147 / 258
149
しおりを挟む
あの後何かを言おうとした定実様は体調が優れないようで医師に任せて我々は退出することになった。そのまま別室に移動し景虎派のもの達で話し合いをしながら定実様の容体が安定するのを待つ。このまま再度話すと言う形になることはないだろうが心配なのもある。
「景虎様はこれからどのようにされるおつもりで…?定実様が申していた通り武田の勢力拡大は目を見張るものがあります。」
景虎は直江実綱からの質問に対してどう答えるのだろうと周りの配下達も耳を澄ませる。
「…武田は西進を続けたがこれ以上は進出しないだろう。彼らは山国、どうしても海に面する土地が欲しいのだ。今は今川、北条の支援で成り立っているが信玄という男はそれをしっかりと理解した上だ。つまり、奴が次に目指すのは日本海に面した越後 越中のいずれかとなる。」
周りもなるほど、そうだな。と頷きながら話を聞いている。
「奴は必要となれば父ですら国から追い出すのだ。今川、北条にも牙を剥く可能性は大いにある。北条はちょっとやそっとでは動かないだろうが今川は違う。彼らは北条に負け、織田で挽回したようだがまだまだ安定しているとは言い難いのだ。何か一つ機会があればきっと信玄はその隙を見逃さない。そのために南信をとり飛騨まで手を入れたのだ。」
「ですが、彼らは婚姻同盟を結んでおるのですぞ?それを破れば武田はこれから誰にも信用されなくなりまする。そこまでやるでしょうか?」
山吉行盛が不思議そうに尋ねる。
「やる。奴はそう言う男なのだ。しかと覚えておけ、奴は非道 極悪 残忍 冷酷な虎なのだ。少しでも甘い判断をすればこちらが食われるぞ。」
「ははっ!」
「…だが、奴は良くやっているのも事実だ。あのような海もなく山ばかりで米も取れない。貧しい国である甲斐1国の国人集代表から信濃の半国を手に入れた大名になったのだ。それだけでも奴を侮れない理由になるだろう。」
「では、やはり対武田に向けて動く事になりますかな?」
「ああ、だが我らから手をかけることはない。北信の国人達から救援を求められた時と越中が武田に襲われそうになった時に動けば良いのだ。それよりも越後の内部を纏めること、更には定実様が申していた山内上杉がこちらに支援を求めてきた時にどうするのかを対策しておくべきだな。」
「対武田の姿勢を取りつつも我らからは動かない…と?」
「そうだ、我々の私利私欲のために兵を動かし国を取ったとすれば周りから警戒されその行先は対我らへの包囲網となって帰ってくる。それは北条がつい最近に証明した事だ。我々は北条のように新兵器も無い、大義名分の元動く事で周りからの批判を抑え自然と我々に付き従うようにすればよいのだ。我々はまだまだ先が長い、焦らずにゆるりと参ろうではないか。」
直江が景虎の意を汲み取り会議の流れを進める。
「なるほど、良くわかりました。では、まずは北から順に話し合いましょう。本庄氏は今のところ付き従っており、隣接する大宝寺氏はこちらを頼ってきております。ですので大きな混乱が起きるとは考え辛いです。そのままでよろしいかと。
次は蘆名です。会津は現在蘆名の元に纏まっており我々の本城 春日山城から見てもかなりの距離があり攻めるにしろ、守るにしろ手がかかります。しかし、彼らは東山道に目を向けておりこちらに対しては特に行動を起こすつもりはないようです。我々も彼らに手を出すには武田 北条と対処しなければならない障壁があるためこのまま付かず離れずの関係でよろしいのではないかと考えます。
さて、北信についてですがこちらは面白い報告がございます。巧みにわからないようになっていましたが北条が武具と食糧の支援を行っているようです。北条は武田と友好的に見せながらも彼らに対して全くと言っていいほど協力はしておりませぬ。」
「景虎様はこれからどのようにされるおつもりで…?定実様が申していた通り武田の勢力拡大は目を見張るものがあります。」
景虎は直江実綱からの質問に対してどう答えるのだろうと周りの配下達も耳を澄ませる。
「…武田は西進を続けたがこれ以上は進出しないだろう。彼らは山国、どうしても海に面する土地が欲しいのだ。今は今川、北条の支援で成り立っているが信玄という男はそれをしっかりと理解した上だ。つまり、奴が次に目指すのは日本海に面した越後 越中のいずれかとなる。」
周りもなるほど、そうだな。と頷きながら話を聞いている。
「奴は必要となれば父ですら国から追い出すのだ。今川、北条にも牙を剥く可能性は大いにある。北条はちょっとやそっとでは動かないだろうが今川は違う。彼らは北条に負け、織田で挽回したようだがまだまだ安定しているとは言い難いのだ。何か一つ機会があればきっと信玄はその隙を見逃さない。そのために南信をとり飛騨まで手を入れたのだ。」
「ですが、彼らは婚姻同盟を結んでおるのですぞ?それを破れば武田はこれから誰にも信用されなくなりまする。そこまでやるでしょうか?」
山吉行盛が不思議そうに尋ねる。
「やる。奴はそう言う男なのだ。しかと覚えておけ、奴は非道 極悪 残忍 冷酷な虎なのだ。少しでも甘い判断をすればこちらが食われるぞ。」
「ははっ!」
「…だが、奴は良くやっているのも事実だ。あのような海もなく山ばかりで米も取れない。貧しい国である甲斐1国の国人集代表から信濃の半国を手に入れた大名になったのだ。それだけでも奴を侮れない理由になるだろう。」
「では、やはり対武田に向けて動く事になりますかな?」
「ああ、だが我らから手をかけることはない。北信の国人達から救援を求められた時と越中が武田に襲われそうになった時に動けば良いのだ。それよりも越後の内部を纏めること、更には定実様が申していた山内上杉がこちらに支援を求めてきた時にどうするのかを対策しておくべきだな。」
「対武田の姿勢を取りつつも我らからは動かない…と?」
「そうだ、我々の私利私欲のために兵を動かし国を取ったとすれば周りから警戒されその行先は対我らへの包囲網となって帰ってくる。それは北条がつい最近に証明した事だ。我々は北条のように新兵器も無い、大義名分の元動く事で周りからの批判を抑え自然と我々に付き従うようにすればよいのだ。我々はまだまだ先が長い、焦らずにゆるりと参ろうではないか。」
直江が景虎の意を汲み取り会議の流れを進める。
「なるほど、良くわかりました。では、まずは北から順に話し合いましょう。本庄氏は今のところ付き従っており、隣接する大宝寺氏はこちらを頼ってきております。ですので大きな混乱が起きるとは考え辛いです。そのままでよろしいかと。
次は蘆名です。会津は現在蘆名の元に纏まっており我々の本城 春日山城から見てもかなりの距離があり攻めるにしろ、守るにしろ手がかかります。しかし、彼らは東山道に目を向けておりこちらに対しては特に行動を起こすつもりはないようです。我々も彼らに手を出すには武田 北条と対処しなければならない障壁があるためこのまま付かず離れずの関係でよろしいのではないかと考えます。
さて、北信についてですがこちらは面白い報告がございます。巧みにわからないようになっていましたが北条が武具と食糧の支援を行っているようです。北条は武田と友好的に見せながらも彼らに対して全くと言っていいほど協力はしておりませぬ。」
10
お気に入りに追加
194
あなたにおすすめの小説
夕映え~武田勝頼の妻~
橘 ゆず
歴史・時代
天正十年(1582年)。
甲斐の国、天目山。
織田・徳川連合軍による甲州征伐によって新府を追われた武田勝頼は、起死回生をはかってわずかな家臣とともに岩殿城を目指していた。
そのかたわらには、五年前に相模の北条家から嫁いできた継室、十九歳の佐奈姫の姿があった。
武田勝頼公と、18歳年下の正室、北条夫人の最期の数日を描いたお話です。
コバルトの短編小説大賞「もう一歩」の作品です。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
日本列島、時震により転移す!
黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
冤罪で追放した男の末路
菜花
ファンタジー
ディアークは参っていた。仲間の一人がディアークを嫌ってるのか、回復魔法を絶対にかけないのだ。命にかかわる嫌がらせをする女はいらんと追放したが、その後冤罪だったと判明し……。カクヨムでも同じ話を投稿しています。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。
旧陸軍の天才?に転生したので大東亜戦争に勝ちます
竹本田重朗
ファンタジー
転生石原閣下による大東亜戦争必勝論
東亜連邦を志した同志達よ、ごきげんようである。どうやら、私は旧陸軍の石原莞爾に転生してしまったらしい。これは神の思し召しなのかもしれない。どうであれ、現代日本のような没落を回避するために粉骨砕身で働こうじゃないか。東亜の同志と手を取り合って真なる独立を掴み取るまで…
※超注意書き※
1.政治的な主張をする目的は一切ありません
2.そのため政治的な要素は「濁す」又は「省略」することがあります
3.あくまでもフィクションのファンタジーの非現実です
4.そこら中に無茶苦茶が含まれています
5.現実的に存在する如何なる国家や地域、団体、人物と関係ありません
6.カクヨムとマルチ投稿
以上をご理解の上でお読みください
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
原産地が同じでも結果が違ったお話
よもぎ
ファンタジー
とある国の貴族が通うための学園で、女生徒一人と男子生徒十数人がとある罪により捕縛されることとなった。女生徒は何の罪かも分からず牢で悶々と過ごしていたが、そこにさる貴族家の夫人が訪ねてきて……。
視点が途中で切り替わります。基本的に一人称視点で話が進みます。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
旅行先で目を覚ましたら武田勝頼になっていた私。どうやら自分が当主らしい。そこまでわかって不安に覚える事が1つ。それは今私が居るのは天正何年?
俣彦
ファンタジー
旅行先で目を覚ましたら武田勝頼になった私。
武田家の当主として歴史を覆すべく、父信玄時代の同僚と共に生き残りを図る物語。
甲斐ノ副将、八幡原ニテ散……ラズ
朽縄咲良
歴史・時代
【第8回歴史時代小説大賞奨励賞受賞作品】
戦国の雄武田信玄の次弟にして、“稀代の副将”として、同時代の戦国武将たちはもちろん、後代の歴史家の間でも評価の高い武将、武田典厩信繁。
永禄四年、武田信玄と強敵上杉輝虎とが雌雄を決する“第四次川中島合戦”に於いて討ち死にするはずだった彼は、家臣の必死の奮闘により、その命を拾う。
信繁の生存によって、甲斐武田家と日本が辿るべき歴史の流れは徐々にずれてゆく――。
この作品は、武田信繁というひとりの武将の生存によって、史実とは異なっていく戦国時代を書いた、大河if戦記である。
*ノベルアッププラス・小説家になろうにも、同内容の作品を掲載しております(一部差異あり)。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる