(完)仕方ないので後は契約結婚する

川なみな

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(64) ヘソ曲がりの公爵

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で、どーなの?どーなってるのかしら?


「1、2、3、4、5、6、7、8、9、10ーー!」


興奮して、秒読みしちゃったじゃない。マルグリートは、期待に胸をトキメカセて目の前の男の背中を見つめる。男は、ゆっくりと振り向いた。


「どうかされましたか?」

「え?いえ、別に(おかしいわね)」


何よ、変わらないじゃないの。人を見下した眼差しも。悪魔の持参金したのはバッタもんの惚れ薬なのね。ガッカリしてマルグリートは家に向かって歩き出した。

だが、彼女は見落としていたのだ。

療養所の中へ入った公爵は、胸を押さえて膝をつく。苦し気に顔を歪めた。息が苦しくて、たまらない。頭の中は、1人の者の姿だけだ。


「溺れるようだ、彼女の笑顔に!」


振り返った時のマルグリート夫人の、あの眩しい笑顔に魅了された。キラキラとした瞳に心を天使の矢で射ぬかれた気がする。今、会ったばかりなのに会いたいと気持ちが求めるのだ。

これは、病か?私は、病気になったのか。それとも、彼女の魔法に捕まったのか。






  
ヘルミーナが療養所の様子を見に来ていた。そのついでに、マルグリートの家を訪問。情報を持って。


「マルグリート様、ショッピングに付き合って下さって助かりましたわ。」

「どうせ、貴女の事だから公爵の店を敵情視察したのね。繁盛してたらライバルだもの。」

「やっぱり、分かってらっしゃるわ。バデロッサ公爵は商売が上手ですから、負けてられませんの。」

「公爵って、表に出るのが好きなのね。」

「それは知りませんけど、先代の公爵が亡くなって若くして公爵を継いだ後に商売に成功したらしくて。次々に目新しい事をやって来た実業家でしてよ。」

「そう、私の好みじゃないけど(惚れ薬は失敗したし)」


貴族って我が儘なのよ。その気持ちを掴んで自尊心を満たさせないと振り向かない生き物。それを読んで経営者としての商才が有るのなら素敵。働き者は嫌いじゃないわ。

マルグリートは、何かが起こっている事を知らなかったのだ。
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