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箱庭の外
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森を抜けてすぐ、次の村であるレイナードが見えてくる。
品質の良い果物が村の主要な生産物で、王宮で消費されるものは特別なものを除き殆どがこの村のものだ。
その為、村の民は比較的裕福で広い畑を持ち、穏やかに暮らしていた。
最寄りの葡萄畑に農夫たちがいるが、どうも様子がおかしい。
作業をするでもなく、水桶を伏せて座り項垂れている者、近くの者と不安げに何やら話し込んでいたり収穫した葡萄を入れた籠を抱えたまま溜息をつく者…
グリゴールも不審に思ったようで、馬の歩みを止めて馬上から声をかけた。
「どうしたんだ?何かあったのか?」
「ん…?お前さんたち新婚旅行かい?」
「ああ、もう帰るところだが…」
「もし王都に帰るなら気をつけな。
貴族様の御屋敷や王宮の周りで暴動が起きて作物が納品出来やしないんだ」
聞けば当初ソルド男爵の屋敷の周りと王宮を遠巻きにしていた暴動のうねりは、リュスト王子派を除く貴族殆どの屋敷周辺にも拡がっているとの事だった。
何故この状況を見て何もしようとしないのか
貴族たちは自分たちさえ良ければそれでいいのか
フォルスト王は退位し、リュスト王子を王に!
…そう口々に唱える声は、日に日に王都外にも拡がっているようだ。
実はアリオラ王妃が輿入れして来て以来、ガズールとの交易が盛んになり一時はヴォルデも栄えていたが、段々とヴォルデは衰退してきていた。
というのも、ガズールの広大な領土は貿易で拡大して来た面がある。
どういうことかと言うと、ガズールの王族は元々砂漠で商人として生計を立てており、鉱脈や植物の種、あらゆる物に対して目利きかつ情報通であった。
例えば、街の市場で子供が売っている、ある山で採掘された宝石の原石に違う希少な鉱物の混じりものを見つけると、鉱夫に心付けを渡し目的のものを採掘させる。
それに高値がつくと、貯め込んでいた私財から糸目をつけずに鉱山を鉱夫ごと買い占める。
そしてその希少な鉱物を元手に、砂漠でも育つ植物の種や、砂漠の秘境で見つかった水を溜め込む性質のある植物を買い付け、領地で育て専売する。
また、海へ繋がる土地を商人として行き来し、船を買い付け、港へ“王の耳”となる情報収集の為の人材を住まわせ、他国の希少な商材を手に入れるため護衛付きの船貸しをし、確かな情報を確認すると、船を借りた商人より良い条件で交易相手に商談を持ちかける。
近年は十分に領土を手に入れそのようなそのやり方をすることも無くなっていたが、過去にはまるでカマキリの雌のようだと他の商人から恐れられていた時代もあったのだ。
海に接する土地を持たず、恵まれた自国の資源で近年まで穏やかに暮らしていたヴォルデの王侯貴族はすっかりその怖さを忘れ去っていたのだ。
民が気がつく頃には、ヴォルデの農作物の種や苗はガズールとの共同輸出産業として交易に組み込まれ、他の土地で栽培されるようになり価値が落ちて行っていた。
細々と個人で商売をしていた商人たちは、この十年でじわじわと他国の商人に足元を見られるようになっていき、それが商人以外の民の生活にも陰を落とし始めていたのだった。
品質の良い果物が村の主要な生産物で、王宮で消費されるものは特別なものを除き殆どがこの村のものだ。
その為、村の民は比較的裕福で広い畑を持ち、穏やかに暮らしていた。
最寄りの葡萄畑に農夫たちがいるが、どうも様子がおかしい。
作業をするでもなく、水桶を伏せて座り項垂れている者、近くの者と不安げに何やら話し込んでいたり収穫した葡萄を入れた籠を抱えたまま溜息をつく者…
グリゴールも不審に思ったようで、馬の歩みを止めて馬上から声をかけた。
「どうしたんだ?何かあったのか?」
「ん…?お前さんたち新婚旅行かい?」
「ああ、もう帰るところだが…」
「もし王都に帰るなら気をつけな。
貴族様の御屋敷や王宮の周りで暴動が起きて作物が納品出来やしないんだ」
聞けば当初ソルド男爵の屋敷の周りと王宮を遠巻きにしていた暴動のうねりは、リュスト王子派を除く貴族殆どの屋敷周辺にも拡がっているとの事だった。
何故この状況を見て何もしようとしないのか
貴族たちは自分たちさえ良ければそれでいいのか
フォルスト王は退位し、リュスト王子を王に!
…そう口々に唱える声は、日に日に王都外にも拡がっているようだ。
実はアリオラ王妃が輿入れして来て以来、ガズールとの交易が盛んになり一時はヴォルデも栄えていたが、段々とヴォルデは衰退してきていた。
というのも、ガズールの広大な領土は貿易で拡大して来た面がある。
どういうことかと言うと、ガズールの王族は元々砂漠で商人として生計を立てており、鉱脈や植物の種、あらゆる物に対して目利きかつ情報通であった。
例えば、街の市場で子供が売っている、ある山で採掘された宝石の原石に違う希少な鉱物の混じりものを見つけると、鉱夫に心付けを渡し目的のものを採掘させる。
それに高値がつくと、貯め込んでいた私財から糸目をつけずに鉱山を鉱夫ごと買い占める。
そしてその希少な鉱物を元手に、砂漠でも育つ植物の種や、砂漠の秘境で見つかった水を溜め込む性質のある植物を買い付け、領地で育て専売する。
また、海へ繋がる土地を商人として行き来し、船を買い付け、港へ“王の耳”となる情報収集の為の人材を住まわせ、他国の希少な商材を手に入れるため護衛付きの船貸しをし、確かな情報を確認すると、船を借りた商人より良い条件で交易相手に商談を持ちかける。
近年は十分に領土を手に入れそのようなそのやり方をすることも無くなっていたが、過去にはまるでカマキリの雌のようだと他の商人から恐れられていた時代もあったのだ。
海に接する土地を持たず、恵まれた自国の資源で近年まで穏やかに暮らしていたヴォルデの王侯貴族はすっかりその怖さを忘れ去っていたのだ。
民が気がつく頃には、ヴォルデの農作物の種や苗はガズールとの共同輸出産業として交易に組み込まれ、他の土地で栽培されるようになり価値が落ちて行っていた。
細々と個人で商売をしていた商人たちは、この十年でじわじわと他国の商人に足元を見られるようになっていき、それが商人以外の民の生活にも陰を落とし始めていたのだった。
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