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しおりを挟むすいません。就活などで更新遅れました。
「んんっ、私個人としては理解いたしまする。しかし!他の方々がなんと言うかまでは私には分かりかねまする。その点ご承知頂いて義輝様に拝謁していただきたい。よろしいか?」
…まあ、もともと幕府を訪れるつもりではあったので不満はないがつくづく面倒さい事になったと思う。
「はっ、もちろん伺わせていただきまするが今日明日に向かうのは難しくございまする。いつ頃ならばよろしいでしょうか?」
「ふむ、やはり誠意を見せるならば早ければ早いほど良いが今日明日は皆の都合が良くないであろう。3日後などはいかがでござろうか。私が義輝様に伝え拝謁の準備を整えておきましょう。」
こちらが拝謁すると言う現地を取ったからか藤孝がやっと落ち着いてこれからの段取りを決めようとしてくれる。
「わかりました。では、3日後に伺わせて頂きまする。藤孝殿は本日泊まっていかれまするか?」
「いえ、お気持ちだけ頂いておきまする。」
藤孝は早くこの状況を幕臣たちに伝えなければと思っていたが、氏政からの言葉で伝えたところで変わらない気もするし今日は自宅に帰って明日伝えるかと思い直していた。
「では、食事だけでも如何にございましょうか。関東から持ってきた清酒などもございまする。」
「ほう、それはありがたい申し出でございまするな。これを断るのは礼を失している事だし喜んでご相伴に預ろう。」
堅苦しい雰囲気を崩して、席まで案内をして、用意させていた料理をすぐに持ってこさせる。藤孝は京では未だに珍しく貴重な清酒を気にせず飲めると言う事で割と早いペースで杯を重ねていく。
「藤孝殿には骨を折って頂き感謝致しておりまする。我々は関東の田舎にいるもので京での情勢や作法などには疎く、幕臣の方々にも勘違いされている様で…我々との繋ぎ役をされている藤孝殿にもさぞ迷惑をお掛けしている事でしょう。」
俺は藤孝殿に酒を注ぎながら心理的に寄り添っていますよと労う。酒がある程度回っており、幕臣共とやり合っている藤孝はまだ若い事もあって、そうなのだ…と弱音を漏らしている。
「これからも何かと手間をかけさせてしまうでしょうし、朝廷への貢物をする際に藤孝殿個人にもよろしければ贈り物をさせていただけないでしょうか?」
実際は近衛家を通して公家たちにもシンパを作っているがそれは言わなくても良いだろう。ここで藤孝と個人的に縁を結んでおくことによって後々に生きてくるかもしれない。織田派に取り込まれるくらいならば親北条派でもいいだろう。それに、藤孝自身も有能だしな。義輝が退場した際に引き抜かことができれば万々歳だが…。
「それはありがたい事だ。是非とも頂こう。こちらからも京の特産物や珍しいものが入ってきたらなるべくそちらに融通できるようにしようではないか。」
「はっ、できますれば茶道具に関する物や刀剣に関するものがあれば是非にでも…。」
この時代にまだ残っている名刀や史実でも国宝となった物、それにそう遠くない未来で政治的価値を持つ様になる茶器などは欲しい。
「ほう、氏政殿は茶道を好まれるのか。私は歌道を嗜んでおりましてな。ご縁がござれば是非とも。」
「そうなのですか!私も祖先である北条早雲様が残した『歌道を心得ていれば常の出言に慎みがある』という名言に感銘を受け、常々歌道に関わってみたいと思っていたのです。」
藤孝の不安が解消され、氏政との個人的友誼も結べた事でこれからの未来が少しマシになり安心した藤孝を氏政はもてなしながらそろそろ幕府にも顔を出さないといけないのか…とゲンナリしていた。
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