北条氏政転生 関八州どころか東日本は全部俺の物 西は信長に任せて俺は歴史知識を利用して天下統一を手助けします。

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1544年半ば、今川で一つ問題が起きていた。今川というよりは独立した国人領主でありながらも今川に臣従している井伊と今川の内紛だ。

 井伊家家臣の井伊直満、直義兄弟は1541年頃から信濃の武田に対抗するために軍の準備をしていた。当主の井伊直盛は嗣子がいなかった為、井伊直満の嫡子の亀之丞が井伊家を継ぐことになっていた。

 しかし、それに強く反発したのが小野政直である。彼はもともと井伊氏の重臣ではあったが、同じ直盛の家臣として仕えていた井伊直満、直義兄弟に上の立場に立たれるのがどうしても我慢できずに、本家に何も言わずに武田への備えをしているのをカモフラージュして、今川義元に兄弟が謀反を起こそうとしていると讒言した。

 その真偽を定かにする前に義元は井伊直満、直義を呼び出し腹を切らせた。それに城下で当主と共に各有力御家人の子供を集めて洗脳教育みたいなことをしている最中の亀之丞を捕らえようとして、あと一歩のところで逃した。だが、政直の元を"偶々"訪れていた証人によって逃げた先を特定。捕まえずにその場で斬り殺してしまった。

 義元は多分三河方面の有力国人衆を配下として利用するよりも、力で押さえ込み土地から切り離して今川の勢力を安定させようとしている。実際、三河国人衆は歴史が示す通り土地への愛着が強い。それは一概に土地が好きと言うよりも、宗教の関係や今川からの圧政に対する反骨心もあったと俺は思う。

 義元がやろうとしていることは分かる。本質的には土地と武将の繋がりを切るか、今川への忠誠を植え込むかの二択で前者を選んだだけだ。他の批評でも見るように名門意識、エリート意識というものも僅かながらあっただろうが、それよりも勢力拡大を焦り過ぎたように思える。

 多分俺の予想では史実の義元が上洛を目指した理由は、東海道を制すれば北条や武田と戦わなければ京を取り、武田、北条を縁戚として支配下に置くことで天下を差配するつもりだったのだろう。それと、肝心の急いだ理由は師である太原雪斎の歳…だろうな。彼を支え続けてくれた忠臣に報いたかったのだろう。

 冥土の土産に天下を…か。思っていた以上に義元は情に篤いな。だが手段を間違えた。その情を三河の配下に見せられなかったのがアイツの大きな失敗だ。それでも押さえ込んだ上で尾張を攻め取る寸前まで行ったのだ。さすがは東海道一の弓取りだな。

 話は戻して井伊直盛は別として井伊直満、直義、それと後を継ぐ予定だった亀之丞が殺されてしまった。この結果、亀之丞の許嫁となっていた、後の井伊直虎が出家して次郎法師と名乗っている。

 俺は風魔を出向かせて直盛と接触し、事の真実を伝えて、井伊一族を率いて北条で再起を図らないかと伝えたところ、武士として土地を離れることなどできぬと一蹴された。 

 しかし、佞臣の小野は本家すら排除して井伊家になりかわろうとしている事、それらの証拠は風魔が押さえている事、そして亀之丞を殺すために念入りに準備して信濃で殺していた事を伝えた。

 また、次郎法師殿も狙われていると伝え、北条で時が来るまで預かろうと提案したところ、なんとか飲んでくれて北条に送ることとなった。

 彼女を後継者として相応しいように当主教育を自分の側で受けさせることを確約し、風魔が護衛しながら伊豆へ次郎法師を連れてきた。

 「よくきたな。長旅と恐怖で身も心も疲れているだろう。もう大丈夫だ。君のお父様とも約束した通りしっかりと将来の女地頭となれるように学ぶ機会を与えるつもりだ。
 まずは、うちの領にある学校と呼ばれる場所で基礎知識を学んできて欲しい。時間がある時はできるだけ私と幻庵からの授業を授けよう。」

「はっ!父に変わりましてこの御恩感謝いたします。この身を粉にして頑張らさせていただきます。」

 こうして、返却予定[その頃には井伊直盛は死んでいるかもしれないが]の次郎法師をgetした。


 それとは別に幸隆の方から連絡が来た。真里谷が父に対して援軍を要求してきたと、そして俺が以前言っていたように、伊豆衆を派遣して千葉と協力して里見を挟撃する用意ができており、命令さえもらえればすぐにでも救援に駆けつけられることを父に伝えたところ、河東の抑えを残して全軍で里見攻めをする事を命じてもらえたそうだ。

 ここからが忙しくなる。

 まず俺は虎高に蒲原城と羽鮒支城、吉原城、興国寺支城の兵を任せ、幻庵に後方の兵站管理を任せた。父には御殿場支城を献上という名の押し付けをして武田への備えをしてもらう。

 そして、俺は率いることの可能な兵数7000の内、黒鍬衆1000、鉄砲衆500を率いてガレオン船とキャラック船で安房に向けて出航する。下田と土肥からそれぞれ軍艦を向かわせる。

 向かう途中で直勝、光秀、勘助、幸隆、小太郎と最後の作戦確認をしていた。

「とりあえず俺たちの予定をざっくり話すぞ。まずはなんとか間に合った軍艦に乗せたフランキ砲を使うため、夜間に強襲上陸をかける。狙うのは里見の本拠地の稲村城だ。黒鍬衆を主体に簡易的な陣地を組み上げる。

 そのための資材も後方のキャラック船に乗せてある。組み立てるのは夜間で終わらせる。そうしたら鉄砲衆と槍で敵を追い払いながら、地上に下ろしたフランキ砲を使って城を丸裸にしていくぞ。

 それが終わればゆっくりと前進していきながら城を制圧する。配下や兵には乱取りや地元の農民達への暴行は厳禁だと伝えろ。

 もし破る奴がいたら見せしめに拷問をして殺せ。二度と破る奴が出ないようにだ。いいな?」

皆がしっかりと頷くのを確認する。

 「里見があの国力の低い安房で勢力を誇っていられるのは、強大な里見水軍のおかげだというのはみんな承知のことだと思う。

 だが、やっていることはただの海賊だ。我ら北条の民を奪い殺し、奴らは私腹を肥しているだけの蛮族である!

 我が民を救うため、また、救援を求めてきた真里谷を救うために我らは打ち勝たなければいけない!

 そのための具体的な作戦として、強襲上陸で安房にしっかりとした拠点を制圧した後に水軍の大決戦を行う!奴らは今椎津城を攻めるために水軍の大半を注ぎ込んでいる。直勝!奴らを沈めてくるのだ!」

といってもこの時期の水軍なんぞ基本海賊だから、どこも略奪なんかやっているんだがな。大義名分は大事なのだよ。水軍衆の目が熱い闘志を見せている。

 「我らの軍を運ぶキャラック船以外の水軍は、稲村城を制圧後に椎津方面へ向かってもらう。その指揮は直勝に任せるぞ。

 我らは残りのキャラック船で稲村城を押さえるための船以外を使って、海から反対方向の万喜城に攻め上がる。気張れよ!」
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