかれ

鶴機 亀輔
BL
アンチ王道たちが痛い目(?)に合います。 ケンカ両成敗! 平凡風紀副委員長×天然生徒会補佐 前提の天然総受け

美人に告白されたがまたいつもの嫌がらせかと思ったので適当にOKした

亜桜黄身
BL
俺の学校では俺に付き合ってほしいと言う罰ゲームが流行ってる。 カースト底辺の卑屈くんがカースト頂点の強気ド美人敬語攻めと付き合う話。 (悪役モブ♀が出てきます) (他サイトに2021年〜掲載済)

【完結】遍く、歪んだ花たちに。

古都まとい
BL
職場の部下 和泉周(いずみしゅう)は、はっきり言って根暗でオタクっぽい。目にかかる長い前髪に、覇気のない視線を隠す黒縁眼鏡。仕事ぶりは可もなく不可もなく。そう、凡人の中の凡人である。 和泉の直属の上司である村谷(むらや)はある日、ひょんなことから繁華街のホストクラブへと連れて行かれてしまう。そこで出会ったNo.1ホスト天音(あまね)には、どこか和泉の面影があって――。 「先輩、僕のこと何も知っちゃいないくせに」 No.1ホスト部下×堅物上司の現代BL。

処理中です...