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 「伊豆守は八幡の使いだと伝え聞くがそれは本当なのかの?」

 未だに直視することができず、少し頭を下げながら床を見てお話しすることになった。

 「…いえ、私めは八幡様とお話しすることはございませぬ。しかし、次々と生まれる考えや産物は私個人の力というよりも仏や神が与えたもうたものとして考えておりまする。ですので、八幡様からの贈り物に違いないと話していたのが尾鰭がついて八幡様の使いという話になっておりまする。」

 本当は自称して誤魔化すために使っていたのだが今ではこのような設定となっていた。

 「なるほどのう。伊豆守の考えは中々独創的で我々には思い付かないようなものばかりだ。確かに八幡様が授けてくれたものかもしれないのう。では、伊豆守よ。其方はその力や知識を使って何を望むのだ?」

 これは、少し踏み込んできたのか?というか最近この手の質問が多い気がする。ここで嘘をつくのは悪手なのは当たり前、帝の前で不敬なことはできない。

 「私は、日の本全ての民の安寧と日の本という国を外つ国から守る事にございまする。そのためには北は蝦夷の先にある孤島から南は琉球の先小琉球まで全てを日の本として統治する必要があると考えます。」

 三好との話し合いでも同じことを言っているため一言一句間違えずに伝えた。

 「ほう。三好筑前守に伝えた言葉と同じだな。」

 やはり試されていたのか。三好自体も食えないが朝廷も馬鹿にはできないな。

 「それはつまり、この国の王と、帝となろうということかな?」

 帝の一言にその場が凍りつくような、熱く燃えたぎるような不思議な重圧が蔓延した。

 「いえ、私めはこの国をまとめ上げるのは帝しかいないと考えております。しかし、帝お一人にこの幅広い国を細かいところまで見ていただくことは難しいとも考えておりまする。ですので、臣下たるもの達がその治世を手伝いたいと考えております。」

 「それは将軍家を支えるということか?」

 「違いまする。私が考えているのは国家として、日の本という国、民族を支えるのです。今、我々が考えているよりも世界はずっと広く大きくございまする。例えば、私が日本、お二人が合わせて明ほどの大きさとするとこの部屋の広さ以上の世界が海の向こうには広がっているのです。そして、そこに住む人々は他の国を蛮族とみなし奴隷とするために武力を持って攻めかかっています。その手はもうすぐそこまできているのです、ですからこの戦乱の世を終わらせる必要があります。将軍家にはそれが見えていない、そして彼らはそれを知ったとしても自分達のことしか考えないでしょう。」

 言い切った。伝えたいことは伝えきったつもりだ、ここで不敬だと言われ捕まえられてもしょうがないほどの事を俺は言った。一瞬とも万年とも取れるような時間が場を支配し、帝が口を開くまで待った。

 「ありがたいことだな。其方のような日の本全体を憂いてくれる存在がいる事嬉しく思うぞ。だが、我々には何もしてやることはできない。将軍家をどうする事もだ。伊豆守よ、日の本を統べるなら畿内まで出てくる必要があるが其方はこれると思うか?」

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