(完)仕方ないので後は契約結婚する

(３７) ゴメスの話

打ちのめされた可哀想なライアンはヨロメキながら帰りマイコは自室へ引っ込んで静かになったリビング。

泣き止まないマイコを自室へ送り慰めるヘルミーナ。


「いいのよ、マイコ。気にしなくても、あなたのせいじゃないから。私が無理に頼んだ事だもの。」

「ひっく、ひっく、そうじゃないーんだもん。しくしく。」

「後は、いいから。休んでちょうだい。嫌な目に合わせてゴメンなさい。」

「ひっく、ひっく、お嬢様。あたし、あたし、楽しかったーんだもの。うええええーん！」


自分が身代わりの侍女だと知った時のライアンの顔が忘れられない。それまでは、宝石でも見るように見つめてくれたのに。

もう、あんな目で見てくれないかと思うと胸が張り裂けそうなんです。


「聞いて下さい、お嬢様。実は、あたし・・。あ、居ない！」


思いきって打ち明けようとしたら、ヘルミーナは部屋から出て行っていた。マイコは、打ち沈む。








送ったヘルミーナが戻って来るとゴメスは用件を話した。


「お嬢様は、ベアトリーチェ・ドルジュ令嬢の事を知ってるかなと思って。」

「そんな名前の方は知りませんわ。私、貴族令嬢会の例会も出た事が無いんですの。令嬢たちとの付き合いはしてないので。」

「そうですか。では、別の処から調べてみます。」

「その方が、何か？」

「お嬢様と波動が同じだったと、ハーパー店長が報告しましてね。気になるでしょう？」


そんな話をされたら、気になるのは当たり前。「波動」って、親子でも似る事は無いって聞いてます。なのに、知らない人と同じなんて変ですわ。


「それは、そうと。大変です、ドモン国は。」

「大変って、私の国が何か？」

「内乱ですよ、宰相が謀反を起こして。俺も、あの人がと驚いたくらいだから。」

「宰相が、謀反ですって！？」


ヘルミーナは、仰天する。宰相は王家に誠心誠意つくして来て王様の信頼も厚かった。その人物は、絶体に反旗を翻すような１人は無いのだ。

驚きのあまり卒倒しかけたヘルミーナをゴメスが抱き抱えてソファーに座らせる。その後、快方してくれてのだがヘルミーナには覚えて無かった。