(完)仕方ないので後は契約結婚する

川なみな

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(71) 過去の出会い

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不幸のドン底に居る男に同情したのか、マルグリートはベネディットに優しい態度を見せた。


「私は初めから離婚を前提に嫁いだのです。気になさらなくて良いのよ。自分の身体を大事になさって。」


ベネディットは、マルグリートを見つめる。その眼差しは強く彼女が恥ずかしくなる程に。少しイラついて聞いていた。


「何を見てるのかしら。他の令嬢と変わりないのに(何を見てるのよ)」

「私の子供の頃の記憶にある天使です。」

「はあ?天使ですって。何の事?」

「私は、幼い頃にカリンコロン王国へ行った事があるのです。」


ベネディット・バデロッサ公爵は、実は、マルグリートとは会った事があるのだ。それは、ベネディットの幼い頃。父親が将来の為の体験としてカリンコロン王国へ伴って来た時の事だった。

城での謁見の間で父親を含めた商人達が王様へ貢ぎ物を携えて挨拶をしている間の事だ。乳母と庭で花を見ていると召し使いを従えた一行が前を通り過ぎて行く。乳母が注意した。


「坊っちゃま、王族の方です。見えない場所へ!」


慌てて走る少年。すると、召し使いが見つけて捕まえると声を荒げる。


「お前達は、城の者では無いな。庭になど出て何をしている!」


慌てて乳母が異国から来た商人の子供で謁見が終わるのを待っていると説明会した。だが、兵士の怒りは治まりそうにない。乳母もベネディットも危うかった。


「この方は、王子様の婚約で次期王妃になられる。その方の側に出て来るとは許されない事だ!」

「よして。小さな子どもだから、許してあげて。見なかった事にします!」


顔を上げたベネディットは、目を奪われる。止めてくれたのは、美しい少女だったからだ。立ち去って行く後ろ姿を見送って胸が苦しくなるのを感じた。それから、忘れる事は無かったのだ。


「高価なドレスや貴金属を身に付けても気品は伴わない。その心に汚れがあってはです。でも、貴女の澄んだ瞳には嘘や偽りが無かった。正直な人なのだと感じたのです。」


その言葉にマルグリートは、微笑んだ。他の人は分かってくれなかったけど、本当に理解してくれる人は居るのだ。その1人だけでも、こんなに嬉しい気持ちになれる。


「そして、今も気高くて美しい。私にとって、貴女は天使なのです!」


偽りの無い愛の告白であった。ベネディットは隠して来た想いを打ち明けたのだ。その様子を見ている2人の男。ベネディットのマルグリートへの執着ぶりに疑問を抱く。


「変だな、惚れ薬は解毒したのはずなのに。」

「やめて下さいよ、解毒しましたから。ゴメスさんに、又、説教されます!」


オジサンは、強い者には弱いのだ。病院で「惚れ薬」の反応が出た為にゴメスから、アグアニエベは酷く叱られたらしい。アグアニエベの魔薬の特徴が出ていた為に誰がやったのか分かってしまった。

マルグリートも、それを思い出した。そうだ、私、惚れ薬を使いました。この人に。背中からバシャバシャと。その効果が残ってるのね。じゃ、本気にしないわ。

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