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木更津の戦いが終わり、意気消沈という形で椎津城に逃げ込んだ諸将が集まっている。
「さて、此度の戦いは負けてしまったな。だが、里見はこちらに攻め寄せるような素振りは見せていないようだ。一先ずは安心だ。」
昌胤は心底安心した様子で諸将を落ち着かせようとする。
「はっ!ですが、念のため夜襲を警戒しておきまする。我らの部隊はまだ被害が皆様と比べ軽微でしたので、警戒部隊として就かせておきまする。」
ここで変に妬みを買わぬように嫌な役回りを自ら申し出ておく。
「うむ、頼むぞ。これで我らは籠城するしかなくなった訳だが、北条の援軍はどうなっている?万喜城次第ではこのまま耐えれば勝てるかも知れぬ。」
「氏康様ならば、必ずや我らのために軍を送ってくださるでしょう。もしかしたらあの地黄八幡を送っていただけるやも知れませぬ!」
千葉、真里谷、両当主が楽観的ではあるが、まだ可能性のある未来を皆に伝え、士気を高めようとする。
「まずは兵達に休息を取らせ、北条様からの援軍が届くまで耐え忍ぶのが我らの役目となりまする。これまで以上に斥候を配置して警戒を密にしましょうぞ。
それと2.3日後にはどのような結果になろうと、万喜城攻めの結果が届く頃でございまする。まずは3日耐え抜きましょう。
里見は稲村城が押さえられた事をもう知っているはずです。我らが撤退する時に椎津城に攻めかからなかったのが何よりの証拠でございましょう。
我らは奴らが援軍に戻らぬようにしっかり見張ることが肝要だと思いまする。いかがか?」
皆を纏めるように案を提示していき、千葉、真里谷両方にワシについていこうと思わせる。少しでも両家の求心力を落とし、我らに付き従うようにしておけば、北条家中で我らを頼りに上総、下総一派が形成され、纏めることができるだろうという算段だ。
「では、皆もしっかりと休息を取り、体を休めて明日以降に備えるように!」
昌胤の一言で軍議が終わり、我らは自陣へと戻る。そして倅と合流し、これからのことについて話し合う。
「結果は上々にございまするな。我らの損害は、
千葉本隊 800→300
真里谷 1500→500 うち500は突撃隊
原親子 1700→1500
となりましてございます。これならば我らの存在はより強く皆に印象付けられましょうぞ。」
「ふむ、いい感じに削れておるの。後は我らがしっかりと踏ん張り、伊豆守様に臣下の礼を取れば目標達成じゃの。今からすることは分かるかの?」
胤貞は目を輝かせ答える。
「はっ!真里谷、千葉本隊の諸将に調略をかけ、北条に臣下の礼を取りやすいように気持ちを誘導することでございまするな。」
「そうだ。ワシもやるからお主は若い奴らに調略を頼むぞ。気張れよ、ここで我らの評価も変わるぞ。」
「思っていた以上に原親子は使えるかもしれぬな。野心はあるが、下克上のようなものではないようだ。しっかりと若殿に伝えなければ…」
ここまでの行動は風魔の配下が聞いており、しっかりと氏政達に伝わっているのには気づいていないあたり、忍びは怖いものである。
その後は夜襲を警戒していたが攻めて来ずに、ジリジリと時間が過ぎるのを耐えていた。原親子は真里谷、千葉両家の諸将達に北条の庇護があれば大丈夫などと彼らの士気を高める助言をしながら、北条の政策はこのようである、そのおかげでより良い暮らしができると、北条を羨ましく思わせるような発言をさりげなく入れて北条への関心を高める。
そして食いついてきた者には懇切丁寧に説明をする。不安視する者には不安を取り除くなど、北条のイメージアップを図りながら親北条派を作り上げていく。
いつのまにかこの戦が終われば北条の下でより良い暮らしをと、各人が思うようになりつつあった。これには現実逃避の一面もあり、皆が明るい希望を持つ為にはしょうがない部分もあった。
そうして過ごしているとある一報が届く。
北条軍 万喜城を奪取
「さて、此度の戦いは負けてしまったな。だが、里見はこちらに攻め寄せるような素振りは見せていないようだ。一先ずは安心だ。」
昌胤は心底安心した様子で諸将を落ち着かせようとする。
「はっ!ですが、念のため夜襲を警戒しておきまする。我らの部隊はまだ被害が皆様と比べ軽微でしたので、警戒部隊として就かせておきまする。」
ここで変に妬みを買わぬように嫌な役回りを自ら申し出ておく。
「うむ、頼むぞ。これで我らは籠城するしかなくなった訳だが、北条の援軍はどうなっている?万喜城次第ではこのまま耐えれば勝てるかも知れぬ。」
「氏康様ならば、必ずや我らのために軍を送ってくださるでしょう。もしかしたらあの地黄八幡を送っていただけるやも知れませぬ!」
千葉、真里谷、両当主が楽観的ではあるが、まだ可能性のある未来を皆に伝え、士気を高めようとする。
「まずは兵達に休息を取らせ、北条様からの援軍が届くまで耐え忍ぶのが我らの役目となりまする。これまで以上に斥候を配置して警戒を密にしましょうぞ。
それと2.3日後にはどのような結果になろうと、万喜城攻めの結果が届く頃でございまする。まずは3日耐え抜きましょう。
里見は稲村城が押さえられた事をもう知っているはずです。我らが撤退する時に椎津城に攻めかからなかったのが何よりの証拠でございましょう。
我らは奴らが援軍に戻らぬようにしっかり見張ることが肝要だと思いまする。いかがか?」
皆を纏めるように案を提示していき、千葉、真里谷両方にワシについていこうと思わせる。少しでも両家の求心力を落とし、我らに付き従うようにしておけば、北条家中で我らを頼りに上総、下総一派が形成され、纏めることができるだろうという算段だ。
「では、皆もしっかりと休息を取り、体を休めて明日以降に備えるように!」
昌胤の一言で軍議が終わり、我らは自陣へと戻る。そして倅と合流し、これからのことについて話し合う。
「結果は上々にございまするな。我らの損害は、
千葉本隊 800→300
真里谷 1500→500 うち500は突撃隊
原親子 1700→1500
となりましてございます。これならば我らの存在はより強く皆に印象付けられましょうぞ。」
「ふむ、いい感じに削れておるの。後は我らがしっかりと踏ん張り、伊豆守様に臣下の礼を取れば目標達成じゃの。今からすることは分かるかの?」
胤貞は目を輝かせ答える。
「はっ!真里谷、千葉本隊の諸将に調略をかけ、北条に臣下の礼を取りやすいように気持ちを誘導することでございまするな。」
「そうだ。ワシもやるからお主は若い奴らに調略を頼むぞ。気張れよ、ここで我らの評価も変わるぞ。」
「思っていた以上に原親子は使えるかもしれぬな。野心はあるが、下克上のようなものではないようだ。しっかりと若殿に伝えなければ…」
ここまでの行動は風魔の配下が聞いており、しっかりと氏政達に伝わっているのには気づいていないあたり、忍びは怖いものである。
その後は夜襲を警戒していたが攻めて来ずに、ジリジリと時間が過ぎるのを耐えていた。原親子は真里谷、千葉両家の諸将達に北条の庇護があれば大丈夫などと彼らの士気を高める助言をしながら、北条の政策はこのようである、そのおかげでより良い暮らしができると、北条を羨ましく思わせるような発言をさりげなく入れて北条への関心を高める。
そして食いついてきた者には懇切丁寧に説明をする。不安視する者には不安を取り除くなど、北条のイメージアップを図りながら親北条派を作り上げていく。
いつのまにかこの戦が終われば北条の下でより良い暮らしをと、各人が思うようになりつつあった。これには現実逃避の一面もあり、皆が明るい希望を持つ為にはしょうがない部分もあった。
そうして過ごしているとある一報が届く。
北条軍 万喜城を奪取
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