北条氏政転生 関八州どころか東日本は全部俺の物 西は信長に任せて俺は歴史知識を利用して天下統一を手助けします。

ヒバリ

文字の大きさ
上 下
197 / 258

200

しおりを挟む
「しかし、我々には支払うようなものはほとんどないのだが、なんとかその米を頂くことはできませぬか?」

 40代の領主が困り顔で、しかし、上から目線にならないように頼み込んでいた。蠣崎家臣たちはその姿を目を逸らさずにじっと見ていた。彼らは理解していたのだ。ここで米をもらうためには屈辱的であろうとも這いつくばってでも米をもらうしかないのだと。

 「そのようなことは気になされるな。我々の話を聞いてその上で協力できそうならして欲しいだけでございます。まずは米をおろすために港を使用させて頂くことはできませぬか?話はその後でもできまする。」

 「は、はぁ。」

 蠣崎季広は義堯達にすぐさま許可を与え船から荷下ろしを始めさせた。荷卸しに関しても現地民を銭で雇い彼らに米を買えるように取り計らった。また、食事を付けることで参加意欲を刺激していた。これらの一連の流れを見た蠣崎は驚きと羨望が溢れ出ていた。

 上方、とまではいかないが本州屈指の大大名はこのような豊かさを常日頃から当たり前のように享受しているのかという事に激しく羨ましく感じたのだ。荷卸しが順調に行っているのを確認したのちもう一度義堯達の話を聞く事になった。

 「さて、我々が望む事ですが、まず先にお聞きしたいことがございます。蠣崎殿は現地民のアイヌと呼ばれる方々と最近和睦を結びこれから関係改善に務めるとお聞きしておりますがいかに?」

 「ええ、その通りにございます。よくご存知でしたな。」

 「はい、こちらにくるまでに南部や伊達といった方々と取引をしてきましたのでそこで耳にする機会がございました。」

 実際のところは氏政による情報なのだがへんに相手を刺激することもないと黙っておいた。

 「そこで、我々とアイヌの民の橋渡しをしていただきたいのです。我々は取引や交易は蠣崎殿とこれからも行っていきたいと思っております。その上で蝦夷地の未開拓の部分を我々で開拓したいと考えているのですがその際に現地民との意思疎通が問題となります。そもそも、彼らにとって開拓する土地が使っていい土地なのかどうかも分かりませぬのでよければお手伝い願いませんか?」

 蠣崎が抑えているのは蝦夷地、つまり北海道の道南部分のその先ほどである。北条が押さえたいのは札幌や帯広それに稚内や樺太である。
そこを手に入れることができれば蠣崎は安心して北条に臣従できる上に、南部などを攻めることも容易くなる。

 「それは構いませぬが、見ての通りここの土地は不毛の大地です。米などは取れませぬし…」

 蠣崎としては思いつきでこの土地に来て無理難題を自分達に押し付けられては困ると言う気持ちであったが相手に直接伝えるわけにもいかずしどろもどろしていた。

 「勿論、そちらに迷惑はかけませぬし人手を借りたい時は米をしっかりと支払います。それを約束する書類もお持ちしております。ここに我が主人氏政様の血印がございます。お持ちくだされ。」

 「なんと!そこまで用意されておられたのか。」

 「ええ、それに我々はこの寒い大地でも大量の食糧、余るほどの食糧や特産品を整備する準備がございます。もし、成功すれば蠣崎殿にも交易でお渡ししますので是非ともご期待くださいませ。」

 蠣崎季広は頭を回転させていた。義堯は嘘を言っている様子もなく淡々と事実だけを述べている。その食糧を増やす方法とやらを教えてもらうには従属もしくは臣従するしかないだろうが今北の大地に基盤をもたない北条についても現在半強制的に従属させられている安東が黙ってはいないだろう。なれば、ここで北条の基盤を作る手伝いをしながら蠣崎の価値を上げた上で臣従するのが正解か…。

 蠣崎にとって米は取れずに、足元を見られながら搾取され続け現地民との争いも絶えない領地が豊かになるならば独立していなくても…と考えてしまうくらいには追い詰められていた。
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

夕映え~武田勝頼の妻~

橘 ゆず
歴史・時代
天正十年(1582年)。 甲斐の国、天目山。 織田・徳川連合軍による甲州征伐によって新府を追われた武田勝頼は、起死回生をはかってわずかな家臣とともに岩殿城を目指していた。 そのかたわらには、五年前に相模の北条家から嫁いできた継室、十九歳の佐奈姫の姿があった。 武田勝頼公と、18歳年下の正室、北条夫人の最期の数日を描いたお話です。 コバルトの短編小説大賞「もう一歩」の作品です。

日本列島、時震により転移す!

黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。

冤罪で追放した男の末路

菜花
ファンタジー
ディアークは参っていた。仲間の一人がディアークを嫌ってるのか、回復魔法を絶対にかけないのだ。命にかかわる嫌がらせをする女はいらんと追放したが、その後冤罪だったと判明し……。カクヨムでも同じ話を投稿しています。

旧陸軍の天才?に転生したので大東亜戦争に勝ちます

竹本田重朗
ファンタジー
転生石原閣下による大東亜戦争必勝論 東亜連邦を志した同志達よ、ごきげんようである。どうやら、私は旧陸軍の石原莞爾に転生してしまったらしい。これは神の思し召しなのかもしれない。どうであれ、現代日本のような没落を回避するために粉骨砕身で働こうじゃないか。東亜の同志と手を取り合って真なる独立を掴み取るまで… ※超注意書き※ 1.政治的な主張をする目的は一切ありません 2.そのため政治的な要素は「濁す」又は「省略」することがあります 3.あくまでもフィクションのファンタジーの非現実です 4.そこら中に無茶苦茶が含まれています 5.現実的に存在する如何なる国家や地域、団体、人物と関係ありません 6.カクヨムとマルチ投稿 以上をご理解の上でお読みください

原産地が同じでも結果が違ったお話

よもぎ
ファンタジー
とある国の貴族が通うための学園で、女生徒一人と男子生徒十数人がとある罪により捕縛されることとなった。女生徒は何の罪かも分からず牢で悶々と過ごしていたが、そこにさる貴族家の夫人が訪ねてきて……。 視点が途中で切り替わります。基本的に一人称視点で話が進みます。

旅行先で目を覚ましたら武田勝頼になっていた私。どうやら自分が当主らしい。そこまでわかって不安に覚える事が1つ。それは今私が居るのは天正何年?

俣彦
ファンタジー
旅行先で目を覚ましたら武田勝頼になった私。 武田家の当主として歴史を覆すべく、父信玄時代の同僚と共に生き残りを図る物語。

甲斐ノ副将、八幡原ニテ散……ラズ

朽縄咲良
歴史・時代
【第8回歴史時代小説大賞奨励賞受賞作品】  戦国の雄武田信玄の次弟にして、“稀代の副将”として、同時代の戦国武将たちはもちろん、後代の歴史家の間でも評価の高い武将、武田典厩信繁。  永禄四年、武田信玄と強敵上杉輝虎とが雌雄を決する“第四次川中島合戦”に於いて討ち死にするはずだった彼は、家臣の必死の奮闘により、その命を拾う。  信繁の生存によって、甲斐武田家と日本が辿るべき歴史の流れは徐々にずれてゆく――。  この作品は、武田信繁というひとりの武将の生存によって、史実とは異なっていく戦国時代を書いた、大河if戦記である。 *ノベルアッププラス・小説家になろうにも、同内容の作品を掲載しております(一部差異あり)。

滝川家の人びと

卯花月影
歴史・時代
故郷、甲賀で騒動を起こし、国を追われるようにして出奔した 若き日の滝川一益と滝川義太夫、 尾張に流れ着いた二人は織田信長に会い、織田家の一員として 天下布武の一役を担う。二人をとりまく織田家の人々のそれぞれの思惑が からみ、紆余曲折しながらも一益がたどり着く先はどこなのか。

処理中です...