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(63) 実験させて
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翌日、乗馬をしているマルグリートを待っていたアグアニエベ。ご機嫌の良くない令嬢の様子に褒めあげる。
「マルグリートお嬢様、良い馬ですね。手綱さばきがお上手ー。」
「運動不足を解消しようと思って手に入れましたの。でも、呪いの土地ですから弱ってきてて。」
「あら?では、鋼鉄の馬人形でも。」
「いらないわ。そんなのに乗って魔物退治にでも行くの?」
ご機嫌取りの悪魔も、たまには失敗する。だから、奥の手を。
「やっと、手に入れて参りました。お嬢様から頼まれていた品です。」
アグアニエベが差し出した小さな袋に、マルグリートは目を輝かせる。
「そうなの?これが、惚れ薬なのね!」
「聞いてよろしいですか。どなたに、お使いの予定で?」
「そんなの、いいでしょ。プライベートで使いたいの。解毒剤も、あるわよね。」
「はい、こちらに(きっちりしてる)」
惚れ薬を欲しがる人間は多いが、解毒剤もセットで求める者は少ない。惚れさせる事だけを考えているからだ。
アグアニエベは、ニコニコ顔で帰って行った。マルグリートは、悪い予感がした。罠が有りそうな気がする。と、家の中を点検した。
「やっぱり、あったわ。盗聴機を仕掛けてくなんて、悪い悪魔ね!」
そりゃ、悪いから悪魔なんであって。見付けられるようにした盗聴機と見付けられないようにした写真機を仕掛けてあったのだ。1つ、見つけたので安心している令嬢。罠にハマる。
「ハーパー店長に惚れ薬を使う前にテストしたいわ。」
やっぱり、狙っているのはハーパー店長立ったのだ。だが、確実でないと動かない戦略家。誰かで確かめたかった。そして、獲物を探しに家を出る。
「あら、バデロッサ公爵様。妹様のお見舞いですか?」
療養所の前で明るく声をかけるマルグリートに、ムスッとした公爵が挨拶を返す。マルグリートが来店して以来だった。あの時、絹のショールをエドワードが買ってくれたのだ。公爵にとっては、たったショール1枚なのだが。
「こんにちは、マルグリート・H・イトウ子爵令息夫人。」
令息まで丁寧に付けるのは、この威張った公爵だけ。イラッとするが、耐える。笑顔の影に押し込みます。
「お仕事、大変ですのね(嫌味よーん)」
「はい、仕事ですから。妹を結婚させるまでは私が頑張らないと(つきまとうな)」
「そうですね。では、失礼致します」
ホッとして背を向けた公爵の背中に惚れ薬を浴びせる。頭から浴びせたかったのだが、長身なので手が届きませんでした。
果たして惚れ薬の効き目は、いかが?
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