(完)仕方ないので後は契約結婚する

(３４) その兄と妹

ベネディット・バデロッサ公爵は、ハーパー店長に問いかけた。


「この方も、患者でしょうか？」

「こちらは、この土地の領主であるイトウ子爵家令息の奥様です。」

「私の妹に近づけないで頂きたい。貴族の令嬢が側に居るだけで体調が悪くなる。」

「承知いたしました。マルグリート様、申し訳ありませんがご遠慮して下さい(退場！)」


何という事よ、追い払われてしまった。時期王の婚約者で未来の王妃だった私が？ムカつく、あの公爵。悪魔に頼んで頭に銅貨ハゲでも作らせようかしら。プンプンー！







７DKの小じんまりとした館には、ゴメス商会から派遣された使用人が配置された。バデロッサ公爵は、躾の行き届いた彼等に満足した様子。


「良かった。貴族というより王族の貫禄のある令嬢が居なくなって。ただでさえ、令嬢とは合わないのに。君は。」


シンプルだがセンスの良い調度品で整えられた客間の寝台に横たわる少女を愛情のこもった眼差しで見つめる。


「ノエミ、私の大切な妹。父も母も世を去って、家族は君だけだ。どうか、良くなっておくれ。」


ノエミ・セレナ・バデロッサ公爵令嬢。呪いにかけられた患者であった。診療所に初のお客様。完璧主義者のハーパー店長は、簡易安全検査機で診療所の周囲を計っていく。安全第一なのだが、害虫発見。


『有害です、処理して下さい！有害です、処理して下さい！』


ハーパー店長は対象物を見て顔をしかめる。


「ちょっと、あなた。今、私を見て嫌な顔になりましたわよね。そんな事って、ある。あ、る、の？」


たちまち、パワー解放する令嬢。イトウ子爵家の令息夫人マルグリート。元王妃候補だっただけに迫力がある。確かに病人には「害虫」でしょう。


(綺麗なだけに、毒がありそうだな。)


ゴメス商会での売り上げがトップグループに入る凄腕店長。素早く営業スマイルを顔に貼り付けた得意の美男子の微笑みに害虫を惹き付けるのだった。

イトウ子爵家マルグリート夫人は、ゴメス商会の「要注意」枠に入れられました。全ゴメス商会で取り扱いが厳しくなります。本人は、知りません。