228 / 258
231
しおりを挟む
「しかし、我々は力を直接持ちませぬしその様なことを許すような文化でもございませぬ。誰かしらの力をアテにする事になるのであればより良い選択をするまでにございまする。まずは幕府の手が届かないところに支援者を作り、畿内に向けて影響力を出してもらいましょう。」
「で、あるな。」
前久はそのまま内裏で一晩語り合い、自宅に戻ったのは明け方前であった。
~~~
前久が帝と話している頃、氏政は朝廷を出て風魔の拠点へと着いていた。
「お帰りなさいませ。若。」
女忍であろう従業員が出迎える。
「ああ、ご苦労だな。部屋に案内してくれるか?」
かしこまりました。と先導し始めるのでそれに政豊と義弘が続き、最後尾に義堯が配置する。その間に俺は着いて行き部屋へと通された。
「さて、皆のものもご苦労であったな。警戒は解いていいぞ。楽に座ってくれ。」
義堯が失礼して、と座ったのを皮切りに政豊と義弘も座る。勿論警戒は怠ってはいないのだろうが風魔の拠点である事もあり普段のようにリラックスできている。義堯が宿のものが持ってきた茶を一口飲んでから皆の分を注ぎ回していく。
「どうでしたか。内裏は。」
義堯が囲炉裏の火を調整しながら話の口を切る。
「帝に拝謁する事が出来たよ。そこで北条に関東のことを任せるとのお言葉を頂いた。かなりこちらに期待を寄せてくれているようだが、やはり中央に出張ってきて欲しいのが本心なのだろうな。そのあたりを突かれたよ。」
政豊や義弘はまだ口を出せる立場では無いため黙ってその話を聞く。しかし、彼らも後々には大きな視点で物事を話せるようにする為にこの話をしっかりと聞いていた。また、そのようなことを期待されていることも理解していた。
「それは重畳ですな。畿内は他の土地よりも米が多く取れ、物が集まりかなり豊かであるとはいえ朝廷自体は実を奪われ、武家の頭領は役割を果たしておりませぬからな。仕方ありませぬ。」
義堯が唯一氏政と同じ目線で話ができていた。というよりも、大名として広い範囲で物事を見る経験が生かされていた。関東にいる間や氏政についている間に学んだことや、知った考えを元に自分の考え方をアップデートし続けていたのだ。
「そういうな。足利としては三好とは絶対に相容れぬ故にどうにかしようと躍起になって周りが見えておらぬのよ。」
氏政は関東に居ないからだろうか、それとも気心が知れた面子しか居ないだからだろうか砕けた口調で気を張らずに喋っていた。片膝を立てて片手に茶を飲む姿は関東の居城ですら見せていなかった。
「小太郎、今日は何人だ?」
この遠征にも勿論ついてきていた小太郎に刺客やストーカーが何人かを聞く。
「はっ、様子を伺うものが数名居ました。多分ですが甲賀のものたちであるかと。一応排除致しませんでしたが、これからはどうされますか?」
「襲われない限り基本的には好きに泳がせておけ。相手を刺激しても面白いことにはならんだろう。もし、危害が与えられそうになったなら好きなように排除しろ。」
小太郎は頭を下げる。
「人気者ですな。」
「皮肉だな。義輝様の所に向かうのが億劫になるなあ。お前たち代わりに行くか?」
「若が行くと言ったのですから若が行くべきでしょう。我々はあくまで付き添いに御座いまする。」
「分かってるよ。言ってみただけだ。」
「で、あるな。」
前久はそのまま内裏で一晩語り合い、自宅に戻ったのは明け方前であった。
~~~
前久が帝と話している頃、氏政は朝廷を出て風魔の拠点へと着いていた。
「お帰りなさいませ。若。」
女忍であろう従業員が出迎える。
「ああ、ご苦労だな。部屋に案内してくれるか?」
かしこまりました。と先導し始めるのでそれに政豊と義弘が続き、最後尾に義堯が配置する。その間に俺は着いて行き部屋へと通された。
「さて、皆のものもご苦労であったな。警戒は解いていいぞ。楽に座ってくれ。」
義堯が失礼して、と座ったのを皮切りに政豊と義弘も座る。勿論警戒は怠ってはいないのだろうが風魔の拠点である事もあり普段のようにリラックスできている。義堯が宿のものが持ってきた茶を一口飲んでから皆の分を注ぎ回していく。
「どうでしたか。内裏は。」
義堯が囲炉裏の火を調整しながら話の口を切る。
「帝に拝謁する事が出来たよ。そこで北条に関東のことを任せるとのお言葉を頂いた。かなりこちらに期待を寄せてくれているようだが、やはり中央に出張ってきて欲しいのが本心なのだろうな。そのあたりを突かれたよ。」
政豊や義弘はまだ口を出せる立場では無いため黙ってその話を聞く。しかし、彼らも後々には大きな視点で物事を話せるようにする為にこの話をしっかりと聞いていた。また、そのようなことを期待されていることも理解していた。
「それは重畳ですな。畿内は他の土地よりも米が多く取れ、物が集まりかなり豊かであるとはいえ朝廷自体は実を奪われ、武家の頭領は役割を果たしておりませぬからな。仕方ありませぬ。」
義堯が唯一氏政と同じ目線で話ができていた。というよりも、大名として広い範囲で物事を見る経験が生かされていた。関東にいる間や氏政についている間に学んだことや、知った考えを元に自分の考え方をアップデートし続けていたのだ。
「そういうな。足利としては三好とは絶対に相容れぬ故にどうにかしようと躍起になって周りが見えておらぬのよ。」
氏政は関東に居ないからだろうか、それとも気心が知れた面子しか居ないだからだろうか砕けた口調で気を張らずに喋っていた。片膝を立てて片手に茶を飲む姿は関東の居城ですら見せていなかった。
「小太郎、今日は何人だ?」
この遠征にも勿論ついてきていた小太郎に刺客やストーカーが何人かを聞く。
「はっ、様子を伺うものが数名居ました。多分ですが甲賀のものたちであるかと。一応排除致しませんでしたが、これからはどうされますか?」
「襲われない限り基本的には好きに泳がせておけ。相手を刺激しても面白いことにはならんだろう。もし、危害が与えられそうになったなら好きなように排除しろ。」
小太郎は頭を下げる。
「人気者ですな。」
「皮肉だな。義輝様の所に向かうのが億劫になるなあ。お前たち代わりに行くか?」
「若が行くと言ったのですから若が行くべきでしょう。我々はあくまで付き添いに御座いまする。」
「分かってるよ。言ってみただけだ。」
0
お気に入りに追加
194
あなたにおすすめの小説
夕映え~武田勝頼の妻~
橘 ゆず
歴史・時代
天正十年(1582年)。
甲斐の国、天目山。
織田・徳川連合軍による甲州征伐によって新府を追われた武田勝頼は、起死回生をはかってわずかな家臣とともに岩殿城を目指していた。
そのかたわらには、五年前に相模の北条家から嫁いできた継室、十九歳の佐奈姫の姿があった。
武田勝頼公と、18歳年下の正室、北条夫人の最期の数日を描いたお話です。
コバルトの短編小説大賞「もう一歩」の作品です。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
日本列島、時震により転移す!
黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
冤罪で追放した男の末路
菜花
ファンタジー
ディアークは参っていた。仲間の一人がディアークを嫌ってるのか、回復魔法を絶対にかけないのだ。命にかかわる嫌がらせをする女はいらんと追放したが、その後冤罪だったと判明し……。カクヨムでも同じ話を投稿しています。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。
旧陸軍の天才?に転生したので大東亜戦争に勝ちます
竹本田重朗
ファンタジー
転生石原閣下による大東亜戦争必勝論
東亜連邦を志した同志達よ、ごきげんようである。どうやら、私は旧陸軍の石原莞爾に転生してしまったらしい。これは神の思し召しなのかもしれない。どうであれ、現代日本のような没落を回避するために粉骨砕身で働こうじゃないか。東亜の同志と手を取り合って真なる独立を掴み取るまで…
※超注意書き※
1.政治的な主張をする目的は一切ありません
2.そのため政治的な要素は「濁す」又は「省略」することがあります
3.あくまでもフィクションのファンタジーの非現実です
4.そこら中に無茶苦茶が含まれています
5.現実的に存在する如何なる国家や地域、団体、人物と関係ありません
6.カクヨムとマルチ投稿
以上をご理解の上でお読みください
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
原産地が同じでも結果が違ったお話
よもぎ
ファンタジー
とある国の貴族が通うための学園で、女生徒一人と男子生徒十数人がとある罪により捕縛されることとなった。女生徒は何の罪かも分からず牢で悶々と過ごしていたが、そこにさる貴族家の夫人が訪ねてきて……。
視点が途中で切り替わります。基本的に一人称視点で話が進みます。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
旅行先で目を覚ましたら武田勝頼になっていた私。どうやら自分が当主らしい。そこまでわかって不安に覚える事が1つ。それは今私が居るのは天正何年?
俣彦
ファンタジー
旅行先で目を覚ましたら武田勝頼になった私。
武田家の当主として歴史を覆すべく、父信玄時代の同僚と共に生き残りを図る物語。
甲斐ノ副将、八幡原ニテ散……ラズ
朽縄咲良
歴史・時代
【第8回歴史時代小説大賞奨励賞受賞作品】
戦国の雄武田信玄の次弟にして、“稀代の副将”として、同時代の戦国武将たちはもちろん、後代の歴史家の間でも評価の高い武将、武田典厩信繁。
永禄四年、武田信玄と強敵上杉輝虎とが雌雄を決する“第四次川中島合戦”に於いて討ち死にするはずだった彼は、家臣の必死の奮闘により、その命を拾う。
信繁の生存によって、甲斐武田家と日本が辿るべき歴史の流れは徐々にずれてゆく――。
この作品は、武田信繁というひとりの武将の生存によって、史実とは異なっていく戦国時代を書いた、大河if戦記である。
*ノベルアッププラス・小説家になろうにも、同内容の作品を掲載しております(一部差異あり)。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる