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「大塚政成は降伏を申し出ているようですがいかがされますか?」
真壁が義昭に謀る。大塚政成はまさか一応味方ではある自分達が佐竹に攻められるとは夢にも思って居なかったため大した抵抗もできずに降伏の一手を選ぶしか無かった。
「ふむ、貴殿の奮戦を期待するとでも返しておけ。」
佐竹義昭にとって大塚政成が治めるこの土地は岩城と常陸をつなぐ要所であり自らで治めたい場所でもあった。それに面従腹背の家臣などクソの役にも立たない為むしろ、足軽軍の有用性を家臣に示すためにもさっさとかかってきて欲しかった。
「殿!既に別働隊は岩城の殆どを順調に制圧しているようで岩城本城を囲むためにも援軍が欲しいとのことです!」
政成が根を上げてから2日をたたずに岩城のほぼ全土を手に入れられたという一報が入ってきた。
「ちっ、速度が早すぎるな。家臣達には岩城で我らに反抗するものは全て岩城本城へと送るように伝えよ!政成にも伝えるのだぞ!我々との決戦を伝えるのだ!」
佐竹義昭がここまで決戦にこだわるのには理由があった。まず第一に家臣達へ武威を示すため、第二に周りの国にちょっかいを出される前に確実に終わらせる為だった。あそこまでおちょくられて籠城を選ぶような奴は武士ではない。それに、もし籠城を選んだ際にはその時だ。奴らは惨めな思いをしながらただ死を待つことになる。
「は、はっ!反抗されるようでしたら…」
「勿論構わん!切って捨てろ!」
国境付近では佐竹が動いたことに敏感に反応した北条康虎率いる北条軍5000が即座に出張ってきていた。これによって中山道に位置する諸大名は佐竹が思い描いた通りに身動きが取れない状態を維持させられる事になる。
「ふむ、これはしてやられたかも知れぬな。既に伝わっていると思うが氏政様にこの状況を伝えるのだ。そしてこれからの指示を仰ぐのだ。」
康虎は万が一にもあり得ないが兵達に勝手に戦闘を仕掛けたりしないように厳命した上で待機を選んだ。氏康ではなく氏政に報告がいくのは現在新たに領土化した土地を任されているのが氏政だからだ。
「これが佐竹義昭か。内部はボロボロにされ、まともに機能しないと思っていたがそれを逆手に取って経済をこちらに依存することでむしろ力を付けて自分の領土を増やしに掛かる。良いと思ったものは取り入れて工夫する。血が激るではないか。氏政様が入れ込むわけよ。」
康虎は好戦的な顔を隠すことなくワッハッハと大声で笑う。康虎が氏政配下だった頃から付いてきた年配の配下達はまた始まったと無視していた。
「康虎様、新兵達が怖がるのでやめてください…」
配下の一人が諌める。
「すまぬ、すまぬ。しかし、我のサガとしてしょうがないのだ。」
それきり配下もいつものことなので何も言わずに仕事をやり始めた。
時が変わって数日後の岩城の本城では最後の軍議が行われていた。
「我々は不当な侵略者である佐竹から追い詰められている。ここまできたのならばすることは一つ!相手の首を狙っての突撃のみにあると思うがどうだ!」
そうだそうだと城主であり岩城当主である男の声に皆が息を巻く。
「皆のもの!出陣である!!!」
岩城氏の配下1500人が正門を開け正面の佐竹軍へと突っ込んでいく。一気呵成に突っ込んでいくも、既に防衛陣を引いていた佐竹軍の狙い澄ました前列鉄砲隊の一斉砲撃が突き刺さったのだった。
東北の歴史に残る鉄砲が使われた戦がいまここに始まったのである。
真壁が義昭に謀る。大塚政成はまさか一応味方ではある自分達が佐竹に攻められるとは夢にも思って居なかったため大した抵抗もできずに降伏の一手を選ぶしか無かった。
「ふむ、貴殿の奮戦を期待するとでも返しておけ。」
佐竹義昭にとって大塚政成が治めるこの土地は岩城と常陸をつなぐ要所であり自らで治めたい場所でもあった。それに面従腹背の家臣などクソの役にも立たない為むしろ、足軽軍の有用性を家臣に示すためにもさっさとかかってきて欲しかった。
「殿!既に別働隊は岩城の殆どを順調に制圧しているようで岩城本城を囲むためにも援軍が欲しいとのことです!」
政成が根を上げてから2日をたたずに岩城のほぼ全土を手に入れられたという一報が入ってきた。
「ちっ、速度が早すぎるな。家臣達には岩城で我らに反抗するものは全て岩城本城へと送るように伝えよ!政成にも伝えるのだぞ!我々との決戦を伝えるのだ!」
佐竹義昭がここまで決戦にこだわるのには理由があった。まず第一に家臣達へ武威を示すため、第二に周りの国にちょっかいを出される前に確実に終わらせる為だった。あそこまでおちょくられて籠城を選ぶような奴は武士ではない。それに、もし籠城を選んだ際にはその時だ。奴らは惨めな思いをしながらただ死を待つことになる。
「は、はっ!反抗されるようでしたら…」
「勿論構わん!切って捨てろ!」
国境付近では佐竹が動いたことに敏感に反応した北条康虎率いる北条軍5000が即座に出張ってきていた。これによって中山道に位置する諸大名は佐竹が思い描いた通りに身動きが取れない状態を維持させられる事になる。
「ふむ、これはしてやられたかも知れぬな。既に伝わっていると思うが氏政様にこの状況を伝えるのだ。そしてこれからの指示を仰ぐのだ。」
康虎は万が一にもあり得ないが兵達に勝手に戦闘を仕掛けたりしないように厳命した上で待機を選んだ。氏康ではなく氏政に報告がいくのは現在新たに領土化した土地を任されているのが氏政だからだ。
「これが佐竹義昭か。内部はボロボロにされ、まともに機能しないと思っていたがそれを逆手に取って経済をこちらに依存することでむしろ力を付けて自分の領土を増やしに掛かる。良いと思ったものは取り入れて工夫する。血が激るではないか。氏政様が入れ込むわけよ。」
康虎は好戦的な顔を隠すことなくワッハッハと大声で笑う。康虎が氏政配下だった頃から付いてきた年配の配下達はまた始まったと無視していた。
「康虎様、新兵達が怖がるのでやめてください…」
配下の一人が諌める。
「すまぬ、すまぬ。しかし、我のサガとしてしょうがないのだ。」
それきり配下もいつものことなので何も言わずに仕事をやり始めた。
時が変わって数日後の岩城の本城では最後の軍議が行われていた。
「我々は不当な侵略者である佐竹から追い詰められている。ここまできたのならばすることは一つ!相手の首を狙っての突撃のみにあると思うがどうだ!」
そうだそうだと城主であり岩城当主である男の声に皆が息を巻く。
「皆のもの!出陣である!!!」
岩城氏の配下1500人が正門を開け正面の佐竹軍へと突っ込んでいく。一気呵成に突っ込んでいくも、既に防衛陣を引いていた佐竹軍の狙い澄ました前列鉄砲隊の一斉砲撃が突き刺さったのだった。
東北の歴史に残る鉄砲が使われた戦がいまここに始まったのである。
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