(完)仕方ないので後は契約結婚する

川なみな

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(39) 母親と子

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寝込んでいた王妃は、側に居る第2王女の姿に夢だと思ったようだ。笑いながら泣いている。


「まあ、ヘルミーナの幻が見えるわ。私の子供の中で何のスキルも無い。心配なだけの第2王女が。」

「お母様、幻じゃありません。私、帰って来ました。知らせてくれたら良かったのに!」

「ヘルミーナ?どうして、帰って来るの。貴女まで危険な目に。」


帰って来るなという手紙は、こういう理由だったと分かる。足止めしたかったのだろう。


(お母様、ごめんなさい。ヘルミーナは愛されてないと思ってたんですの。)


心の中で謝る娘。きつく抱き締められて母親の温もりを感じる。こんなに強く抱いてくれた事なんて無かったから。


「ヘルミーナ、私の可愛い姫。何のスキルも無い子供だから、わざと厳しくしていたのよ。」


姉も弟もスキルを持っているのに1人だけ与えられなかった。その事を召し使いばかりでは無く乳母までが馬鹿にしたのだ。


『王家の乳母だっていうから喜んで仕事を受けたのに、スキルの無い王女だっていうでしょ。私にとっては、経歴に傷がつくわよ。平民の子を世話してるような物だから。』


そう言って、必要以上の世話はしてくれない。世話してくれたのは、悪魔のアグアニエベだった。鑑定スキルを与えてくれて商売の基礎を教えてくれました。ヘルミーナにとっては恩人です。

だけど。ちょっと、心配してたの。花嫁になれって求められないかと。でも、そんな事ありませんでしたわ。好みのグラマラスなボディー娘になれなかったかしら。








セプテム国では、ヘルミーナの婚約者のライアン王子が母親を訪ねていた。経営している葡萄農園の仕事に忙しい彼女が笑顔で息子を迎える。


「お母さん、ヘルミーナから預かって来たんだ。」


それは、ヘルミーナから渡されていた服だった。包みの中には作業着や普段着まで揃えてある。農作業を始めて間もない母親を気づかってくれてるのだ。


「お嬢様には助けて頂いて感謝しているのよ。私なんかに、こんな農園を任せて下さったんだもの。」


この国の王の妾妃でありながら、王宮から追い払われて下町で暮らしていた母親。挨拶に来たヘルミーナが畑を買い取り仕事を与えてくれたのだ。


「僕は、魔法学校に行ってるんだ。魔法を覚えたらゴメス商会で仕事をもらって自立するつもりだよ。」


自分と母親にした王家の仕打ちを忘れる事は無いだろう。このまま、使い捨てにされたくない。王家から出る事を決めていた。ヘルミーナと結婚して。


「そうなの?でも、王家には魔法が使える事は内緒にしてないと。あなたの洗礼の時に鑑定して能力無しという判定を受けたのは嘘だったんですもの。跡継ぎ争いから外す為だったのよ。それが、魔力があると分かったら。」


それは、覚悟している事だ。魔法を使う仕事をしていれば、何時かは知られる。それまでに、国から出る事を考えていた。

この国では、跡継ぎ争いに巻き込まれるだけだった


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