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( 19 )その壱族 ⑥

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トボトボと背を向けて歩き出すエルザを引きき止める手。誰なの?


「もしかしたら、エルザさんですか?」


もしかしなくても、エルザですけど。他の誰だと言うんですか。



「はーい。失礼な振る舞いをしたお馬鹿なエルザですわ(自分に腹が立つ)」
「え、見えない!どうしたの?」
「どうしたって、1人で喜んだだけですけど(それで、抱き付いた恥女です)」
「僕、違う人だと。ね、見せて。」
「見せるって、何を?」
「素敵だー!ドレスも、髪も。化粧もしての?本当に綺麗です!」



え、本当?褒め言葉の連続に落ち込んでいたエルザの気分は急上昇。復活!


「嫌だわ、忘れていました。アンジェリカ様が買って下さったの。化粧品屋で化粧も髪もして下さって。」


嬉しくて、早口になってしまう。止められないー。一晩中でも喋っていそう。ふいに、抱き締められた。


ギュウーーギュッ、ギュッ!


驚いて、エルザは硬直。ジョセフィンが抱き締めてくれた。喜びで目眩めまいがしそう。でも、何か変?


(えっと、ジョシィってちいさいのよね。抱き締めても、頭が私の胸まで無くて。ええええええ、誰!?)


ドンーと力を込めて突き飛ばす。すると、見知らぬ若い男がギラッと目を光らせて見据えた。


「エルザさん。僕が、嫌い?」


ちょっと、低い声。でも、ジョセフィンに似てる。破れているけど、ジョセフィンの服だ。

まるで、小さなジョセフィンの服を無理やり着たように見える。エルザは、蒼白になった。


(大変だわ。誰かが、ジョシィに悪い魔法をかけたのね。助けなくちゃ!)


震える手を上げて、魔力に命じる。


「お願い、ジョセフィンを救い出して!」


すると、目の前で男は苦しみ出した。


「ジョシィは、何処なの。ジョシィ?」


エルザは、ジョセフィンを探す。この男に魔法で飛ばされたのか。だったら、見つけ出さなくては。


「エ、エルザ。僕は、ここだ・・よ。」


暗い回廊に聞こえた弱々しい声。エルザは、魔力で光を灯した。明るい光の下に、床に寝ている小さな身体が見える。ジョセフィンだ。


「ジョシィ、無事だったのね!」


駆け寄り、ジョセフィンを抱き起こすエルザ。あの男は、何処へ?警戒しながら見回すエルザの前に細い脚が2本。見馴れた革靴。



「アグアニエベさん、助けて下さい!」
「エルザさん、どうしたのですか?」
「男の人が、ジョシィを。」
「え、何ですか?服がやぶけてるじゃないですか。」



何を思ったのか、アグアニエベはコートのポケットから何かを取り出す。小さな計測器のようだ。それをジョセフィンの首から背中に当てた。

「ピー」という計測器の音。計測器を見てアグアニエベはニンマリとする。



「これは、これは。何という事ですか。これで、解決ですね。」
「何なんですか?ジョシィが被害に会ったというのに!プンプンー。」
「これを見て下さい、エルザさん。」
「それを見たからって、何があるんですかっ!怒りますよー。」
「ほら、よく見て。目盛りが上がってるでしょ。フェロモンですよ、大人と認められる量が放出されていた証拠です。」
「ふぇろもん???」



放出?大人と認められる?ふぇろもん?何なんでしょうか。私には、理解不能です。

誰か、分かるように教えて下さいませんか。
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