(完)仕方ないので後は契約結婚する

(６７) 風向きが変わったみたい

何だか居心地わるい。何かが怒りそうな気がしてた。そして、その通りになったわ。


「マルグリート様、お話があります。」


私の夫であるトーマ・イトウ子爵令息が、私の家を(婚家の離れ)訪れた。彼の方から来る事は無かったので珍しい。余程の用件らしい。真剣な面持ちで彼は切り出した。


「実は、バデロッサ公爵家のノエミ令嬢に結婚を前提としたお付き合いを申し込みました。それで、契約結婚の解消をお願いに来ました。どうぞ、お許しください！」


平然としてるように見せてはいるが、ドーンッとツキトバサレタよな衝撃を受けた。かなりの動揺。揺れる揺れる。


(え、ノエミ令嬢と？いつの間に、そんな事に！)


でも、本心を見せてはいけないわ。私は、マルグリート・ホスター侯爵令嬢よ。次期王妃なのよ(X婚約解消されました)。

幼い頃から王家の者となるべく叩き込まれたプライドの高さが、気持ちをサラケ出すのを阻む。


(あんたねー、仮にも結婚してんのよ。妻持ちなの。浮気して、どーすんの。若い女の子にヨロピーして何やってんのよ。ギャアギャア！！)


言ってみたいなあ。言ったらスッキリするだろうけど。だけど、私には出来ないのよ。


「そうなんですか。分かりました、離婚しましょう。」


トーマのホッとした顔を見逃さなかった。そうよ、私は束の間の形だけの妻だから。確かに、自分から「直ぐに別れるから」って言ったわよ。でも、こんな風に追い出されるなんて考えもしなかったわ。泣きたい！








呼び出されたアグアニエベが、木の人形に荷物をまとめさせる。マルグリートは、座ってるだけです。来た時と同じ。


「住めば都と言いますし、馴染んでたでしょ。いいんですか、出て行って？」

「いいわよ、離婚するんだから。修道院まで送って下さるわよね。」

「では、離婚した事の報告は私が。侯爵様に。何か、伝言は？」

「ないー(あるわけ無い)」


来た時と違って離婚するので、コッソリと出て行く事にしたマルグリートでした。