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しおりを挟む「まずは、関東を一円支配することになった中心人物である北条氏政が直々に我らと会いたいと言ってきているのです。我々もそれなりの格の者が向かうのがスジとなるでしょうな。」
松永久秀が主君たる長慶の言葉に合わせて答える。
「やはり、三好三人衆から誰かが行くのが良いだろうな。」
十河一存がそれに続く。他のもの達は苦虫を噛み潰したような顔をしながら頷いていた。三好三人衆それぞれが北条の化け物と会うのは嫌だったのだ。それに対して久秀はむしろ会いにいってみたいと思っていた。そこには、新しい統治方法や従来の価値観を崩す新しいものに対する恐怖か好奇心かの違いがあった。
「ふむ、我々はいま山城なども含め多くの京へと繋がる本土地域を支配しているのだ。ワシが堺に向かうのはどうだ。」
「は、はっ!?」
皆に動揺が走りざわめきが広がる。何故か久秀だけは、うんうんと頷きながら口元に笑みを浮かべていた。久秀は長慶の良い理解者でありながら狂信的な信者でもあったので、とりあえず三好長慶全肯定マンとなっている節がよく見られた。
「はははは、そう驚く事ではあるまい。ワシは面白い男と会って話してみたいのだ。お主らは氏政殿には苦手意識を持っておるようだしの。不愉快にさせる可能性もあるじゃろう。しかし、ワシ一人で向かうのは心配なのはわかる。一存と久秀、それに息子である義興もついてこさせるとしようか。いいかのう?」
言葉は柔らかいもののその目には逆らいなどさせぬぞ?という強い眼光を持っていた。こうなったらテコでも意思を変えることがないと分かっている付き合いの長い彼らはさて、どうやって安全を確保するかと別の視点で話をはじめることとなった。
「日本の副王たる長慶様がお望みとなるのであれば我々が叶えないわけには行きますまい。ですが、こちらがそれほどの人員を用意するということは相手側にもそれ相応の人物を同席させることになりまするぞ?」
松永久秀が一応分かっているであろう危険性をこの場で言葉にして伝える。久秀は周りが言いずらい事やめんどくさがることをズバズバと言うため長慶からは重宝されていた。
「それこそ、我々がお守りすれば良いのだ。しかし、義興様がいらっしゃるという点ではどちらを守るのかをしっかりと役割分担しておくべきだろうな。と言っても、相手も子供であるのだ。そこまで警戒するよりは一応予定を立てておくくらいの方が相手に不快感を与えずに住むのではないだろうか?」
十河一存がその場に参加する者として久秀の疑問に提案を重ねていく。議論をしていく中で自衛の力を持つ長慶は久秀が守るとして、まだまだ子供である義興には一存をつかせることとした。
~~~
「ここが堺か…。流石天下の台所、我々の城下町と同じくらいの賑わいを感じるな。」
初めて堺に降り立った氏政は自分の手で育てた関東の各都市を思い出しながら眺めていた。初めて手がけた河東周辺や江戸湾周辺の港町、関東平野の中心となる河越城の賑わいと比べても遜色がないくらいに人々が行き交っており、その顔には未来に対する希望が見てとれた。
「若、一応ここは敵地となります。余りご勝手に行動されるのはお控えくださいませ。」
幸隆が顔を硬らせながら苦言を呈する。政豊と義弘を前方の警戒に置き、義堯を後方に側には幸隆がつく形で警護をしていた。連れてきた兵士たち4000のうち護衛として連れていく100以外は待機を命じ、船に残らせた。
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