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氏政宅
人が訪ねてくるには少し遅いと言うべき時間に先触れがやってきた。細川藤孝が幕府の使者としてこちらにくるとのことだ。粗方予想はついているが面倒な事になったとため息をつきながら出迎えの用意をする。
藤孝が幕府の使者としてくると言うことは義輝の名代としてくると言うことだろう。上座をあけておく。屋敷の門の前で家臣たちと共に立って藤孝がやってくるのを待つ。藤孝は御輿に乗ってくる物だと思っていたが、馬に乗ってこちらにかけてきていた。よっぽど急ぎの用事があるのか切羽詰まっているのだろう。
「ようこそおいでくださいました。ささっ、こちらの者に馬などはお任せくだされ。お部屋までご案内致しまする。」
なるべくにこやかな笑顔を浮かべながら藤孝を出迎える。藤孝は感謝致すと呟くと居住まいを正して後ろについてくる。用意しておいた部屋に案内すると、屋敷の下人に扮した風魔の女忍が温かい白湯を持ってくる。
「まずはこちらをどうぞ。外は大変寒かったと思いまする。手と身体を温めくだされ。」
「これは、かたじけない。感謝致す。」
藤孝が飲み終わるのを待ちながらも緊張感を崩さない様にして厳かに待つ。
「さて、今回私がここにきたのは何故かわかりますかな?」
藤孝が少し不遜な態度で高圧的に問いかけてくる。そんなことされてもびくともしない氏政に苛立ちながらも言葉をつづける。
「北条殿は義輝様に弁明するために京へやってきたのだと私は思っておりましたが、こちらへきてすぐに朝廷へと向かいまるで幕府に楯突く様に官位を様々頂いたようで。これはいかなることにございまするか?」
藤孝は言葉を取り繕う事もせずに感情のまま思いをぶつけた。言い切ってからはしたない事をしたと思ったのだろうか少し襟元を直して落ち着こうとしていた。
「まず、勘違いしないでいただきたいのは我々は元々幕府に先に向かおうとしておりました。しかし、私の友である近衛前久殿から是非にもと乞われて断ることができずに近衛邸に向かったところ、主上の命により参内する様に命じられたのです。畿内の武士はどうか知りませぬが我々坂東武者は昔ながらの朝廷を守るための武家という考えが根強く残っておりまする。そんな我々が主上から呼ばれたら行かぬわけには行きませぬ。」
むぅと藤孝は唸る。言っていることは正論でありそこを咎めることは朝廷よりも幕府が上だと主張する様なものであり言えるはずもなかった。
「では、官位を頂いた事はどう言う事なのでしょうか。幕府に認めてもらえずとも良いと言うふうに受け取る事もできるが?」
「官位はこちらがねだったものにはございませぬ。それは勘違いなされないで貰いたい。朝廷から今までの勤皇の心を認めてもらい、報いるために帝が与えてくださったものにございまする。それは我々北条に対する侮辱行為と受け取ってもよろしいのか!?」
少し語尾を強めて高圧的に言い返す。幕府としては北条からの援助はどうしても欲しいはずだ。北条が従う姿を見せる事で諸大名にも幕府此処にありと権威を見せつけたいのだろう。だからこそ我々の気分を害する事は難しい事を思い出させてやらねばならない。
「い、いやその様なつもりでは無かったのだ。ただ幕府内部で北条の傍若無人な活動が幕府を蔑ろにしていると言う意見が強い風潮なのだ。」
「いえ、こちらも言い過ぎました。申し訳ございませぬ。」
ここで引いておく事で相手に心理的負担を相手に与えておく。
人が訪ねてくるには少し遅いと言うべき時間に先触れがやってきた。細川藤孝が幕府の使者としてこちらにくるとのことだ。粗方予想はついているが面倒な事になったとため息をつきながら出迎えの用意をする。
藤孝が幕府の使者としてくると言うことは義輝の名代としてくると言うことだろう。上座をあけておく。屋敷の門の前で家臣たちと共に立って藤孝がやってくるのを待つ。藤孝は御輿に乗ってくる物だと思っていたが、馬に乗ってこちらにかけてきていた。よっぽど急ぎの用事があるのか切羽詰まっているのだろう。
「ようこそおいでくださいました。ささっ、こちらの者に馬などはお任せくだされ。お部屋までご案内致しまする。」
なるべくにこやかな笑顔を浮かべながら藤孝を出迎える。藤孝は感謝致すと呟くと居住まいを正して後ろについてくる。用意しておいた部屋に案内すると、屋敷の下人に扮した風魔の女忍が温かい白湯を持ってくる。
「まずはこちらをどうぞ。外は大変寒かったと思いまする。手と身体を温めくだされ。」
「これは、かたじけない。感謝致す。」
藤孝が飲み終わるのを待ちながらも緊張感を崩さない様にして厳かに待つ。
「さて、今回私がここにきたのは何故かわかりますかな?」
藤孝が少し不遜な態度で高圧的に問いかけてくる。そんなことされてもびくともしない氏政に苛立ちながらも言葉をつづける。
「北条殿は義輝様に弁明するために京へやってきたのだと私は思っておりましたが、こちらへきてすぐに朝廷へと向かいまるで幕府に楯突く様に官位を様々頂いたようで。これはいかなることにございまするか?」
藤孝は言葉を取り繕う事もせずに感情のまま思いをぶつけた。言い切ってからはしたない事をしたと思ったのだろうか少し襟元を直して落ち着こうとしていた。
「まず、勘違いしないでいただきたいのは我々は元々幕府に先に向かおうとしておりました。しかし、私の友である近衛前久殿から是非にもと乞われて断ることができずに近衛邸に向かったところ、主上の命により参内する様に命じられたのです。畿内の武士はどうか知りませぬが我々坂東武者は昔ながらの朝廷を守るための武家という考えが根強く残っておりまする。そんな我々が主上から呼ばれたら行かぬわけには行きませぬ。」
むぅと藤孝は唸る。言っていることは正論でありそこを咎めることは朝廷よりも幕府が上だと主張する様なものであり言えるはずもなかった。
「では、官位を頂いた事はどう言う事なのでしょうか。幕府に認めてもらえずとも良いと言うふうに受け取る事もできるが?」
「官位はこちらがねだったものにはございませぬ。それは勘違いなされないで貰いたい。朝廷から今までの勤皇の心を認めてもらい、報いるために帝が与えてくださったものにございまする。それは我々北条に対する侮辱行為と受け取ってもよろしいのか!?」
少し語尾を強めて高圧的に言い返す。幕府としては北条からの援助はどうしても欲しいはずだ。北条が従う姿を見せる事で諸大名にも幕府此処にありと権威を見せつけたいのだろう。だからこそ我々の気分を害する事は難しい事を思い出させてやらねばならない。
「い、いやその様なつもりでは無かったのだ。ただ幕府内部で北条の傍若無人な活動が幕府を蔑ろにしていると言う意見が強い風潮なのだ。」
「いえ、こちらも言い過ぎました。申し訳ございませぬ。」
ここで引いておく事で相手に心理的負担を相手に与えておく。
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