61 / 258
63
しおりを挟む
信繁と親綱、泰能は軍をしっかりと分けた。まず信繁率いる歩兵900を正面に左右の後方に親綱と泰能をおく。そして別働隊兼遊撃隊として武田騎馬隊100である。
親綱1500と泰能1500の歩兵を親綱が率いる。最後方の1000が弓兵隊となっている。そしてそれを泰能が率いる。意味はないだろうが一応最初の一撃は火矢を用いる予定だ。
号令もなく信繁がさっと動き始める。流石晴信の薫陶を受けているだけあって晴信に勝るとも劣らない動きを見せていく。軍の流れるように移動する様はまさに風の如く、夜襲であるため気付かれないように静かに動いている様は林のようだ。我らも負けじと動き始めるがやはりというか静かに動くためには訓練が必要でどうしても恐る恐るといった感じで速度が遅い。
それでも負けじとついていく。信繁軍が山から平野にかけて作られた城壁に近づくように堀を越えようとする。元々昼間のうちに用意していた木の板で堀に簡易的な橋をかけ続々と渡っていく。篝火もほとんど堀側ではたいておらず一番外の堀を渡り終えようとする頃には半数が二つ目の堀を渡っていた。ここまで用意した北条軍が何もしないとも思えないので朝比奈隊には堀の外で草木に身を隠し周りを警戒するように伝令を送る。
こちらでも警戒して各橋に10数人を見張りに置いて進む。最後の堀に到達しようとしたところで一斉に悲鳴が上がった。
「投石だ!!!!上を警戒しろ!盾持ちの下に隠れるのだ!!!それ以外のものは左右にばらけよ!!!」
信繁が前線で攻撃に気付き指示を出しながら被害を抑える。
「武田軍の意地を見せよ!橋を渡して城壁に取り付けば我らの勝ちぞ!」
歴戦の将たる信繁の言葉を信じ武田兵が整然とした様子で城壁に突貫する。その最中に信繁は今川へと伝令を行う。
「伝令!武田軍に投石の攻撃が行われたようです!その中で信繁殿は被害を抑えて城壁に向かっております!今川軍には退路の確保と援護をお願いするとの事です!」
「わかっておる!我らは二の堀、三の堀を死守する!信繁殿には思う存分暴れて貰いたいと伝えてくれ!」
後方の今川軍には敵の攻撃は全く来ていない為落ち着いて対処をしていた。それに打って変わり前面に出ている武田軍は投石と弓矢による集中攻撃でジリジリとしかし確実に兵を減らされている。
「取りついたぞ!梯子をかけよ!!城内に入れば我らは敵の卑怯な攻撃に晒されぬぞ!負けぬ!進めい!」
武田軍の足軽大将が部下の足軽数名を連れて梯子をかけて城壁から顔を出しよじ登ろうとする。
「なんだこれは!?壁の上に気をつけよ!棘があるぞ!!!」
それはとりつかれる前提で用意をしておいた青銅でできた鉄線である。現代にもあるそれは侵入者の行手を拒み尚且つ、敵に攻撃も与える。まだまだ風化が進んでいないとはいえ破傷風にもなる可能性があるこの柵は北条軍内では絶対に触らないように厳命されている。
あちらこちらで武田軍の兵士たちが無理矢理にでもよじ登ろうとして鉄線の柵に引っかかって怪我をおっていく。この時代にニッパーやハサミなどを戦場に持ち歩くものはおらずなんとか、足軽が持ってきていたナタなどで叩き斬ろうとするもそれを咎める弓矢が続々と降ってくる。
武田軍は犠牲を出しながらも一部の道を切り開きドンドンと侵入していこうとするも行く手が限定されたこの状況ではいい鴨となって狙われていくばかりである。これを指を咥えて見ているはずもなく信繁は今川へと弓隊の援護を要請しながら自分の部隊の弓隊にも侵入する足軽を援護するように命じている。
そのおかげもあってか何人かの盾持ちが梯子を上りきり城内へと侵入を始める。今川軍の援護もあり火が全体に燃え上がることはなかったが周囲を照らす程度には燃えている。
「進めい!10人一塊となって建物の中を制圧していくのだ!残りのものは盾持ちを前にして道を進むぞ!」
信繁が梯子を渡り切ると細やかに指示を出し盾持ちを前にじっくりと守りを固めながら城内を制圧するために前へ進もうとする。既に北条軍は奥に下がって奇妙な筒のようなもの、報告にあった天雷の武器を用意している。
「銅板盾持ちを前に出せい!我らが接近すれば負けることはないぞ!」
今回のために用意しておいた木の盾の裏に銅板を貼り付けた特製の盾を持たせた大男達に前を進ませる。他の兵は間から顔を出さないように各盾持ちの後ろを進むように命じている。
天雷の武器の作り方などはわからなかったが、その性能については貫通力が高い弓矢のようなものであることが分かっている。それに合わせて鉱物が取れる甲斐の利点を生かし何枚も重ねて厚みを増した盾を一応用意しておいたのだ。
欠点としてとても重く力自慢の男がゆっくりゆっくりと進まねばならないがその性能は折り紙付きで相手が近づくごとに天雷の武器を使ってくるがバチィン!と音を上げてたてが跳ね返していく。
「よし!これならいけるぞ!今川隊にも最低限必要な人数を残し城内に侵入するように伝えよ!」
伝令を後方に送りながら本丸に近づいていく。本丸といっても城というよりは大きな石の塊のような物だ。漆喰のような壁で二階建てにした簡素な建物だが覗き窓が所々についており頑強そうだ。それもあと4分の1というところで盾持ちが何人か急に消えてしまった。
バキバキと音がなったと思ったら落とし穴があったようで何人かの盾持ちが穴に落ちて木の棘に体を刺され死に絶えてしまった。
親綱1500と泰能1500の歩兵を親綱が率いる。最後方の1000が弓兵隊となっている。そしてそれを泰能が率いる。意味はないだろうが一応最初の一撃は火矢を用いる予定だ。
号令もなく信繁がさっと動き始める。流石晴信の薫陶を受けているだけあって晴信に勝るとも劣らない動きを見せていく。軍の流れるように移動する様はまさに風の如く、夜襲であるため気付かれないように静かに動いている様は林のようだ。我らも負けじと動き始めるがやはりというか静かに動くためには訓練が必要でどうしても恐る恐るといった感じで速度が遅い。
それでも負けじとついていく。信繁軍が山から平野にかけて作られた城壁に近づくように堀を越えようとする。元々昼間のうちに用意していた木の板で堀に簡易的な橋をかけ続々と渡っていく。篝火もほとんど堀側ではたいておらず一番外の堀を渡り終えようとする頃には半数が二つ目の堀を渡っていた。ここまで用意した北条軍が何もしないとも思えないので朝比奈隊には堀の外で草木に身を隠し周りを警戒するように伝令を送る。
こちらでも警戒して各橋に10数人を見張りに置いて進む。最後の堀に到達しようとしたところで一斉に悲鳴が上がった。
「投石だ!!!!上を警戒しろ!盾持ちの下に隠れるのだ!!!それ以外のものは左右にばらけよ!!!」
信繁が前線で攻撃に気付き指示を出しながら被害を抑える。
「武田軍の意地を見せよ!橋を渡して城壁に取り付けば我らの勝ちぞ!」
歴戦の将たる信繁の言葉を信じ武田兵が整然とした様子で城壁に突貫する。その最中に信繁は今川へと伝令を行う。
「伝令!武田軍に投石の攻撃が行われたようです!その中で信繁殿は被害を抑えて城壁に向かっております!今川軍には退路の確保と援護をお願いするとの事です!」
「わかっておる!我らは二の堀、三の堀を死守する!信繁殿には思う存分暴れて貰いたいと伝えてくれ!」
後方の今川軍には敵の攻撃は全く来ていない為落ち着いて対処をしていた。それに打って変わり前面に出ている武田軍は投石と弓矢による集中攻撃でジリジリとしかし確実に兵を減らされている。
「取りついたぞ!梯子をかけよ!!城内に入れば我らは敵の卑怯な攻撃に晒されぬぞ!負けぬ!進めい!」
武田軍の足軽大将が部下の足軽数名を連れて梯子をかけて城壁から顔を出しよじ登ろうとする。
「なんだこれは!?壁の上に気をつけよ!棘があるぞ!!!」
それはとりつかれる前提で用意をしておいた青銅でできた鉄線である。現代にもあるそれは侵入者の行手を拒み尚且つ、敵に攻撃も与える。まだまだ風化が進んでいないとはいえ破傷風にもなる可能性があるこの柵は北条軍内では絶対に触らないように厳命されている。
あちらこちらで武田軍の兵士たちが無理矢理にでもよじ登ろうとして鉄線の柵に引っかかって怪我をおっていく。この時代にニッパーやハサミなどを戦場に持ち歩くものはおらずなんとか、足軽が持ってきていたナタなどで叩き斬ろうとするもそれを咎める弓矢が続々と降ってくる。
武田軍は犠牲を出しながらも一部の道を切り開きドンドンと侵入していこうとするも行く手が限定されたこの状況ではいい鴨となって狙われていくばかりである。これを指を咥えて見ているはずもなく信繁は今川へと弓隊の援護を要請しながら自分の部隊の弓隊にも侵入する足軽を援護するように命じている。
そのおかげもあってか何人かの盾持ちが梯子を上りきり城内へと侵入を始める。今川軍の援護もあり火が全体に燃え上がることはなかったが周囲を照らす程度には燃えている。
「進めい!10人一塊となって建物の中を制圧していくのだ!残りのものは盾持ちを前にして道を進むぞ!」
信繁が梯子を渡り切ると細やかに指示を出し盾持ちを前にじっくりと守りを固めながら城内を制圧するために前へ進もうとする。既に北条軍は奥に下がって奇妙な筒のようなもの、報告にあった天雷の武器を用意している。
「銅板盾持ちを前に出せい!我らが接近すれば負けることはないぞ!」
今回のために用意しておいた木の盾の裏に銅板を貼り付けた特製の盾を持たせた大男達に前を進ませる。他の兵は間から顔を出さないように各盾持ちの後ろを進むように命じている。
天雷の武器の作り方などはわからなかったが、その性能については貫通力が高い弓矢のようなものであることが分かっている。それに合わせて鉱物が取れる甲斐の利点を生かし何枚も重ねて厚みを増した盾を一応用意しておいたのだ。
欠点としてとても重く力自慢の男がゆっくりゆっくりと進まねばならないがその性能は折り紙付きで相手が近づくごとに天雷の武器を使ってくるがバチィン!と音を上げてたてが跳ね返していく。
「よし!これならいけるぞ!今川隊にも最低限必要な人数を残し城内に侵入するように伝えよ!」
伝令を後方に送りながら本丸に近づいていく。本丸といっても城というよりは大きな石の塊のような物だ。漆喰のような壁で二階建てにした簡素な建物だが覗き窓が所々についており頑強そうだ。それもあと4分の1というところで盾持ちが何人か急に消えてしまった。
バキバキと音がなったと思ったら落とし穴があったようで何人かの盾持ちが穴に落ちて木の棘に体を刺され死に絶えてしまった。
11
お気に入りに追加
194
あなたにおすすめの小説
夕映え~武田勝頼の妻~
橘 ゆず
歴史・時代
天正十年(1582年)。
甲斐の国、天目山。
織田・徳川連合軍による甲州征伐によって新府を追われた武田勝頼は、起死回生をはかってわずかな家臣とともに岩殿城を目指していた。
そのかたわらには、五年前に相模の北条家から嫁いできた継室、十九歳の佐奈姫の姿があった。
武田勝頼公と、18歳年下の正室、北条夫人の最期の数日を描いたお話です。
コバルトの短編小説大賞「もう一歩」の作品です。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
日本列島、時震により転移す!
黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
冤罪で追放した男の末路
菜花
ファンタジー
ディアークは参っていた。仲間の一人がディアークを嫌ってるのか、回復魔法を絶対にかけないのだ。命にかかわる嫌がらせをする女はいらんと追放したが、その後冤罪だったと判明し……。カクヨムでも同じ話を投稿しています。
旧陸軍の天才?に転生したので大東亜戦争に勝ちます
竹本田重朗
ファンタジー
転生石原閣下による大東亜戦争必勝論
東亜連邦を志した同志達よ、ごきげんようである。どうやら、私は旧陸軍の石原莞爾に転生してしまったらしい。これは神の思し召しなのかもしれない。どうであれ、現代日本のような没落を回避するために粉骨砕身で働こうじゃないか。東亜の同志と手を取り合って真なる独立を掴み取るまで…
※超注意書き※
1.政治的な主張をする目的は一切ありません
2.そのため政治的な要素は「濁す」又は「省略」することがあります
3.あくまでもフィクションのファンタジーの非現実です
4.そこら中に無茶苦茶が含まれています
5.現実的に存在する如何なる国家や地域、団体、人物と関係ありません
6.カクヨムとマルチ投稿
以上をご理解の上でお読みください
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
原産地が同じでも結果が違ったお話
よもぎ
ファンタジー
とある国の貴族が通うための学園で、女生徒一人と男子生徒十数人がとある罪により捕縛されることとなった。女生徒は何の罪かも分からず牢で悶々と過ごしていたが、そこにさる貴族家の夫人が訪ねてきて……。
視点が途中で切り替わります。基本的に一人称視点で話が進みます。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
旅行先で目を覚ましたら武田勝頼になっていた私。どうやら自分が当主らしい。そこまでわかって不安に覚える事が1つ。それは今私が居るのは天正何年?
俣彦
ファンタジー
旅行先で目を覚ましたら武田勝頼になった私。
武田家の当主として歴史を覆すべく、父信玄時代の同僚と共に生き残りを図る物語。
甲斐ノ副将、八幡原ニテ散……ラズ
朽縄咲良
歴史・時代
【第8回歴史時代小説大賞奨励賞受賞作品】
戦国の雄武田信玄の次弟にして、“稀代の副将”として、同時代の戦国武将たちはもちろん、後代の歴史家の間でも評価の高い武将、武田典厩信繁。
永禄四年、武田信玄と強敵上杉輝虎とが雌雄を決する“第四次川中島合戦”に於いて討ち死にするはずだった彼は、家臣の必死の奮闘により、その命を拾う。
信繁の生存によって、甲斐武田家と日本が辿るべき歴史の流れは徐々にずれてゆく――。
この作品は、武田信繁というひとりの武将の生存によって、史実とは異なっていく戦国時代を書いた、大河if戦記である。
*ノベルアッププラス・小説家になろうにも、同内容の作品を掲載しております(一部差異あり)。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる