上 下
38 / 258

38

しおりを挟む
馬具の量産に合わせて、競馬場を韮山城下と小田原城下に設置した。まだ出走予定はなく騎馬隊の練習場に見せかけてはいるが、川越夜戦を乗り越えた頃には安房にも設置されているだろうし、競馬を庶民の娯楽として広めるつもりだ。

 ギャンブルに関しては昔ながらの日本のサイコロ賭博は残して、現代でも流行っていたカジノを公営で行うつもりだ。だが、ヤクザが胴元をしている闇賭博に関しては厳しく取り締まっている。家庭内や村内など小規模なものは放置しているが、大きな資金で経営された賭博は取り締まっており、報告した者には褒賞金を与えている。それでも取り締まれないものはあるが、風魔のおかげでほぼ全て潰している。

 現代のテーブルゲームは基本トランプで出来ている。つまりトランプ作りも始めていた訳だが、これが本っっっっ当に大変だった。用意するのにめちゃくちゃ時間と手間がかかった。紙での作成は諦めた。現代のようなトランプは用意できない。なので青銅や亜鉛などを利用して厚さ1ミリほどの金属板に焼き入れをして作った。

 これによってテーブルゲームを可能にして各城下町に公営カジノを配置して管理運営させている。最近では少しお金を貯え始めた農民や商人が通い始め、口コミで徐々に利用者が増えているようだ。

 破産するまでスッて夜逃げする者が増えたら目も当てられないので、個人の資産を月1で参照して、賭博場でチップに変える時に幾らまで許可を出すかどうかを決めている。

 戸籍関係を整備する間に納めた税の金額を元に算出しており、チップを買うのが難しくなった人物は各街にブラックリストが回るようになっており、他の街で遊ぶことも無理だ。

 そこで農地から取れる産出物を売り買いする以外に、港や城下町に出てきて日雇いで働いたり、農閑期に行う長期のバイトのような形の仕事、例えば商人の手伝いや工場[鍛冶場]での勤務なども盛んになり、北条領内では一気に金銭による取引が増えた。

 人間、欲望や娯楽が絡むと発展するなあ、と実体験をした気分だ。

 とりあえず経済面はざっとこんな感じになったが、次はこれを北条領内だけでなく、日本に浸透させて行かなければならない。ここは焦り過ぎずにまずは占領した房総に広める。

 それに合わせて銭の問題も発生してくる。日の本で使われている銅銭は中国からの輸入品である。今は通用しているが、よくよく考えれば自国のお金はありませんなど恐ろしすぎる話でもある。

 ということで簡易的にだが、私鋳銭を作る準備を始めさせた。計画の主体は幻庵、に見せかけての俺だ。俺は原案を出して他の者達に修正してもらう。とりあえずの形としては金貨や銀貨になるだろう。ただし混ぜ物8割ほどで節約していかなければ、すぐに底を突いてしまうだろう。

 今は甲州金や伊豆で取れている金銀、外国や中国、日本の他国から輸入している粗銅を、灰吹法で金銀の錬金をしている。毎月もの凄い量の金銀が蓄えられているため、風魔の里と韮山、小田原に分けて保管している。

 今の時点で銭を作ると朝廷や幕府がらみで面倒臭いからな。準備だけに留めておく。朝廷に関しては何とかなるだろうが、アイツらも片付けなければいけないな。まあ頑張ってくれよ、三好軍。

 さて、最近ではポルトガル船が持ってきてくれたジャガイモやサツマイモを伊豆の山や道端に植えまくっている。これらの収穫量はバカにはならないし、ウチでは限りなく少ない浮浪者の救済にもなる。まだ安定して収穫は出来ないため少しずつ広めていくが、栄養価も生産性も高く飢饉時に非常に役立つ救荒作物であり、焼酎の原料にもなるので、当面は他国に流出しないように管理するつもりだ。

 ポルトガル船はそれ以外には中国製の連弩や大型弩などを持ってきてくれた。これは素直にありがたかった。中国の弩は進んでおり、こちらのクロスボウと合わせての開発改良が行われている。大型弩、まあバリスタの開発は簡単に済んだ。大型化には手間は掛からないのが相場だ。特に問題なく盾部隊を吹き飛ばす威力を出せそうだが、設置の面倒臭い手間を考えると防衛用としか言いようがない。なので大砲の弾が切れた後の予備として河東の城に幾つかと小田原城に配備したのみだ。

 連弩に関しては複製は出来た。設置型の連弩は使い勝手が悪過ぎて没になり、手持ちで使える連弩は諸葛弩と呼ばれる物だ。諸葛弩は本体に取りつけられたレバーを引くと弦が引き延ばされて矢が装填され、本体の下部にある引き金を引くと弦が元に戻り、その反発力によって矢が放たれるという仕組みだ。簡単な操作で矢を連射できることが強みだが、小型化によって翼(弦を張る弓の部分)が小さくなり、射程と威力が弱いのが難点というところだ。

 木製の連弩はリカーブボウスタイル、つまり簡単な弦が一つだが、今作らせているのは青銅を用いたコンパウンドボウだ。職人達にも学校、特に職人学校に通わせているので、ある程度は物理学についての知識を蓄えている。その前提で梃子の原理についての説明をして強度と使いやすさの両立をお願いしている。現代のような完全なコンパウンドボウではなく、弦の部分を強化して強い矢を連射できるようにしたいだけだ。
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

天冥聖戦 伝説への軌跡

くらまゆうき
ファンタジー
あらすじ 狐の神族にはどんな過去があって人に封印されたのか? もはや世界の誰からも忘れられた男となった狐神はどうにかして人の体から出ようとするが、思いもよらぬ展開へと発展していく… 消えている過去の記憶を追い求めながら彼が感じた事は戦争のない世界を作りたい。 シーズンを重ねるごとに解き明かされていく狐の神族の謎は衝撃の連発! 書籍化、アニメ化したいと大絶賛の物語をお見逃しなく

追放シーフの成り上がり

白銀六花
ファンタジー
王都のギルドでSS級まで上り詰めた冒険者パーティー【オリオン】の一員として日々活躍するディーノ。 前衛のシーフとしてモンスターを翻弄し、回避しながらダメージを蓄積させていき、最後はパーティー全員でトドメを刺す。 これがディーノの所属するオリオンの戦い方だ。 ところが、SS級モンスター相手に命がけで戦うディーノに対し、ほぼ無傷で戦闘を終えるパーティーメンバー。 ディーノのスキル【ギフト】によってパーティーメンバーのステータスを上昇させ、パーティー内でも誰よりも戦闘に貢献していたはずなのに…… 「お前、俺達の実力についてこれなくなってるんじゃねぇの?」とパーティーを追放される。 ディーノを追放し、新たな仲間とパーティーを再結成した元仲間達。 新生パーティー【ブレイブ】でクエストに出るも、以前とは違い命がけの戦闘を繰り広げ、クエストには失敗を繰り返す。 理由もわからず怒りに震え、新入りを役立たずと怒鳴りちらす元仲間達。 そしてソロの冒険者として活動し始めるとディーノは、自分のスキルを見直す事となり、S級冒険者として活躍していく事となる。 ディーノもまさか、パーティーに所属していた事で弱くなっていたなどと気付く事もなかったのだ。 それと同じく、自分がパーティーに所属していた事で仲間を弱いままにしてしまった事にも気付いてしまう。 自由気ままなソロ冒険者生活を楽しむディーノ。 そこに元仲間が会いに来て「戻って来い」? 戻る気などさらさら無いディーノはあっさりと断り、一人自由な生活を……と、思えば何故かブレイブの新人が頼って来た。

天日ノ艦隊 〜こちら大和型戦艦、異世界にて出陣ス!〜 

八風ゆず
ファンタジー
時は1950年。 第一次世界大戦にあった「もう一つの可能性」が実現した世界線。1950年4月7日、合同演習をする為航行中、大和型戦艦三隻が同時に左舷に転覆した。 大和型三隻は沈没した……、と思われた。 だが、目覚めた先には我々が居た世界とは違った。 大海原が広がり、見たことのない数多の国が支配者する世界だった。 祖国へ帰るため、大海原が広がる異世界を旅する大和型三隻と別世界の艦船達との異世界戦記。 ※異世界転移が何番煎じか分からないですが、書きたいのでかいています! 面白いと思ったらブックマーク、感想、評価お願いします!!※ ※戦艦など知らない人も楽しめるため、解説などを出し努力しております。是非是非「知識がなく、楽しんで読めるかな……」っと思ってる方も読んでみてください!※

【ヤベェ】異世界転移したった【助けてwww】

一樹
ファンタジー
色々あって、転移後追放されてしまった主人公。 追放後に、持ち物がチート化していることに気づく。 無事、元の世界と連絡をとる事に成功する。 そして、始まったのは、どこかで見た事のある、【あるある展開】のオンパレード! 異世界転移珍道中、掲示板実況始まり始まり。 【諸注意】 以前投稿した同名の短編の連載版になります。 連載は不定期。むしろ途中で止まる可能性、エタる可能性がとても高いです。 なんでも大丈夫な方向けです。 小説の形をしていないので、読む人を選びます。 以上の内容を踏まえた上で閲覧をお願いします。 disりに見えてしまう表現があります。 以上の点から気分を害されても責任は負えません。 閲覧は自己責任でお願いします。 小説家になろう、pixivでも投稿しています。

召喚魔法使いの旅

ゴロヒロ
ファンタジー
転生する事になった俺は転生の時の役目である瘴気溢れる大陸にある大神殿を目指して頼れる仲間の召喚獣たちと共に旅をする カクヨムでも投稿してます

甲斐ノ副将、八幡原ニテ散……ラズ

朽縄咲良
歴史・時代
【第8回歴史時代小説大賞奨励賞受賞作品】  戦国の雄武田信玄の次弟にして、“稀代の副将”として、同時代の戦国武将たちはもちろん、後代の歴史家の間でも評価の高い武将、武田典厩信繁。  永禄四年、武田信玄と強敵上杉輝虎とが雌雄を決する“第四次川中島合戦”に於いて討ち死にするはずだった彼は、家臣の必死の奮闘により、その命を拾う。  信繁の生存によって、甲斐武田家と日本が辿るべき歴史の流れは徐々にずれてゆく――。  この作品は、武田信繁というひとりの武将の生存によって、史実とは異なっていく戦国時代を書いた、大河if戦記である。 *ノベルアッププラス・小説家になろうにも、同内容の作品を掲載しております(一部差異あり)。

貞操逆転世界に無職20歳男で転生したので自由に生きます!

やまいし
ファンタジー
自分が書きたいことを詰めこみました。掲示板あり 目覚めると20歳無職だった主人公。 転生したのは男女の貞操観念が逆転&男女比が1:100の可笑しな世界だった。 ”好きなことをしよう”と思ったは良いものの無一文。 これではまともな生活ができない。 ――そうだ!えちえち自撮りでお金を稼ごう! こうして彼の転生生活が幕を開けた。

お兄様、冷血貴公子じゃなかったんですか?~7歳から始める第二の聖女人生~

みつまめ つぼみ
ファンタジー
 17歳で偽りの聖女として処刑された記憶を持つ7歳の女の子が、今度こそ世界を救うためにエルメーテ公爵家に引き取られて人生をやり直します。  記憶では冷血貴公子と呼ばれていた公爵令息は、義妹である主人公一筋。  そんな義兄に戸惑いながらも甘える日々。 「お兄様? シスコンもほどほどにしてくださいね?」  恋愛ポンコツと冷血貴公子の、コミカルでシリアスな救世物語開幕!

処理中です...