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「はっ、殿は既に統治の経験を積んだ義弘殿に負けないよう政豊殿にも経験を積んでほしいと考えておられると思うのですが、ここはどうでしょうか。両方にそれぞれ下野国の土地を任せるというのは。
父は今現在手が空いていると言ってもいい状態ですので全体統括として父を赴任させその補佐官という立場で政豊殿と義弘殿に統治の経験を積んで頂けばいいかと思いまする。
そして、義弘殿は統治の経験がございまするので康虎殿と協力して軍に従事する事で今度は逆の立場にしてみればいかがでしょう。」
政豊には統治の経験を積ませて義弘には軍での指揮の能力を鍛えるわけか、今までの逆だな。
「それはいい案だな。よく気づいてくれた。その方向で進めようではないか。皆は意見があるか?」
主に政豊 義弘に向けての言葉だったが二人ともやる気に満ちているようで何も言わずとも良さそうだ。
「義堯にはすまないが光秀が三国峠の要塞化をしている間、俺の副官を務めて貰いたい。大丈夫か?」
「はっ!勿論でございまする。むしろ右腕である光秀殿の代わりに選んでいただけるなど光栄にございまする。」
「心無い者達が直接敵対していたお前達を外様だ何だと言うが俺にとっては光秀も康虎も義堯も勿論二人や小姓達も皆が俺の側近だ。それを示すためにも頼むぞ。」
そう言いながら頭を下げていた義堯の肩を軽く叩き顔を上げさせる。
「では、皆で飯でもどうだ?」
丁度昼ご飯の時間だったので久しぶりに重臣達とのひと時を氏政は楽しんでいた。
~~~~
少し時は戻り康虎達が那須までの下野国を手に入れ支配した頃。
「殿、北条は無事に下野国までを併呑したようでございます。使者がこちらに来ており礼を述べていきました。また、後ほど謝礼の品として兵糧や武具を送らせてもらうとこのことでございます。」
北条からの使者がやってきていたのは東北の雄 蘆名家を盛り上げた一代英傑 蘆名氏盛であった。天文の乱においては中通りを手に入れるために晴宗方に付き、晴宗勢力の勝利を決定付けた人物であった。
中通りは奥羽山脈などの山々に囲まれた東北において太平洋側にある広大な平野のことであり、そこを抑えることは関東への道を抑える事にもなるので兵糧の面からも経済の面からも大きな価値を持っていた。
「皆のもの聞いたな?来年からは中通りを抑えるために本格的に田村との戦を始めるぞ。常陸の佐竹が田村を援助している関係で簡単にはいかないと思われたが、今回北条が関東に覇を唱えたことで常陸の影響力は段々と下がっている。今しかないのだ!我々は北条の風下に立とうとも必ず手に入れるのだ!者共気張れよ!」
「「はっ!」」
~~~
上杉実虎は今回の顛末を聞きながら椎名と神保の戦いの趨勢を元にこれからの動き方を考えていた。
「つまりは、北条は関東をほぼ全て手中に治めたことにより動きが停滞していると?」
「はっ、武略面に置いてはその通りかと。内政に今は力を入れて関東全体を富ませる事に重きを置いているようにございます。それと同時に兵力の回復や各土地での部隊編成などをしているようです。」
「ならば、我々は付かず離れずを維持しておけば良い。向こうからは経済的繋がりを深めようと商人を多く派遣することを伝えられている。その最中に三国峠を整備しているらしいがどうなのだ?」
「遠目に確かめようとしても木々に阻まれよくわかりませんでした。近づこうにも敵の素波が思いの外手強く被害が拡大するばかりでしたので…」
悔しそうに軒猿の報告員が俯く。
「それは仕方がないな。遠目からでも分かったことはほぼないのか?」
「はっ、道が整備されているのは確かだと思われます。あちらの領地内に関してのみですが。」
「そうか、まあこちらの道を整備する事は干渉になりかねないから仕方がない面もあるしな。」
父は今現在手が空いていると言ってもいい状態ですので全体統括として父を赴任させその補佐官という立場で政豊殿と義弘殿に統治の経験を積んで頂けばいいかと思いまする。
そして、義弘殿は統治の経験がございまするので康虎殿と協力して軍に従事する事で今度は逆の立場にしてみればいかがでしょう。」
政豊には統治の経験を積ませて義弘には軍での指揮の能力を鍛えるわけか、今までの逆だな。
「それはいい案だな。よく気づいてくれた。その方向で進めようではないか。皆は意見があるか?」
主に政豊 義弘に向けての言葉だったが二人ともやる気に満ちているようで何も言わずとも良さそうだ。
「義堯にはすまないが光秀が三国峠の要塞化をしている間、俺の副官を務めて貰いたい。大丈夫か?」
「はっ!勿論でございまする。むしろ右腕である光秀殿の代わりに選んでいただけるなど光栄にございまする。」
「心無い者達が直接敵対していたお前達を外様だ何だと言うが俺にとっては光秀も康虎も義堯も勿論二人や小姓達も皆が俺の側近だ。それを示すためにも頼むぞ。」
そう言いながら頭を下げていた義堯の肩を軽く叩き顔を上げさせる。
「では、皆で飯でもどうだ?」
丁度昼ご飯の時間だったので久しぶりに重臣達とのひと時を氏政は楽しんでいた。
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少し時は戻り康虎達が那須までの下野国を手に入れ支配した頃。
「殿、北条は無事に下野国までを併呑したようでございます。使者がこちらに来ており礼を述べていきました。また、後ほど謝礼の品として兵糧や武具を送らせてもらうとこのことでございます。」
北条からの使者がやってきていたのは東北の雄 蘆名家を盛り上げた一代英傑 蘆名氏盛であった。天文の乱においては中通りを手に入れるために晴宗方に付き、晴宗勢力の勝利を決定付けた人物であった。
中通りは奥羽山脈などの山々に囲まれた東北において太平洋側にある広大な平野のことであり、そこを抑えることは関東への道を抑える事にもなるので兵糧の面からも経済の面からも大きな価値を持っていた。
「皆のもの聞いたな?来年からは中通りを抑えるために本格的に田村との戦を始めるぞ。常陸の佐竹が田村を援助している関係で簡単にはいかないと思われたが、今回北条が関東に覇を唱えたことで常陸の影響力は段々と下がっている。今しかないのだ!我々は北条の風下に立とうとも必ず手に入れるのだ!者共気張れよ!」
「「はっ!」」
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上杉実虎は今回の顛末を聞きながら椎名と神保の戦いの趨勢を元にこれからの動き方を考えていた。
「つまりは、北条は関東をほぼ全て手中に治めたことにより動きが停滞していると?」
「はっ、武略面に置いてはその通りかと。内政に今は力を入れて関東全体を富ませる事に重きを置いているようにございます。それと同時に兵力の回復や各土地での部隊編成などをしているようです。」
「ならば、我々は付かず離れずを維持しておけば良い。向こうからは経済的繋がりを深めようと商人を多く派遣することを伝えられている。その最中に三国峠を整備しているらしいがどうなのだ?」
「遠目に確かめようとしても木々に阻まれよくわかりませんでした。近づこうにも敵の素波が思いの外手強く被害が拡大するばかりでしたので…」
悔しそうに軒猿の報告員が俯く。
「それは仕方がないな。遠目からでも分かったことはほぼないのか?」
「はっ、道が整備されているのは確かだと思われます。あちらの領地内に関してのみですが。」
「そうか、まあこちらの道を整備する事は干渉になりかねないから仕方がない面もあるしな。」
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