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氏康軍が敵を追い詰めている頃、主戦場に向けて急行している氏政軍はまさに壮観であった。走る速さではなく、駆け足程度だが武器を荷台にのせ馬に引かせ、歩兵は重量を減らし速度を上げていた。鉄砲隊や遠距離部隊は武器が少しでも壊れると問題なので持ちながら駆け足をしているが、彼らの防具は敵の弓矢を防ぐためだけのため竹でできた特別製で元々の重量が少ないためこちらも早かった。
騎馬隊も突出する事なく周りの警戒を請け負い、歩きの兵達が歩くことだけに集中できるよう工夫していた。氏政軍は様々な新しい技術や工夫を試している軍の為、戦国時代の普通の兵からしたら異様な雰囲気に見えているだろう。まあ、織田信長あたりが見ていたら爆笑しているかもしれないが。
「物見に出ていた忍び達からの報告を纏めて参りました。現在綱成殿の軍が西側の上杉朝定軍を破り城に戻って北と東の敵に備えているとのこと。氏康様の軍は南側の上杉憲政軍を追い詰めるも敵が固まり頑強に抵抗中。東側の上杉憲政本隊が援軍に向かおうとしており、川を守っている鉄砲隊が突破されるのも時間の問題かと。」
風魔小太郎が忍び衆の連絡をまとめながら馬の上で並走して報告をしてくる。
「ご苦労。狙うは東側の上杉憲政本隊だ!!!そこを突き崩せば北の下野連合は引いていく筈だ!踏ん張れよ!」
兵達に声をかけながら氏政は別のことに意識を割いていた。
「古河公方は何も行動を起こしていないのか?」
「はっ、それが何も…」
小太郎が申し訳なさそうに眉を下げていると(長年の付き合いの氏政だけ分かる。)別の忍びが報告しに小太郎に書状をクナイに結びつけ投擲する。それを空中で掴み取ると書状の中身を確認してこちらに回してくる。
「殿、古河公方が軍を集め河越城に向かっているようです。労役に集まったり納税しに来ていたと見せかけて兵を集めていたようで、我々も欺かれました。申し訳ございませぬ…」
「ほう、古河公方は自尊心が高くこのような搦手は行わない気がしていたが違うようだな。気にするな、俺も騙されていたのだ責任は俺にもある。それよりも古河公方の軍勢の規模と古河公方以外の軍の動きも探れ、河越城にはもうすぐ着くから必要最低限以外の人員を全て回すのだ。」
「はっ!」
やるじゃないか、古河公方 足利晴氏。もう、歴史は狂いに狂っている。それが俺のせいだと言うことも分かっているが止まるわけにはいかないし、止まる気もない。それをこの戦で証明するのだ。
「皆のもの!もうすぐ戦場に着く!一旦足を止めて息を整えよ!歩兵は武器を持て!鉄砲隊、遠距離部隊は武器の点検!可能であれば身を潜めながら戦場を見ておけ!」
兵達は少し坂上になった場所で足を止め腰を就き水筒から水を飲み息を整える。彼らは疲れた後に戦うよりもしっかりと休んでから戦う方が力を発揮できることを体で訓練で理解していた。また、休むときは自由にして良いと教えられて来ていた為遠慮なく腰を下ろしていた。勿論、戦っている最中にそんな休みかたはしないのだが交戦状態に入っていないからできることだ。
「光秀!虎高!幸隆!義堯!頼むぞ!」
「「「「はっ!」」」」
光秀達は氏政の前で最終確認を行う。
「皆さま、最後にもう一度確認いたします。虎高殿が先陣をきり上杉憲政軍本隊へと突撃を敢行、幸隆殿が後に続き退路の確保、兼傷口を広げていただきます。そして、申し訳ないですが義堯殿には一番苦労する立場を担って貰います。氏康様の軍と虎高殿の軍が上杉憲政軍を破るまで古河公方軍が来た時耐えてもらわねばなりませぬ。」
皆の目が義堯に向けられる。
「はっ!精一杯耐えさせていただきます。その上で提案がございます。」
「なんだ?」
「我々が幸隆殿の役割を担い、幸隆殿には虎高殿と同じく突撃していただければ古河公方軍が来る前に打ち破り体勢を整える余裕も出来るかと。」
「ほう、それは俺にも突撃に参加しろと申しておるのか?」
俺はニヤけながら義堯に尋ねる。
「いえ、殿には光秀殿と共に氏康様本隊の方へ向かっていただければと。指揮は幸隆殿が十二分に執っていただけると思いまする。」
騎馬隊も突出する事なく周りの警戒を請け負い、歩きの兵達が歩くことだけに集中できるよう工夫していた。氏政軍は様々な新しい技術や工夫を試している軍の為、戦国時代の普通の兵からしたら異様な雰囲気に見えているだろう。まあ、織田信長あたりが見ていたら爆笑しているかもしれないが。
「物見に出ていた忍び達からの報告を纏めて参りました。現在綱成殿の軍が西側の上杉朝定軍を破り城に戻って北と東の敵に備えているとのこと。氏康様の軍は南側の上杉憲政軍を追い詰めるも敵が固まり頑強に抵抗中。東側の上杉憲政本隊が援軍に向かおうとしており、川を守っている鉄砲隊が突破されるのも時間の問題かと。」
風魔小太郎が忍び衆の連絡をまとめながら馬の上で並走して報告をしてくる。
「ご苦労。狙うは東側の上杉憲政本隊だ!!!そこを突き崩せば北の下野連合は引いていく筈だ!踏ん張れよ!」
兵達に声をかけながら氏政は別のことに意識を割いていた。
「古河公方は何も行動を起こしていないのか?」
「はっ、それが何も…」
小太郎が申し訳なさそうに眉を下げていると(長年の付き合いの氏政だけ分かる。)別の忍びが報告しに小太郎に書状をクナイに結びつけ投擲する。それを空中で掴み取ると書状の中身を確認してこちらに回してくる。
「殿、古河公方が軍を集め河越城に向かっているようです。労役に集まったり納税しに来ていたと見せかけて兵を集めていたようで、我々も欺かれました。申し訳ございませぬ…」
「ほう、古河公方は自尊心が高くこのような搦手は行わない気がしていたが違うようだな。気にするな、俺も騙されていたのだ責任は俺にもある。それよりも古河公方の軍勢の規模と古河公方以外の軍の動きも探れ、河越城にはもうすぐ着くから必要最低限以外の人員を全て回すのだ。」
「はっ!」
やるじゃないか、古河公方 足利晴氏。もう、歴史は狂いに狂っている。それが俺のせいだと言うことも分かっているが止まるわけにはいかないし、止まる気もない。それをこの戦で証明するのだ。
「皆のもの!もうすぐ戦場に着く!一旦足を止めて息を整えよ!歩兵は武器を持て!鉄砲隊、遠距離部隊は武器の点検!可能であれば身を潜めながら戦場を見ておけ!」
兵達は少し坂上になった場所で足を止め腰を就き水筒から水を飲み息を整える。彼らは疲れた後に戦うよりもしっかりと休んでから戦う方が力を発揮できることを体で訓練で理解していた。また、休むときは自由にして良いと教えられて来ていた為遠慮なく腰を下ろしていた。勿論、戦っている最中にそんな休みかたはしないのだが交戦状態に入っていないからできることだ。
「光秀!虎高!幸隆!義堯!頼むぞ!」
「「「「はっ!」」」」
光秀達は氏政の前で最終確認を行う。
「皆さま、最後にもう一度確認いたします。虎高殿が先陣をきり上杉憲政軍本隊へと突撃を敢行、幸隆殿が後に続き退路の確保、兼傷口を広げていただきます。そして、申し訳ないですが義堯殿には一番苦労する立場を担って貰います。氏康様の軍と虎高殿の軍が上杉憲政軍を破るまで古河公方軍が来た時耐えてもらわねばなりませぬ。」
皆の目が義堯に向けられる。
「はっ!精一杯耐えさせていただきます。その上で提案がございます。」
「なんだ?」
「我々が幸隆殿の役割を担い、幸隆殿には虎高殿と同じく突撃していただければ古河公方軍が来る前に打ち破り体勢を整える余裕も出来るかと。」
「ほう、それは俺にも突撃に参加しろと申しておるのか?」
俺はニヤけながら義堯に尋ねる。
「いえ、殿には光秀殿と共に氏康様本隊の方へ向かっていただければと。指揮は幸隆殿が十二分に執っていただけると思いまする。」
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