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251 兄と弟

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 「ほう、勘十郎はワシと対立するつもりはないのか?親父に付き従ってきた中の大半はお主を支持しておるのだぞ?」

 信勝は末森城で土田御前の乱心を知った後密かに那古屋城にいる兄に会いにきていた。

 「はっ、私は兄上のように優秀さを父に認めて貰いたいと妬むこともございました。しかし、弓引くつもりなど毛頭もございませぬ。例え、父に付き従ってきたもの達が私を担ごうとも神輿になる気はありませぬ!」

 信長は平手政秀と側支えを数人おき、自室で弟と会っていた。

 「で、あるか。母上には困ったものよのう。爺からも母上の元に坂井からの密偵が接触している事は聞いていたが…。」

 信長が力強い目線を信勝に対して向ける。信勝はその目線をしっかりと見つめ返し、たじろぐ事なく対応する。

 「できますれば大ごとにならぬように母上を幽閉するなり寛大なご処置を…」

 信勝としては母が問題行動を起こしているのは分かっていたが肉親の情と言うこともありなんとかしたかった。

 「いや、母上にはこのまま好きに動いてもらう。この際に邪魔立てする奴らは全員掃除だ。その後に殺す以外の方法で母上に罰を与えるとしようぞ。」

 信勝もすぐに頭を回して兄の言うことを理解しようとした。母親を死罪にはしないが利用はするつもりである。邪魔者を一掃すると言うことは神輿として周りの反逆者を集めれば良いと結論付けすぐに兄の言葉に答える。

 「はっ、では私は担がれておけばよろしいですか?」

 信長はじっと手を顎に当てながら目を瞑り考え出すといきなり立ち上がり指示を出した。

 「そうだな。爺達が証人だ。勘十郎には謀反の振りをして貰うとする。勘十郎自体に被害が及ばぬようにうまく立ち回るのじゃ。いいな!」

 信長からしたら兄弟というだけで重用したりするつもりはなかったがここまで自分の考えを読み取れるならば今の側仕えたちと共に使って鍛え上げる事で自分の頼りになる戦力となるかもしれないと期待を抱いていた。

 「「ははっ!」」

~~~~

 風魔は尾張の忍び達を取り込み、北条式訓練=鉄砲や苦無、隠密行動の際のハンドサインや緊急時の動き方など北条の忍びとして必要な要素を順次叩き込んでいき現地の忍びと交代させていった。山犬と呼ばれたあの男はすぐ様訓練を受け終えると坂井との連絡役に戻り尾張の内情をダダ漏れにしていた。

 勿論北条として、氏政としては信長につくため協力を惜しまないつもりだが勝手に忍びでかき回すつもりもなかった。他人に土足で踏み込まれて荒らされるのはプライド的にも許さないだろうと思っていたからだ。

 そう思っていたところに信長から尾張に入れている忍びからの情報をまとめてこちらにも伝わるように欲しいと文面から頼み込むように書いてあった為、氏政は即決し風魔を通して信長にも連絡がいくように繋いだ。

 ちなみに、氏政は信長や氏康、綱成など各武将からの手紙などは全て個別に保管しており個人の宝物庫に放り込んであった。
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