(完)仕方ないので後は契約結婚する

川なみな

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(5)後見人は魔法使い

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トーマは目にした物が現実と思えずに尋ねていた。


「これは・・・、夢ですか?」

「夢?素晴らしい表現ですね。夢と思われるなら、貴方もご一緒に。人形では物足りないと思っていたのですよ。一緒に飲みましょう。お嬢様は、飲み潰れてしまわれて。フッヒヒヒヒー!」


アグアニエベは酒臭かった。これは、酔っているようだ。早く帰らないと。両親が待っている。


「ご両親ですか?では、お呼びしましょう。皆で飲むのてす、酒なら有りますよ。ヒヒヒヒー!」


次の瞬間、イトウ子爵夫妻が離れの中に立っていた。2人は訳が分からずに茫然としている。ウェイターのお仕着せを付けた木の人形がグラスを持ってきて手渡してきた。

アグアニエベは、トーマにグラスを取らせてシャンパンを注ぐ。ジャバジャバと水のように惜しみなく。


「さあ、飲みましょう。今宵は、貴方様の結婚祝いですよ。おめでとうございます!」


全てが魔法みたいだった。廃屋の中は宮殿のように名工の造ったよな素晴らしい宮殿なみの壁や天井や家具も絨毯もある。酒は飲んだ事の無い美酒で魂を奪われそうだ。

魔法を掛けられたイトウ子爵親子は、言われるままに酒を飲み食べた事の無い美味しい料理を食べる。何も考えられない、アグアニエベの命令で楽しむだけだ。


「なあに、うるさいわねえ。」


酔い潰れていたマルグリートは、ソファーの上でクッションで耳を塞ぐと眠り込む。離れの中で明け方までパーティーは続いたのだった。









トーマが目を覚ますと、母屋の自分の部屋のベッドで寝ていた。


「変な夢を見たなあ。離れの中が豪華な内装になってたんだ。有るわけ無いのに。」


そう言いながら部屋の外に出た彼は、部屋に戻って再び外に出る。


「ここは、家だ。間違いない、夢の続きか?」


昨日までの床の踏み板が鳴る程に老化していた廊下が新品のように変わっていた。恐る恐る歩いて食堂に辿り着くと、父親と母親が椅子に茫然として座り込んでいる。


「おい、トーマ。教えてくれ、お前の父親は狂ったか?そうでないと、家の中が別の家のように新しく見えるのは変だ。1晩で改装なんて出来ないだろう!」

「トーマ、お母さんも頭が変なのかしら。何もかも新しくなってるのよ!」


トーマは何も言えなかった。自分でも分からないからからだ。そこへ、陽気にアグアニエベが登場。


「皆さん、おはようございます。あたかも家の中は気に入って頂けましたか?昨日、離れのようにして欲しいと言われましたのでご希望に添いました。嬉しくないですか?」


イトウ子爵親子は、理解した。この男は、とんでもない魔法使いだったのだ。

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