(完)仕方ないので後は契約結婚する

川なみな

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(20) あなたに頼みたいの

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夕食の時間になると隣りのヘルミーナの家にライアンが来るのが習慣となっていた。

それは、ヘルミーナが決めた事。都から連れて来た召し使いや兵士を返してくれるなんめしまったので、お互いに使用人は1人だ。それくらいの食事の支度なら別々にやっても無駄だからと。ライアンは家に昼に居る時は来て食べている。 

支度といっても魔法で時間になると食事が出て来るようになっているので、手間隙もかからない。食べ終わると勝手に片付けてもくれる。便利だ。

今夜も夕食の時間に2つの家の間にある柵を越えてライアンが従者と訪問。勝手知ったる婚約者の家。大きくもないので、知らせずに入って来る。


「こんばんは、ヘルミーナお嬢様。」

「こんばんは、ライアン様。」


居間で読書していたヘルミーナは、本を閉じると微笑んで立ち上がった。ライアンは手を取り口付ける。


「んにゃー!(キスした!)」

「何の本を読んでるんですか?」


ビクつかれてるのに動じない若者。手の上の婚約者の手を指で撫でている。急いでヘルミーナは手を引っ込めた。


「これまでの各国の輸出入の結果を評価した学者の本ですわ。お読みになる?」

「いいえ、僕は学問は得意じゃないから。身体を使う方で働きますよ。」


ライアンは自分の家族には魔法が使える事を隠して雑務をこなしていた。妾妃の子なので役職は与えられないらしい。知られないように夜はゴメス商会の夜間学習で魔法を学んでいる。他にも学んでいるようだが、誰が教えているのか。


「他国の舞踏会に出た時の為に、ダンスも習い始めました。踊ってみますか?」

「んにゃー!(触った!)」


いきなり、腰を抱かれてヘルミーナは固まった。昨夜までは無かった事。今夜はレベルアップしたスキンシップなのね。


「私はダンスは不得手で。婚約者が1人で舞踏会へ行くのが好きだったのです。お、おほほー。」


そうなのだ。本を読むのが好きなヘルミーナに勝手に本を読んでろと誘わなくなっていた。そして、婚約者が来たがらないと同情を引いて女性達と楽しい夜を過ごす人だった。


「申し訳ありません。嫌な事を思い出させましたか?僕は、女性の扱いが下手ですね。」


ショボンとした態度をされると構いたくなるのが女の心情。誰だ、教授したのは。あのヘッポコ悪魔か。


(お嬢様を困らせる事を教えてたのなら、このマイコが許さないから。フンッ!)


実は、ヘルミーナでは無くマイコが成り済ましていたのだ。主人の頼みを断りきれずに。ヘルミーナはお出かけしました。お守りさせられている侍女です。

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