175 / 258
177
しおりを挟む
177
「さて、今日の残りの報告を聞こうか」
各地に飛び散っていく文官に対する激励の後、通常通りに評定を行う。氏政にとってはここからが大事だった。四月末、月末の報告会は重要な報告やまとめの報告があるのでここで全体の進捗を確認して二月先以降の予定を決めるのだ。
「はっ、まずは武蔵についてです。」
報告官が手元の資料を見ながら慣れた様子でスラスラと進行する。氏政が任されている箇所は多い。まずは海運全て、次に房総 武蔵 上野国 下野国だ。
「こちらは相模から順次整備をしており房総に繋がる東側から河越までの東半国がほぼ整備を終えました。これからは自助発展していくのを我々が適宜手助けするだけでしょう。西と河越より北に関しては道の整備と農地改革を完璧に終えることができたと言えます。その道に沿ってまずは宿駅などの宿泊施設周りから発展させていく予定です。」
「よし、武蔵はほぼ完璧だな。気になる点は甲斐へと続く道だがどうなっている?」
氏政は頷きながら続きを促す。
「武田側が八王子城までの道を整備しているようで人が集まり始めています。木材を購入しておりますのでお金が集まり人も集まっている様子です。ですので予想ですが八王子から平井、河越から八王子に向かってどんどん発展していくでしょう。」
「武田は関所を撤廃しているのか?」
「いえ、関所は残っているようです。しかし、税を取るのはやめ、身分の検査だけをしているようです。」
「ほう?武田では我々のように簿記を導入してはいない筈だ。どうやって利益を回収するつもりなのかな?」
これは氏政のふとした疑問だった。誰に対して答えを求めていた訳ではなかった。
「おそらくですが、武田としては食糧や塩を持って帰ることができればいいのではないでしょうか?彼らには甲州金がございますれば、必要なものは金よりも実物となります。実際に報告書を先に読ませていただいた限りではこちらの身分検査を受けたものも塩や保存の効く食料類が8割方でございます。」
「なるほど、そう言われてみればそうだな。税を取るよりも民の生活を安定させる事を目指しているのか。信玄らしからぬといえば信玄らしくはないな。ん?お主、名前はなんという?」
聞きなれない声がしたのでふと目線をやるとそこには次郎法師の後ろに控えた同じ年頃の賢しからな子供がいた。なお、氏政も子供であるのだが。
「はっ、突然の無礼失礼いたしました。この度から光秀様から許可を頂き見学させて頂いております本田正信にございまする。」
次郎法師は慌てふためくこともなくジッとしているが目はうろちょろしており動揺しているのがわかる。この場では小姓はほぼ発言しない。意見を求められたときに次郎法師や秀吉
源太郎が答えるくらいだった。
「ほう、君があの。三河では大変だったようだが今は大分良くなっているようだな、見違えたじゃないか。それに、意見も的確だな。軍学校には通っていたのだろう?もう卒業したのか?」
「はっ、今も通っております。このように仕事に参加させて頂ける時間は学校を休みこちらに参らせて頂いております。それに軍学校の教科書は持ち出しできるので空いた時間などに読み込み既に学び終えたので実技に関してのみ学校に通っている状態です。」
秀吉や次郎法師 源太郎のように実技以外は全て終わっており俺の側近達から許可を受けたものという事だ。
「そうか、ならばいい。これからは次郎法師達と同じように小姓としてお主も動くといい。城内の図書室の利用も許可しておこう。」
これによって正信は城内に自分の個室が与えられ学校にも仕事にも行きやすく、学びたい事をさらに学べる図書室にも入ることができる。
「さて、話の腰を折ってすまなかったな。次はどこの話だ?」
「さて、今日の残りの報告を聞こうか」
各地に飛び散っていく文官に対する激励の後、通常通りに評定を行う。氏政にとってはここからが大事だった。四月末、月末の報告会は重要な報告やまとめの報告があるのでここで全体の進捗を確認して二月先以降の予定を決めるのだ。
「はっ、まずは武蔵についてです。」
報告官が手元の資料を見ながら慣れた様子でスラスラと進行する。氏政が任されている箇所は多い。まずは海運全て、次に房総 武蔵 上野国 下野国だ。
「こちらは相模から順次整備をしており房総に繋がる東側から河越までの東半国がほぼ整備を終えました。これからは自助発展していくのを我々が適宜手助けするだけでしょう。西と河越より北に関しては道の整備と農地改革を完璧に終えることができたと言えます。その道に沿ってまずは宿駅などの宿泊施設周りから発展させていく予定です。」
「よし、武蔵はほぼ完璧だな。気になる点は甲斐へと続く道だがどうなっている?」
氏政は頷きながら続きを促す。
「武田側が八王子城までの道を整備しているようで人が集まり始めています。木材を購入しておりますのでお金が集まり人も集まっている様子です。ですので予想ですが八王子から平井、河越から八王子に向かってどんどん発展していくでしょう。」
「武田は関所を撤廃しているのか?」
「いえ、関所は残っているようです。しかし、税を取るのはやめ、身分の検査だけをしているようです。」
「ほう?武田では我々のように簿記を導入してはいない筈だ。どうやって利益を回収するつもりなのかな?」
これは氏政のふとした疑問だった。誰に対して答えを求めていた訳ではなかった。
「おそらくですが、武田としては食糧や塩を持って帰ることができればいいのではないでしょうか?彼らには甲州金がございますれば、必要なものは金よりも実物となります。実際に報告書を先に読ませていただいた限りではこちらの身分検査を受けたものも塩や保存の効く食料類が8割方でございます。」
「なるほど、そう言われてみればそうだな。税を取るよりも民の生活を安定させる事を目指しているのか。信玄らしからぬといえば信玄らしくはないな。ん?お主、名前はなんという?」
聞きなれない声がしたのでふと目線をやるとそこには次郎法師の後ろに控えた同じ年頃の賢しからな子供がいた。なお、氏政も子供であるのだが。
「はっ、突然の無礼失礼いたしました。この度から光秀様から許可を頂き見学させて頂いております本田正信にございまする。」
次郎法師は慌てふためくこともなくジッとしているが目はうろちょろしており動揺しているのがわかる。この場では小姓はほぼ発言しない。意見を求められたときに次郎法師や秀吉
源太郎が答えるくらいだった。
「ほう、君があの。三河では大変だったようだが今は大分良くなっているようだな、見違えたじゃないか。それに、意見も的確だな。軍学校には通っていたのだろう?もう卒業したのか?」
「はっ、今も通っております。このように仕事に参加させて頂ける時間は学校を休みこちらに参らせて頂いております。それに軍学校の教科書は持ち出しできるので空いた時間などに読み込み既に学び終えたので実技に関してのみ学校に通っている状態です。」
秀吉や次郎法師 源太郎のように実技以外は全て終わっており俺の側近達から許可を受けたものという事だ。
「そうか、ならばいい。これからは次郎法師達と同じように小姓としてお主も動くといい。城内の図書室の利用も許可しておこう。」
これによって正信は城内に自分の個室が与えられ学校にも仕事にも行きやすく、学びたい事をさらに学べる図書室にも入ることができる。
「さて、話の腰を折ってすまなかったな。次はどこの話だ?」
0
お気に入りに追加
194
あなたにおすすめの小説
夕映え~武田勝頼の妻~
橘 ゆず
歴史・時代
天正十年(1582年)。
甲斐の国、天目山。
織田・徳川連合軍による甲州征伐によって新府を追われた武田勝頼は、起死回生をはかってわずかな家臣とともに岩殿城を目指していた。
そのかたわらには、五年前に相模の北条家から嫁いできた継室、十九歳の佐奈姫の姿があった。
武田勝頼公と、18歳年下の正室、北条夫人の最期の数日を描いたお話です。
コバルトの短編小説大賞「もう一歩」の作品です。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
日本列島、時震により転移す!
黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
冤罪で追放した男の末路
菜花
ファンタジー
ディアークは参っていた。仲間の一人がディアークを嫌ってるのか、回復魔法を絶対にかけないのだ。命にかかわる嫌がらせをする女はいらんと追放したが、その後冤罪だったと判明し……。カクヨムでも同じ話を投稿しています。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
我が家に子犬がやって来た!
もも野はち助(旧ハチ助)
ファンタジー
【あらすじ】ラテール伯爵家の令嬢フィリアナは、仕事で帰宅できない父の状況に不満を抱きながら、自身の6歳の誕生日を迎えていた。すると、遅くに帰宅した父が白黒でフワフワな毛をした足の太い子犬を連れ帰る。子犬の飼い主はある高貴な人物らしいが、訳あってラテール家で面倒を見る事になったそうだ。その子犬を自身の誕生日プレゼントだと勘違いしたフィリアナは、兄ロアルドと取り合いながら、可愛がり始める。子犬はすでに名前が決まっており『アルス』といった。
アルスは当初かなり周囲の人間を警戒していたのだが、フィリアナとロアルドが甲斐甲斐しく世話をする事で、すぐに二人と打ち解ける。
だがそんな子犬のアルスには、ある重大な秘密があって……。
この話は、子犬と戯れながら巻き込まれ成長をしていく兄妹の物語。
※全102話で完結済。
★『小説家になろう』でも読めます★
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。
旧陸軍の天才?に転生したので大東亜戦争に勝ちます
竹本田重朗
ファンタジー
転生石原閣下による大東亜戦争必勝論
東亜連邦を志した同志達よ、ごきげんようである。どうやら、私は旧陸軍の石原莞爾に転生してしまったらしい。これは神の思し召しなのかもしれない。どうであれ、現代日本のような没落を回避するために粉骨砕身で働こうじゃないか。東亜の同志と手を取り合って真なる独立を掴み取るまで…
※超注意書き※
1.政治的な主張をする目的は一切ありません
2.そのため政治的な要素は「濁す」又は「省略」することがあります
3.あくまでもフィクションのファンタジーの非現実です
4.そこら中に無茶苦茶が含まれています
5.現実的に存在する如何なる国家や地域、団体、人物と関係ありません
6.カクヨムとマルチ投稿
以上をご理解の上でお読みください
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
原産地が同じでも結果が違ったお話
よもぎ
ファンタジー
とある国の貴族が通うための学園で、女生徒一人と男子生徒十数人がとある罪により捕縛されることとなった。女生徒は何の罪かも分からず牢で悶々と過ごしていたが、そこにさる貴族家の夫人が訪ねてきて……。
視点が途中で切り替わります。基本的に一人称視点で話が進みます。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
旅行先で目を覚ましたら武田勝頼になっていた私。どうやら自分が当主らしい。そこまでわかって不安に覚える事が1つ。それは今私が居るのは天正何年?
俣彦
ファンタジー
旅行先で目を覚ましたら武田勝頼になった私。
武田家の当主として歴史を覆すべく、父信玄時代の同僚と共に生き残りを図る物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる