141 / 258
143
しおりを挟む1549年8月初旬、武田信玄が総勢3500名の軍を率いて高遠氏 藤沢氏 木曽氏への侵攻を開始した。諏訪を手に入れ大井氏 笠原氏を倒し伊那郡を落としたが高遠氏は史実と違い手に入れられなかった為再侵攻を始めた。
「目指すは高遠城だ!我の差配に従えば必ず勝利を手に入れられる!」
信玄は、というよりも大将は他人からどう見られるか、どのように見えれば人が付いてくるかを考えながら発言行動している。特に信玄は他者から、しかも国人集達はそれぞれの土地の地侍を纏める小大名だ。それらからついていきたいと思われる大名だ。そこには、カリスマ性がある。
そして、農民達も武略という形で理解をしていた。信玄についていけば必ず勝てる必勝の軍だと彼ら自身が理解している。だから自信が付いて心技体の心が強く、場数を重ねて技が上がり体もできてくる。
「高遠城には兵も碌な将も居ないのだ。我らが負ける道理などない。」
「ですな。我々は先陣に行って参ります。」
信繁が穴山や小山田ら親族衆を連れて先頭を進む。高遠氏は南信を抑える国人集代表であり中信との境目に領地を持つ国人だ。武田が諏訪氏を滅ぼす際にも協力しており両者は友好的な関係を結んでいたかのように思えた。しかし、諏訪氏の総領を目指す高遠は信玄と対立し南信をまとめ宮川で戦をした。そこで勝利を得た武田が結果的に諏訪を制圧したのだ。
7月末には今川が犬居城に兵を集めて飯田城への侵攻の動きを見せた為南信の国人集達は下手に身動きが取れなくなっていた。その動きを待つこともなく信玄は立ち止まることなく深夜も行軍を続けた。その動きはまさに風のように素早かった。雨がしとしとと降り注いでおり高遠軍が油断している頃、武田信玄率いる軍は山の上に布陣、そのまま落ちる勢いで高遠城に攻めかかった。
「かかれ!かかれ!裏切り者を打ち破るのだ!」
「う、うわぁ!敵だ!敵だ!!!」
「ひいいいい!逃げろ!こんなの勝ち目がねえ!」
完全に敵の不意を突いた武田軍に恐れ慄き高遠軍の兵士たちは守備を放棄しさっさと逃げ出してしまっていた。それは城主である高遠頼継も同じことであった。史実でも逃げ出していたが今回はより酷かった。小笠原が既に逃げ出した現状復帰も不可能で悪天候、逃げる場所もなく落武者狩にあってその命を経っていたのだ。
「御屋形様、高遠城内の処理を終えました。次の指令を…!」
「よし、ここに抑えの兵を残して信繁に別働隊を任せて南の最後の城・飯田城を取りに行かせる!残りのものは我に続いて木曽福島城へと向かうぞ!」
そのまま抑えの兵を300残すと残りの3000の兵のうち1000を飯田城に向かわせた。信玄は南信を取るだけではなく木曽を抑えることで西にもしっかりとした基盤を作ろうとしていた。
「御屋形様、少し報告を…」
普通の側周りに紛れている三つ者の配下が連絡しにきたのを確認した信玄はその側周りに身の世話をさせるついでに報告を聞く。
「木曽氏は南信を攻めた我々を警戒しているようで鳥居峠にて防備を固めているようです。このまま全軍で向かっても狭い道で撃退される恐れがあるかと…」
史実でも武田は一度木曽に敗北している。今回、三つ者が知らせられたのは北条の力が大きい。彼らが既に南信の情報を流していてくれたのだ。今川 織田の流れで商人と情報が動く、そしてその流れから持ってきたのだ。
「わかった。他にいける道はあるか?」
「奈良井川支流の陣ヶ沢、もう一つを萩曽(現在の木祖村小木曽)からでどうでしょうか?その上で峠にも囮を置けば敵の目を欺けるかと…」
「よくやった。下がれ。」
側周りが世話を終えたように淡々と連絡員は下がっていった。
「飯富虎昌を誰か呼べ。」
10
お気に入りに追加
194
あなたにおすすめの小説
夕映え~武田勝頼の妻~
橘 ゆず
歴史・時代
天正十年(1582年)。
甲斐の国、天目山。
織田・徳川連合軍による甲州征伐によって新府を追われた武田勝頼は、起死回生をはかってわずかな家臣とともに岩殿城を目指していた。
そのかたわらには、五年前に相模の北条家から嫁いできた継室、十九歳の佐奈姫の姿があった。
武田勝頼公と、18歳年下の正室、北条夫人の最期の数日を描いたお話です。
コバルトの短編小説大賞「もう一歩」の作品です。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
日本列島、時震により転移す!
黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
冤罪で追放した男の末路
菜花
ファンタジー
ディアークは参っていた。仲間の一人がディアークを嫌ってるのか、回復魔法を絶対にかけないのだ。命にかかわる嫌がらせをする女はいらんと追放したが、その後冤罪だったと判明し……。カクヨムでも同じ話を投稿しています。
旧陸軍の天才?に転生したので大東亜戦争に勝ちます
竹本田重朗
ファンタジー
転生石原閣下による大東亜戦争必勝論
東亜連邦を志した同志達よ、ごきげんようである。どうやら、私は旧陸軍の石原莞爾に転生してしまったらしい。これは神の思し召しなのかもしれない。どうであれ、現代日本のような没落を回避するために粉骨砕身で働こうじゃないか。東亜の同志と手を取り合って真なる独立を掴み取るまで…
※超注意書き※
1.政治的な主張をする目的は一切ありません
2.そのため政治的な要素は「濁す」又は「省略」することがあります
3.あくまでもフィクションのファンタジーの非現実です
4.そこら中に無茶苦茶が含まれています
5.現実的に存在する如何なる国家や地域、団体、人物と関係ありません
6.カクヨムとマルチ投稿
以上をご理解の上でお読みください
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
原産地が同じでも結果が違ったお話
よもぎ
ファンタジー
とある国の貴族が通うための学園で、女生徒一人と男子生徒十数人がとある罪により捕縛されることとなった。女生徒は何の罪かも分からず牢で悶々と過ごしていたが、そこにさる貴族家の夫人が訪ねてきて……。
視点が途中で切り替わります。基本的に一人称視点で話が進みます。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
旅行先で目を覚ましたら武田勝頼になっていた私。どうやら自分が当主らしい。そこまでわかって不安に覚える事が1つ。それは今私が居るのは天正何年?
俣彦
ファンタジー
旅行先で目を覚ましたら武田勝頼になった私。
武田家の当主として歴史を覆すべく、父信玄時代の同僚と共に生き残りを図る物語。
甲斐ノ副将、八幡原ニテ散……ラズ
朽縄咲良
歴史・時代
【第8回歴史時代小説大賞奨励賞受賞作品】
戦国の雄武田信玄の次弟にして、“稀代の副将”として、同時代の戦国武将たちはもちろん、後代の歴史家の間でも評価の高い武将、武田典厩信繁。
永禄四年、武田信玄と強敵上杉輝虎とが雌雄を決する“第四次川中島合戦”に於いて討ち死にするはずだった彼は、家臣の必死の奮闘により、その命を拾う。
信繁の生存によって、甲斐武田家と日本が辿るべき歴史の流れは徐々にずれてゆく――。
この作品は、武田信繁というひとりの武将の生存によって、史実とは異なっていく戦国時代を書いた、大河if戦記である。
*ノベルアッププラス・小説家になろうにも、同内容の作品を掲載しております(一部差異あり)。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる