上 下
80 / 258

82

しおりを挟む
 今俺は船の上にいる。俺が武田今川と交渉している間も続々と兵士たちは伊豆の沿岸にそうようにぐるりと船で移動して江戸城に輸送されて行っている。援軍に送ることができた兵は合計1万。負傷兵や抑えの兵は置いて、残りの兵を総動員した形になる。

 船の上であったが風魔の忍びが小舟を使ってこちらに合流してくれたようで向かっている最中に情報を得ることができた。

 まず、両上杉軍が併せて30000の兵を、下野連合が1万5000ほど用意して包囲網を河越に敷いているらしい。俺の予想ではここに古河公方も参戦する者だと思っていたがうんともすんとも音沙汰がないようだ。勘助と話し合ってバレないように偽装した兵や武器防具を古河公方の土地に送り込み敵が出陣した所で背後で蜂起、挟撃の形に持ち込むつもりだったがこれでは相手を警戒して抑えの兵を置かなければならなくなる。

 ただでさえ予想が外れて史実通りの兵が集まっているのだ。大前提として戦いは数だ。どれだけ武装や兵個人の能力が高くなろうと圧倒的な差はどうしようも無い。なので、出来るだけ兵力の分散は避けたいのだが…どうする。

 「光秀、義堯 我らは1万を江戸城に上陸させる。これはどの敵も知らない軍だ。房総衆を纏めている勘助が3000を江戸に援軍で送ってくれたらしい。もし、古河公方達が蜂起してこちらに向かってきた場合、勘助は2000で古河公方の領地を攻め落とし退路を断つ事が可能だと思うか?」

 「はっ、勘助殿ならば確実に城を落とす事は可能でしょう。しかし、退路を断ち挟撃が可能かと言われれば難しいものがございますでしょう。城を攻め落とし、持参している砲兵をうまく使って落とされ返さないように防衛する、もしくは落とした状態で撤退するのが現実的かと。
 仮に古河公方勢だけならば我らが河越の窮地を救った後に直ぐに追い討ちをかける事で古河公方を攻め切ることも可能でしょうが、関東諸将が一致団結し大勢力となった場合、血みどろの戦いが待っていると思いまする。」

 「そうだな、関東諸将の動きによるところが大きい。義堯はどう思う?」

 「はっ、私も同じ考えです。その上で提案させていただくならば、安全性をとり確実な利益を望むのならば河越で敵を打ち破った後、武蔵 上野をしっかりと押さえる事で元々予定していた三国峠の守りを強化する事で再度体勢を整え、下野や古河公方勢力に侵攻するべきかと。
 それ以上に利益を求めるならば危険もありまする。我らが河越を破った後、元々の予定の通りに古河公方を追撃下野と常陸一部に手を入れると、佐竹が出てきていた場合戦線が伸びる危険と関東諸連合の兵力が多かった場合に我らだけで対処できない可能性の二つの危険がございまする。」

 どちらにしろ、俺が手を加えてしまったせいで大きな勝ち戦にしようとしていた河越夜戦が史実通りの危険な戦いに変わってしまっている訳だ。今回の戦で一番大事なことは河越夜戦を余力を残した状態で勝利し、古河公方の排除をする事が一番大事だ。現古河公方 足利晴氏さえいなくなれば 当家で保護をしている足利義氏を神輿に古河公方勢力を接収する事が可能になる。

 「我らの目標は、第一に河越救出、第二に古河公方勢力の排除だ。奴らが出てこなかった場合元々予定していた作戦は中止だ。勘助にはすぐに兵器と兵を利根川を渡らせて保護しろ。そして、奴らが侵攻せずに帰っていくのを監視させろ!そして、その間に我らは上野を確実に全て手に入れるぞ!その後に宇都宮 那須 古河公方勢力との和睦だ。

 予定通り奴らが出てきた場合は上野は父に任せて我らの軍と綱成叔父上の軍を合わせて古河公方の土地とその配下の土地を接収する。その上で出てきていた場合佐竹や那須 宇都宮と和睦交渉を行うのだ。

 どちらにせよ古河公方の命は確実に奪っておきたい。我らが関八州の主人となるためには邪魔になる。」

 二人は無言で頷き頭を下げて同意を示してくれた。

 「今話していたことを紙にしたためるわけには行かぬのでな、風魔の者数人に伝え別々の道で勘助に伝えてきてくれ、父や叔父上にも戦後交渉の結果と共に伝えるよう頼む。」

 無言でさっと風魔の配下が散っていった。
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

天冥聖戦 伝説への軌跡

くらまゆうき
ファンタジー
あらすじ 狐の神族にはどんな過去があって人に封印されたのか? もはや世界の誰からも忘れられた男となった狐神はどうにかして人の体から出ようとするが、思いもよらぬ展開へと発展していく… 消えている過去の記憶を追い求めながら彼が感じた事は戦争のない世界を作りたい。 シーズンを重ねるごとに解き明かされていく狐の神族の謎は衝撃の連発! 書籍化、アニメ化したいと大絶賛の物語をお見逃しなく

【ヤベェ】異世界転移したった【助けてwww】

一樹
ファンタジー
色々あって、転移後追放されてしまった主人公。 追放後に、持ち物がチート化していることに気づく。 無事、元の世界と連絡をとる事に成功する。 そして、始まったのは、どこかで見た事のある、【あるある展開】のオンパレード! 異世界転移珍道中、掲示板実況始まり始まり。 【諸注意】 以前投稿した同名の短編の連載版になります。 連載は不定期。むしろ途中で止まる可能性、エタる可能性がとても高いです。 なんでも大丈夫な方向けです。 小説の形をしていないので、読む人を選びます。 以上の内容を踏まえた上で閲覧をお願いします。 disりに見えてしまう表現があります。 以上の点から気分を害されても責任は負えません。 閲覧は自己責任でお願いします。 小説家になろう、pixivでも投稿しています。

安政ノ音 ANSEI NOTE

夢酔藤山
歴史・時代
温故知新。 安政の世を知り令和の現世をさとる物差しとして、一筆啓上。 令和とよく似た時代、幕末、安政。 疫病に不景気に世情不穏に政治のトップが暗殺。 そして震災の陰におびえる人々。 この時代から何を学べるか。狂乱する群衆の一人になって、楽しんで欲しい……! オムニバスで描く安政年間の狂喜乱舞な人間模様は、いまの、明日の令和の姿かもしれない。

甲斐ノ副将、八幡原ニテ散……ラズ

朽縄咲良
歴史・時代
【第8回歴史時代小説大賞奨励賞受賞作品】  戦国の雄武田信玄の次弟にして、“稀代の副将”として、同時代の戦国武将たちはもちろん、後代の歴史家の間でも評価の高い武将、武田典厩信繁。  永禄四年、武田信玄と強敵上杉輝虎とが雌雄を決する“第四次川中島合戦”に於いて討ち死にするはずだった彼は、家臣の必死の奮闘により、その命を拾う。  信繁の生存によって、甲斐武田家と日本が辿るべき歴史の流れは徐々にずれてゆく――。  この作品は、武田信繁というひとりの武将の生存によって、史実とは異なっていく戦国時代を書いた、大河if戦記である。 *ノベルアッププラス・小説家になろうにも、同内容の作品を掲載しております(一部差異あり)。

お兄様、冷血貴公子じゃなかったんですか?~7歳から始める第二の聖女人生~

みつまめ つぼみ
ファンタジー
 17歳で偽りの聖女として処刑された記憶を持つ7歳の女の子が、今度こそ世界を救うためにエルメーテ公爵家に引き取られて人生をやり直します。  記憶では冷血貴公子と呼ばれていた公爵令息は、義妹である主人公一筋。  そんな義兄に戸惑いながらも甘える日々。 「お兄様? シスコンもほどほどにしてくださいね?」  恋愛ポンコツと冷血貴公子の、コミカルでシリアスな救世物語開幕!

俺だけ毎日チュートリアルで報酬無双だけどもしかしたら世界の敵になったかもしれない

亮亮
ファンタジー
朝起きたら『チュートリアル 起床』という謎の画面が出現。怪訝に思いながらもチュートリアルをクリアしていき、報酬を貰う。そして近い未来、世界が一新する出来事が起こり、主人公・花房 萌(はなぶさ はじめ)の人生の歯車が狂いだす。 不意に開かれるダンジョンへのゲート。その奥には常人では決して踏破できない存在が待ち受け、萌の体は凶刃によって裂かれた。 そしてチュートリアルが発動し、復活。殺される。復活。殺される。気が狂いそうになる輪廻の果て、萌は光明を見出し、存在を継承する事になった。 帰還した後、急速に馴染んでいく新世界。新しい学園への編入。試験。新たなダンジョン。 そして邂逅する謎の組織。 萌の物語が始まる。

アレク・プランタン

かえるまる
ファンタジー
長く辛い闘病が終わった と‥‥転生となった 剣と魔法が織りなす世界へ チートも特典も何もないまま ただ前世の記憶だけを頼りに 俺は精一杯やってみる 毎日更新中!

石田三成だけど現代社会ふざけんな

実は犬です。
ファンタジー
 関ヶ原の戦いで徳川家康に敗れた石田三成。  京都六条河原にて処刑された次の瞬間、彼は21世紀の日本に住む若い夫婦の子供になっていた。  しかし、三成の第二の人生は波乱の幕開けである。 「是非に及ばず」  転生して現代に生まれ出でた瞬間に、混乱極まって信長公の決め台詞をついつい口走ってしまった三成。  結果、母親や助産師など分娩室にいた全員が悲鳴を上げ、挙句は世間すらも騒がせることとなった。  そして、そんな事件から早5年――  石田三成こと『石家光成』も無事に幼稚園児となっていた。  右を見ても左を見ても、摩訶不思議なからくり道具がひしめく現代。  それらに心ときめかせながら、また、現世における新しい家族や幼稚園で知り合った幼い友人らと親交を深めながら、光成は現代社会を必死に生きる。  しかし、戦国の世とは違う現代の風習や人間関係の軋轢も甘くはない。  現代社会における光成の平和な生活は次第に脅かされ、幼稚園の仲間も苦しい状況へと追い込まれる。  大切な仲間を助けるため、そして大切な仲間との平和な生活を守るため。  光成は戦国の世の忌むべき力と共に、闘うことを決意した。 歴史に詳しくない方も是非!(作者もあまり詳しくありません(笑))

処理中です...