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(65) オモチャにされてる

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マルグリートの通っている魔法学校は、ゴメスが校長の私塾だった。無料で魔法を知らない者に初歩から教えてくれるのだ。

マルグリートは授業の時間前に登校して1人で勉強していた。


「お嬢様、何を読んでるんです?」


低いトーンの声が囁くように問いかけてラベンダーの香りが漂う。


「ゴメスさん、背中に密着しないで下さるかしら。暑苦しいのよ(本当は嬉しいけど)」

「おや、気分を害されましたか。失礼しました。」


と、椅子を引き寄せて隣に座る。マルグリートは、我慢の限界だった。左手を顔の前に出して、わざと結婚指輪を見せつける。


「ゴメス先生、私は人妻ですの。お忘れですか?(甘く見ないで)」

「それは、誤解だ。あなたに手を出そうとか思ってない。神に誓う!」

「だったら、お遊びは他でやって下さい。私は忙しいんです。」

「惚れ薬の効能を調べる為に?」


うっ、バレてたのね。いいわ、開き直るから。


「そうですの、興味があって。」

「君の後見人は、トラブルの種を撒くのが欠点でね。惚れ薬は、彼の得意分野だ。もらったね?」

「いいえ、知りません。」

「誰に使ったのか教えてくれるかな。起こらないから。」


柔らかい眼差しでゴメスはマルグリートを見つめる。薄い唇に笑みを乗せて。セクシーな男。それだけで、打ち明けそうになった。こんな人と恋して遊んでみたい。


「なんだよ、仲間ハズレにするな。何を話してんの、マルグリート様?」


ドンと左肩に重みが。エドワードの肘が乗せられてしまった。森林の香りがする。したたかな男に防戦していたら、新しい刺客が登場。


「何でも無いんです、勉強したいだけ!」


ゴメスの余計な一言。


「惚れ薬のね。」


マルグリートはゴメスを睨み付けた。すると、嬉しそうに笑うのだ。


「いいね、その顔。彼女に似ている!」


エドワードも、賛同。


「僕も、そう思ってた。彼女みたいだろ。」


もしもし、その彼女って誰よ?


エドワード「僕の婚約者だよ」

ゴメス「その前は、俺の婚約者だった」

エドワード「僕の魅力に気がついたんだ!」

ゴメス「俺の良さを思い出して戻ってくるはぶだったんだ。俺が死ななければ!」

エドワード「その前に僕が戦死しなければ、僕の花嫁だった!」

ゴメス「生きてたって、俺の処へ戻って来たさ。俺を忘れられずに!」

エドワード「僕を愛してたんだっっ!!」

ゴメス「お前より俺を愛してたんだよ!!」


マルグリートは、頭が混乱。ゴメスの婚約者だった女はエドワードと婚約したの?その女に似てるって、嬉しくありませんー。

言い合う2人。転生前の話を言っても仕方ないじゃないの。女性を取り合って大人の男が言い合うなんて子供みたい。勝手にやってれば!




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