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(26) 欲しいと手に入らない

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ヘルミーナはイトウ子爵の領地にマンダゴラを栽培を本格的に行う工事に訪れた。試験的に土を持ち帰り植えてみたのが成功したのだ。


「マルグリート様、私の婚約者のライアン・マルケス・サルベリー王子様ですわ。」


赤みがかった金髪の若者が荷物を降ろして挨拶してくる。


「こんにちは。ライアンさんとは、お会いしましたわ。」

「え、そうですの。何処で?」

「何処って、魔法学校よ。私も学校に通う事にしたから。」

「へえ、そうなんですか。」


あら、それだけ?美人の令嬢と夜の学校で同席なのよ。少しは嫉妬しなさいよ。これは、駄目ね。彼に関心が無いわ。

マルグリートが、わざとライアンに馴れ馴れしくしても気にもしてないヘルミーナ。だけど、ライアンは目を離さない。一方通行でした。


「こんにちは、皆様。作業員と道具を届けに来ました。工事を始めます!」


現れたのは、ゴメス商会のハーパー店長。てきぱきと指示して、あっという間に畑を造り種付けもしてしまう。仕事が早い。

手伝いもしないで見てるだけの暇な人は、マルグリート令嬢。物欲しそうにハーパー店長を眺めていた。


(欲しい、あの人。どうやったら、私の物になるかしら?魔法でも掛けてもらう?私を好きになーれ、とか。)


出来上がった畑は、普通に畑。何の代わり映えしません。ハーパー店長は、ヘルミーナとイトウ子爵に何かを手渡した。


「では、確認をお願いします。このヘッドフォンは必ず付けて入ってください。」


ヘッドフォンを付けたハーパー店長達は畑に入って行く。すると、姿が消えてしまった。何処へ行ったのだろう。

消えたハーパー店長は、説明していた。


「侵入者に見られない為に目隠しの結界を張っています。マンダゴラの叫び声も外に洩れないように。」


ヘルミーナが外から確認したいと頼んだので畑から出る。そして、残ったハーパー店長が畑でマンダゴラを抜いてもマンダゴラの叫び声は聞こえなかった。


「素晴らしいわ、ハーパー店長!何も聞こえてないのよ。本当にゴメス商会の仕事は完璧よ!」

「褒めて頂き光栄です。私どもの商会は、お客様第一で誠心誠意つくすのが会長の方針ですから。当たり前の事をしているだけです。」


マルグリートの頭に昨夜のゴメスの顔が浮かぶ。素敵な人だった、欲しい。カタログにゴメスさんは載ってないのかしら。


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