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しおりを挟む「いきなりこのような話でびっくりさせてしまいましたかな。とりあえずは現地民との会話の手助けをしていただければ十分にございます。その上で仲良くできればと。」
「ええ、それはそうですな。こちらとしても恥ずかしながら米を運んできてもらえるのはとても助かりまする。お手伝いもしましょう。しかし、それだけで米をもらうのは忍び無いでござる。ですので、俵物やこの地の特産品などを対価に少しでもお渡しできれば幸いにございまする。」
蠣崎も落ち着きを持って対応している。驚いた後に普通のことを言われた事でホッとしたようであった。
「これからは月に一度米と共にこちらに参ります。その都度人員を降ろしていきますので、できますれば土地をお貸し頂かませぬか?館などの必要なものはこちらが用意いたしますので。勿論我々がいなくなった後は自由に使っていただいて構いませぬ。それに、我々が開拓する場所が見つかるまではこちらで建築や伐採などのお手伝いも致します。」
「わかりもうした。我々の兵を最初のうちは置かせていただく事になるだろうがそちらは大丈夫であろうか?流石にすぐに信用するわけにも参らぬのでな。」
「それはもっともな事にございます。お任せいたします。」
とりあえずの目標を達成した義堯は少し肩の力を抜く事ができた。勿論それを悟らせないのは当たり前だが。
「では、急で申し訳ないのですが明日、明後日にはここを出立させて頂きたいと思いまする。また一月後に人と米を持ってこちらにきまするのでよろしくお願い申しまする。」
蠣崎氏は引き止めることはなく、出立するまでの間義堯を客として丁重に扱い、出立する際には蠣崎季広本人が港まで見送りに来た。
そしてそのまま義堯はガレオン船3隻を率いて更に北上したのであった。
「船長、この土地は氏政様に頂いた地図によると最初に抑えたい土地のようだ。調査するためにも1部隊向かわせてくれるか?ガレオン船が入れるかどうかと現地住民が生活している痕跡があるかを調べさせるだけでいい。」
「はっ、わかりました。陸戦隊を出しまする。」
海軍で用意されている歩兵戦力の中で上陸用の部隊を陸戦隊と称していた。彼らは海の船乗りとしても陸の歩兵隊としても一人前の選ばれた者たちであり、一人一人それぞれが槍 刀 盾 鉄砲 大砲を使いこなせるエリートだった。
「装備は鉄砲10 盾5 槍15だ。熊が出るらしいから充分に注意するように伝達を。それと現地民が出てきた場合は下手に刺激するようなことはせずにゆっくりと後退するように伝えてくれ。」
義堯の命令がすぐに伝わって小早が数隻陸に向かって進行する。何かあった時にすぐに撤退の援護に出られるように準備をさせつつ義堯は報告をまった。
氏政の手書きの地図には室蘭と書かれており第一目標と記載されていた。その右上に沿岸沿いに進んだところに第二目標の苫小牧 そこからだいぶ離れたところに第三目標の大樹と豊頃と記されていた。今回の調査目標は第二目標までのため後少しで帰れると言う気持ちとまだ気を緩めるわけにはいかないと言う気持ちがあった。
「さてはて、見ている限りですと室蘭はいい港町になりそうですな。」
船長が船の手すりに背中を預けながら蝦夷地を見据えて話し始める。義堯もそれに倣い、船員たちの邪魔にならないように端に寄っておく。
「ええ、多分氏政様もここを抑えることで蝦夷地の北条水軍用の軍港を用意するのでしょう。そして、第二目標である苫小牧を開拓することで北条で過剰気味になるであろう人員を割り振り広大な農作物を手に入れるのでしょう。」
「やはり、あのお方は北の大地までの全てを見据えておられるのでしょうかな。」
それに対して答えるための言葉を義堯はあいにく持っていなかったが個人的な気持ちとして頷いた。
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