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「では、各々方先程説明した通りによろしくお願いします。予備部隊が後方に控えて順番に厳しいところに投入致しますがこちらもギリギリでございます。できるだけ皆様方の奮闘に期待致しまする。」
光秀がそう言うと皆が気合の乗った声で返事をする。まだまだ若輩の光秀の言うことを聞くのは俺の軍事というだけでなくこれまで安房や河東など実績を残してきたのがわかるからだ。それに、意識改革も進んでおり年功序列などの旧態依然とした悪き習慣も矯正するように徹底させた。
「叔父上、少しよろしいか?」
皆が配置に向かおうと準備する為に移動し始めた中こっそりと叔父上に近づき声をかける。
「どうなされましたか?」
「工藤政豊の事なのですが、彼里見義弘を今回抜擢した関係で少し焦ったりするかも知れませぬ。彼らは今回の戦で互いに意識して能力を高め合っている好敵手のような関係を築いているのです。これからの軍を率いてくであろう人物だと私は考えています、なのでこんな所で失敗して失いたくはありませぬ。何卒よろしくお願い致しまする。」
「なるほど、そう言うことでござればお任せあれ。功に焦り失敗を犯すのは誰しもが通る道とはいえここで失敗すれば万が一がございまするしな。気にかけておくとします。では!」
叔父上に軽く頭を下げてから俺は光秀のところに戻る。光秀は小隊長クラスの者や、部隊長を補佐する軍師的な役割を担っている人物達を集めて先ほどの作戦の詳細を確認させている。
みんなの顔には不安はあまりないようで、どちらかというとどのように功を上げるかやどうすれば勝てるかと前向きに考えているようだ。
実際父上の方は同じような数の相手を封じ込めている。それを見て自分たちもできると自信を持っているのだろう。正直ネガティブな考えが無い方がいいからありがたい。それに、今の佐竹はまだ義重が出てきている時代では無い筈だしそこまで警戒しなくてもいい、数は多いがそれだけだ。足利晴氏も予定通り裏切っているとはいえその動きは史実とは違う、警戒はしておこうか…と考えていた。
しかし某戦略ゲームでもそこまで強い武将がいなかった足利晴氏率いる古河公方勢力だ。安房の時のような激戦にはならないだろうとどこかで高を括っていた氏政であった。
「氏政様、ぼーっとしてどうなされたのですか?氏政様には城内でお父上の軍への伝令や橋の破壊など砲兵を取りまとめて頂きます。氏政様なれば大丈夫だとは思いまするがしっかりしてくださいませ。」
説明を終えた光秀がこちらにいつの間にか寄ってきて眉を顰めながら苦言を呈してくる。
「ああ、すまないな。光秀も最近は遠慮がなくなってきたようで何よりだ。俺の身を考えながらも俺を駒として使う事に反対していた人物とは思えないな。」
苦笑しながら光秀に話しかけてチラリと見ると
「先ほどまでの作戦で氏政様はじっとしていろとお願いしてもきかないと言うことをよーく学びましたのでそれならば働いて頂こうと言うだけにございます。それとも堅苦しい方が宜しいですかな?」
「いやいや、やめてくれ!俺がそのような形が嫌いなのは分かっているだろ?必要とあればするが、このような我々見知ったものしかおらぬ時は砕けた感じで良い。」
俺と光秀はくだらない話をしながら河越城から見える敵の軍を見ていた。
~~~
北条綱成
軍議が終わり氏政様からの頼み事を聞いた後すぐに城内で待機していた騎馬隊が休む厩舎近くの長屋に向かう。奇襲部隊は大回りする分先に出て向かう必要があるのだ。
「幸隆殿、我は普段指揮もするが今回は貴方に任せたいと思っている。頼んでも良いか?」
「勿論にございまする。それが私の役目にありますれば…今回の敵は想定したとはいえ何か怪しい所がございまする。曲がりなりにも関東武家の棟梁を名乗る古河公方がこのような搦手のような動きや策を練った動きをするのは不自然にございます、一応頭の隅にでも入れておいてくだされ。」
光秀がそう言うと皆が気合の乗った声で返事をする。まだまだ若輩の光秀の言うことを聞くのは俺の軍事というだけでなくこれまで安房や河東など実績を残してきたのがわかるからだ。それに、意識改革も進んでおり年功序列などの旧態依然とした悪き習慣も矯正するように徹底させた。
「叔父上、少しよろしいか?」
皆が配置に向かおうと準備する為に移動し始めた中こっそりと叔父上に近づき声をかける。
「どうなされましたか?」
「工藤政豊の事なのですが、彼里見義弘を今回抜擢した関係で少し焦ったりするかも知れませぬ。彼らは今回の戦で互いに意識して能力を高め合っている好敵手のような関係を築いているのです。これからの軍を率いてくであろう人物だと私は考えています、なのでこんな所で失敗して失いたくはありませぬ。何卒よろしくお願い致しまする。」
「なるほど、そう言うことでござればお任せあれ。功に焦り失敗を犯すのは誰しもが通る道とはいえここで失敗すれば万が一がございまするしな。気にかけておくとします。では!」
叔父上に軽く頭を下げてから俺は光秀のところに戻る。光秀は小隊長クラスの者や、部隊長を補佐する軍師的な役割を担っている人物達を集めて先ほどの作戦の詳細を確認させている。
みんなの顔には不安はあまりないようで、どちらかというとどのように功を上げるかやどうすれば勝てるかと前向きに考えているようだ。
実際父上の方は同じような数の相手を封じ込めている。それを見て自分たちもできると自信を持っているのだろう。正直ネガティブな考えが無い方がいいからありがたい。それに、今の佐竹はまだ義重が出てきている時代では無い筈だしそこまで警戒しなくてもいい、数は多いがそれだけだ。足利晴氏も予定通り裏切っているとはいえその動きは史実とは違う、警戒はしておこうか…と考えていた。
しかし某戦略ゲームでもそこまで強い武将がいなかった足利晴氏率いる古河公方勢力だ。安房の時のような激戦にはならないだろうとどこかで高を括っていた氏政であった。
「氏政様、ぼーっとしてどうなされたのですか?氏政様には城内でお父上の軍への伝令や橋の破壊など砲兵を取りまとめて頂きます。氏政様なれば大丈夫だとは思いまするがしっかりしてくださいませ。」
説明を終えた光秀がこちらにいつの間にか寄ってきて眉を顰めながら苦言を呈してくる。
「ああ、すまないな。光秀も最近は遠慮がなくなってきたようで何よりだ。俺の身を考えながらも俺を駒として使う事に反対していた人物とは思えないな。」
苦笑しながら光秀に話しかけてチラリと見ると
「先ほどまでの作戦で氏政様はじっとしていろとお願いしてもきかないと言うことをよーく学びましたのでそれならば働いて頂こうと言うだけにございます。それとも堅苦しい方が宜しいですかな?」
「いやいや、やめてくれ!俺がそのような形が嫌いなのは分かっているだろ?必要とあればするが、このような我々見知ったものしかおらぬ時は砕けた感じで良い。」
俺と光秀はくだらない話をしながら河越城から見える敵の軍を見ていた。
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北条綱成
軍議が終わり氏政様からの頼み事を聞いた後すぐに城内で待機していた騎馬隊が休む厩舎近くの長屋に向かう。奇襲部隊は大回りする分先に出て向かう必要があるのだ。
「幸隆殿、我は普段指揮もするが今回は貴方に任せたいと思っている。頼んでも良いか?」
「勿論にございまする。それが私の役目にありますれば…今回の敵は想定したとはいえ何か怪しい所がございまする。曲がりなりにも関東武家の棟梁を名乗る古河公方がこのような搦手のような動きや策を練った動きをするのは不自然にございます、一応頭の隅にでも入れておいてくだされ。」
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