(完)仕方ないので後は契約結婚する

川なみな

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(57) 近づき過ぎです

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まさか、知ってる顔と店で遭遇するとは。


「やあ、貴女と会えて嬉しいな。」


両腕を広げて突進して来る美男子に、素早くマルグリートは身を交わす。その為に犠牲になったのは、ヘルミーナだった。


「ひっー!」

「こちらは、ヘルミーナお嬢様では。お会いしたかったんだ!」


捕らえられたヘルミーナは抱き締められて真っ赤な顔でもがくだけ。店内に居る女性客から悲鳴のような声が上がる。結局、誰でも良いわけね。


「エドワード様がーー!」
「エドワード様が女の子をバグしてます!」


ちょっと残念な顔のエドワードが逃したマルグリートを見つめるが、マルグリートは冷ややかに見返すのだ。騙されないわよ。


「こんにちは、マルグリート様。僕を忘れた?」

「忘れるわけ、無いでしょ。私も会いたかったですわ。エドワード様。」

「本当に、嬉しい。今度、お茶しよう?」

「ええ、そのうち(嘘ですわ)」


貴方が爽やかな笑顔の下に何も考えててないのを知ってるわよ。どうせ、女の子の顔のパーツも覚えて無い。私なんて、貴方の記憶に「顔なし」くらいの存在よね。

ピーター王子の婚約者と決められて子供の頃から次期王妃への妬み嫌がらせの中に晒(さら)されて来たのよ。よく、分かってるわ。


「お客様、ショーが始まりますのでお座り下さいー。」


広いホールに置かれた椅子に客達が腰を降ろす。何故かマルグリートの隣に座るエドワード。マルグリートは女性客からの突き刺さる視線に耐えた。


「マルちゃん。僕も、そう呼んでいいよね。クラスメートだから。僕をエドって呼んで欲しいな。ね?」


隣に座って顔を近づけるな。余計にご婦人方に睨まれてます。


「まー、あの人ったら。エドワード様に付きまとって!」

「そうですよ。エドワード様に馴れ馴れしいったら!」


聞こえてますけど。貴族のエチケットととして品良く聞こえないように小声で罵倒や罵りは押さえましょう。

その時、店の奥から登場した1人の男。皆が大喝采。何者なのだろうか。白い絹のタキシードには華やかな刺繍と煌めく宝石の粒。クルリと回って笑顔を振り撒く。


(派手な衣装だわ、大道芸人なのかしら。でも、覚えのある顔のようね。私、見た顔は忘れませんから。えーと、えーと、あっ!!)


マルグリートは、驚きに目を見開く。まさか、あの人では?

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