156 / 258
158
しおりを挟む光秀と幸隆がそれぞれ預けられた兵力を持って城を落としに向かう準備をしている間に源太郎は氏政に呼び出されていた。
「源太郎、お主はこれからどうしたい?父について行っても良いし俺の右腕である光秀の元に向かっても良いぞ?俺の隊は箕輪城をぐるりと囲い2人の隊がくるまで待っているだけだしな。」
源太郎は折角出陣することができたのだから武功を上げたいはずだ。そう思ってもおかしくない。血気盛んといえば聞こえが良いが自分の立ち位置や現状を理解できていないだけだ。さて、どう答えるかな。
「いえ、私は殿とご一緒させていただきたく。私は出陣させていただけたというだけで十分にございまするし、何より殿の側周りに御座いますれば何があっても殿から離れるわけには行きませぬ。どうかお側にいることを許していただきたく。」
そう言って源太郎は頭を深く下げてきた。
「よい、こちらこそ試すようなことをして悪かったな。俺たちが相対する長野業正はこの国において屈指の名将であると言っても過言ではない男だ。その男を抑えるのだから大任となるぞ。指揮をするのは勘助だがその指揮をそばで見られる位置にお主はいるのだ少しでも学び取り何か策があれば言葉にするのだ。」
「ははっ!」
この様子を少し離れた所で見ていた幸隆はふと顔を逸らし自分の持ち場に戻ろうとしていたがその顔には珍しく笑顔があったと兵たちの間では噂になった。
少し時が経ち箕輪城を囲み込み始めた頃、同じ頃に光秀と幸隆もそれぞれ国峰城と沼田城を攻め始めていた。光秀が担当する国峰城では普段の攻城戦とは違う形の戦が行われていた。
「光秀様、おっしゃられた通りに4人一組として担当制で昼夜問わずに敵に散発的な攻撃を仕掛けております。」
「うむ、奴らが眠る隙も与えられないようにするのだ。弾を節約するために空砲を打ち出しても良い。それにそろそろ肌寒くなる季節だ。次の砲撃で全力砲撃を数回行い建物を粉々にしてきちんとした寝台を用意させるな。」
「ははっ!」
光秀は氏政が偶にポロリと零してしまう現代知識に関する内容から少しずつ深掘りして聞き取り実践で試していた。そしてそこで得た知識を軍学校などに寄付したりしているのだ。もちろんその知識は公開して良いものに限った話だが。検閲を受けて公開できないものは風魔によって秘蔵されている。
「今回の予想では段々とすとれすと言うものが溜まっていき、奴らの集中力や気力というものが削がれて十全の力が発揮できなくどんな城も骨抜きになってしまうそうだが…。」
そこからさらに数日が経った頃、昼は果敢に攻めかかられ、夜には深夜の寝静まり始める頃に火をつけられたり攻撃されたりと気もそぞろになるような頻度で攻撃された国峰城では兵たちは限界が訪れ始めていた。
「憲政様、兵たちは昼夜を問わない北条の攻撃により立っているのもやっとのものばかりです。寝てしまう兵も現れ我々が守るこの城も既に大方が破壊されてしまっています。いつ落とされてもしょうがない状況で御座いますれば何卒降伏の方を考えていただけませぬか?」
今まで山内上杉を支えてきた家臣が憲政に伏して願いを伝えていた。
「それは、ならぬ!我々は言われもない事で責められておるのだぞ!それに北条の奴らに降るなど!関東管領である上杉のする事ではないわ!それよりも実虎に送った援軍要請はどうなっておるのだ!」
「殿!我々が似たような方法を使わずに勢力を拡大したとでも言うのでしょうか!?そのようなことはございませぬ!立場が変わったのでございます!関東管領として実があるのはあちらにございまする!微力ながらも助命を嘆願申し上げまするので何卒!何と…」
その続きの言葉を家臣は続けることができなかった。家臣の言葉を聞き入れられなくなった憲政が忠臣を殺してしまったのだ。この事はすぐに城中に広まり大惨事になっていったのである。
10
お気に入りに追加
194
あなたにおすすめの小説
夕映え~武田勝頼の妻~
橘 ゆず
歴史・時代
天正十年(1582年)。
甲斐の国、天目山。
織田・徳川連合軍による甲州征伐によって新府を追われた武田勝頼は、起死回生をはかってわずかな家臣とともに岩殿城を目指していた。
そのかたわらには、五年前に相模の北条家から嫁いできた継室、十九歳の佐奈姫の姿があった。
武田勝頼公と、18歳年下の正室、北条夫人の最期の数日を描いたお話です。
コバルトの短編小説大賞「もう一歩」の作品です。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
日本列島、時震により転移す!
黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
冤罪で追放した男の末路
菜花
ファンタジー
ディアークは参っていた。仲間の一人がディアークを嫌ってるのか、回復魔法を絶対にかけないのだ。命にかかわる嫌がらせをする女はいらんと追放したが、その後冤罪だったと判明し……。カクヨムでも同じ話を投稿しています。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。
旧陸軍の天才?に転生したので大東亜戦争に勝ちます
竹本田重朗
ファンタジー
転生石原閣下による大東亜戦争必勝論
東亜連邦を志した同志達よ、ごきげんようである。どうやら、私は旧陸軍の石原莞爾に転生してしまったらしい。これは神の思し召しなのかもしれない。どうであれ、現代日本のような没落を回避するために粉骨砕身で働こうじゃないか。東亜の同志と手を取り合って真なる独立を掴み取るまで…
※超注意書き※
1.政治的な主張をする目的は一切ありません
2.そのため政治的な要素は「濁す」又は「省略」することがあります
3.あくまでもフィクションのファンタジーの非現実です
4.そこら中に無茶苦茶が含まれています
5.現実的に存在する如何なる国家や地域、団体、人物と関係ありません
6.カクヨムとマルチ投稿
以上をご理解の上でお読みください
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
原産地が同じでも結果が違ったお話
よもぎ
ファンタジー
とある国の貴族が通うための学園で、女生徒一人と男子生徒十数人がとある罪により捕縛されることとなった。女生徒は何の罪かも分からず牢で悶々と過ごしていたが、そこにさる貴族家の夫人が訪ねてきて……。
視点が途中で切り替わります。基本的に一人称視点で話が進みます。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
旅行先で目を覚ましたら武田勝頼になっていた私。どうやら自分が当主らしい。そこまでわかって不安に覚える事が1つ。それは今私が居るのは天正何年?
俣彦
ファンタジー
旅行先で目を覚ましたら武田勝頼になった私。
武田家の当主として歴史を覆すべく、父信玄時代の同僚と共に生き残りを図る物語。
甲斐ノ副将、八幡原ニテ散……ラズ
朽縄咲良
歴史・時代
【第8回歴史時代小説大賞奨励賞受賞作品】
戦国の雄武田信玄の次弟にして、“稀代の副将”として、同時代の戦国武将たちはもちろん、後代の歴史家の間でも評価の高い武将、武田典厩信繁。
永禄四年、武田信玄と強敵上杉輝虎とが雌雄を決する“第四次川中島合戦”に於いて討ち死にするはずだった彼は、家臣の必死の奮闘により、その命を拾う。
信繁の生存によって、甲斐武田家と日本が辿るべき歴史の流れは徐々にずれてゆく――。
この作品は、武田信繁というひとりの武将の生存によって、史実とは異なっていく戦国時代を書いた、大河if戦記である。
*ノベルアッププラス・小説家になろうにも、同内容の作品を掲載しております(一部差異あり)。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる