(完)仕方ないので後は契約結婚する

(１９) そんな人だとは

婚約して半年ですが。今では触れてくるわ、油断すると手に頬にキスしてくる。逃げなければ何をしてくるか。想像するのも怖いー。


(ライアンの家を隣りに建てるんじゃ無かったわ！)


ゴメス商会の組み立てハウスを並べて建てたのは考え無しだったと後悔しても遅し。自分の家のように出入りして何かとスキンシップしてくるのだ。

間違いない、好かれているわ。あの熱い眼差し。空気を通して伝わるビリビリ感。覚えがあるから分かる。丸ごとOKの結婚相手だと考えているのよ。


(嫉妬深いお父様が、お母様に独占欲を出してた時と同じ態度ですわよう～～
！)


王様は奥方が大好き。結婚して何年たとうが子供に対してもヤキモチを焼いて気を使わせる始末。独占欲なのは自分の父親だけだと思っていたのに。

あれは、マジだ。何時かは、襲われてしまう危険率上昇中。押し倒されて結婚させられる前に手を打たないと。ヘルミーナの悩みの種になっていた。










故郷の母王妃から手紙が届いた。それを読んでヘルミーナは溜め息をつく。同情して侍女のマイコが励ましてくるのだ。内容が分かっているので。


「やっぱり、帰って来なくていいですか。お嬢様？」

「さっさと、結婚してしまいなさいですわ。その挨拶の為の帰郷なら許すと。」

「だったら、結婚なさっては。あれー、お嬢様！」


マイコは叫びながら逃げ出す。お嬢様が自分に突進して来るからだ。２人はグルグルと部屋の中を走り回る。そして、疲れたヘルミーナが座り込んで追いかけゴッコは終わった。


「泣かないで下さい、お嬢様。よしよし。」


泣き出した主人を侍女が肩を抱いて慰める。ヘルミーナは故郷が懐かしいのだ。帰りたいのだ。移動魔法を使ったら直ぐなのに。

娘が魔法を使っているのを知らない母親は自由に里帰りを許してくれと頼んだのに許してくれない。


「お母様は、私を捨ててるわ。婚約破棄される娘だから恥ずかしいのよ！」

「そんな事ありません。私に守ってくれと言われましたから。」

「本当に？」

「はい、嘘なんか言いませんよ。マイコは、正直者です！」

「じゃあ、私を守って欲しいわ。」


涙に濡れた顔が抱いている侍女を見上げて微笑んだ。マイコは、戸惑う。何ですか、これは？