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氏康
北条現当主 北条氏康は小田原城で息子の暴れっぷりを報告から聞いていた。その側には北条を支える文の北条幻庵 武の北条綱成が控えている。
「我が息子ながら凄まじい活躍だな。河東を制圧したと思えば房総半島を瞬く間に手中に収め、北条の危機である関東大包囲網を打ち破るだけではなく、今度は上野国 下野国を北条の手中に収めたか。」
「北条の未来は明るいですなあ。」
そう言って河東から駿河に向かって伸びた交易路から安く入ってくる駿河茶を飲みまったりしながら玄庵は人ごとのように答える。
「俺たちからすれば若い者達に負けるか!と言いたい所だがあれは若すぎるぞ、氏政様について行っている側近達は大変だろうな。」
綱成は氏政の元で暴れたいと思いながらも今の自分が新しい戦術を完璧に扱い切れるとは思えないので使えるところは使い、今までのやり方と合わせてやりくりするほうがいいと割り切っていた。
「東北の出入り口で大勢力を誇り越後への牽制にもなる蘆名を我ら側に寄せることができたのは大きい。万が一にでも越後から侵攻されるときに蘆名や東北勢が同時に侵攻されていたら我々は忽ち窮地に陥っていただろう。」
「そうですな。関東大包囲の時は現在よりも手を広げる範囲が短いため上手く立ち回れましたが、東北 越後と離れられればその分対応が遅れますし、まだまだ統治が未完なので上手く遅滞防御ができたかも怪しいですな。」
「息子にはまずは三国峠を固めながら上野国の残りの部分の統治を急がせる。下野国は在地勢力を一掃した為土地の把握や引き継ぎ、傀儡化などで手間取ることがわかっているしな。」
「それに、上野国自体は相模 武蔵から下野国に比べ距離が近いですからな。統治や整備も早まる事でしょう。既に氏政様の要請で準備させておいた文官達や警ら隊が河越を出立し上野国各地の検地や測量を始めております。一月もしないうちに道路の整備案や発展計画の草案ができてくるでしょう。」
上野国は少し特殊な事情があった。山内上杉を追い出した後に制圧できた部分は既に道路や検地を終え、戸籍を作成した。それに合わせて再度土地を割り振り北条流の農法を伝えている。それにより生産量の増加、税の正確な申告などが始まっている。しかし、残りの上野国には一切手が入っていない為これから開発が始まるのだ。5.6割ほど整備が終わっている部分と早急に三国峠までを整備したいという思いがあり判断が困難になっていた。
「まあ、そこは息子に任せるさ。あいつならうまくやるだろう、珍しく河東と伊豆の熟練の文官を貸してくれと頭を下げてきたのだ。多少はマシだろう。」
「既に河東 伊豆は氏政様の理想とする体制を整えておりこれからの開発計画もしっかりとしている為他のものでも管理する程ならば誰でもできる状態にされておりますからな。」
「俺には内政の難しいことや、ややこしい事はわからねえが軍に関しても武田や今川が来ても耐え切れるだけの設備と準備はされているぜ。やはり計画と道の整備があるだけで大分変わるな、小田原から各地へ、各地から小田原へ今までよりも簡単に駆けつけられるのは強みだ。常陸から尾張に至っては海路を使えるのだから恐ろしいものだよ。」
綱成が最後を締めて皆がひと段落したと思い茶を飲みながら茶菓子をつまむ。
「それよりもそろそろ奴の当主教育をと思っているのだがどう思う?」
「いらぬでしょう。」
「いらねえな。」
文武の両方が揃って不必要だと即答した。
「既に若様は側近達の心を掴むだけでなく兵や民からも慕われております。求心力に関しては言うまでもありません。また、軍事や内政の才覚については言うまでもなく礼儀作法にも通じております。教えるところがございませぬな。」
北条現当主 北条氏康は小田原城で息子の暴れっぷりを報告から聞いていた。その側には北条を支える文の北条幻庵 武の北条綱成が控えている。
「我が息子ながら凄まじい活躍だな。河東を制圧したと思えば房総半島を瞬く間に手中に収め、北条の危機である関東大包囲網を打ち破るだけではなく、今度は上野国 下野国を北条の手中に収めたか。」
「北条の未来は明るいですなあ。」
そう言って河東から駿河に向かって伸びた交易路から安く入ってくる駿河茶を飲みまったりしながら玄庵は人ごとのように答える。
「俺たちからすれば若い者達に負けるか!と言いたい所だがあれは若すぎるぞ、氏政様について行っている側近達は大変だろうな。」
綱成は氏政の元で暴れたいと思いながらも今の自分が新しい戦術を完璧に扱い切れるとは思えないので使えるところは使い、今までのやり方と合わせてやりくりするほうがいいと割り切っていた。
「東北の出入り口で大勢力を誇り越後への牽制にもなる蘆名を我ら側に寄せることができたのは大きい。万が一にでも越後から侵攻されるときに蘆名や東北勢が同時に侵攻されていたら我々は忽ち窮地に陥っていただろう。」
「そうですな。関東大包囲の時は現在よりも手を広げる範囲が短いため上手く立ち回れましたが、東北 越後と離れられればその分対応が遅れますし、まだまだ統治が未完なので上手く遅滞防御ができたかも怪しいですな。」
「息子にはまずは三国峠を固めながら上野国の残りの部分の統治を急がせる。下野国は在地勢力を一掃した為土地の把握や引き継ぎ、傀儡化などで手間取ることがわかっているしな。」
「それに、上野国自体は相模 武蔵から下野国に比べ距離が近いですからな。統治や整備も早まる事でしょう。既に氏政様の要請で準備させておいた文官達や警ら隊が河越を出立し上野国各地の検地や測量を始めております。一月もしないうちに道路の整備案や発展計画の草案ができてくるでしょう。」
上野国は少し特殊な事情があった。山内上杉を追い出した後に制圧できた部分は既に道路や検地を終え、戸籍を作成した。それに合わせて再度土地を割り振り北条流の農法を伝えている。それにより生産量の増加、税の正確な申告などが始まっている。しかし、残りの上野国には一切手が入っていない為これから開発が始まるのだ。5.6割ほど整備が終わっている部分と早急に三国峠までを整備したいという思いがあり判断が困難になっていた。
「まあ、そこは息子に任せるさ。あいつならうまくやるだろう、珍しく河東と伊豆の熟練の文官を貸してくれと頭を下げてきたのだ。多少はマシだろう。」
「既に河東 伊豆は氏政様の理想とする体制を整えておりこれからの開発計画もしっかりとしている為他のものでも管理する程ならば誰でもできる状態にされておりますからな。」
「俺には内政の難しいことや、ややこしい事はわからねえが軍に関しても武田や今川が来ても耐え切れるだけの設備と準備はされているぜ。やはり計画と道の整備があるだけで大分変わるな、小田原から各地へ、各地から小田原へ今までよりも簡単に駆けつけられるのは強みだ。常陸から尾張に至っては海路を使えるのだから恐ろしいものだよ。」
綱成が最後を締めて皆がひと段落したと思い茶を飲みながら茶菓子をつまむ。
「それよりもそろそろ奴の当主教育をと思っているのだがどう思う?」
「いらぬでしょう。」
「いらねえな。」
文武の両方が揃って不必要だと即答した。
「既に若様は側近達の心を掴むだけでなく兵や民からも慕われております。求心力に関しては言うまでもありません。また、軍事や内政の才覚については言うまでもなく礼儀作法にも通じております。教えるところがございませぬな。」
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