歪んだ愛情と憐憫

春月 黒猫

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変化

側近たち

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それから少しして、ジンはまた外の行商人から何か仕入れて来たらしく大きな荷物と一緒に砦に帰ってきた。

ジンと一緒に最近行商人の交渉や運搬、ジンの警護に当たっているようで、観察していると決まって3人の側近たちがいつも一緒に出入りしていた。


まずふわりとした巻き毛の茶色い髪をした、青い眼の筋肉質な男。
名前はルイ。
1番ジンの近くにいて、かなり気さくに話しているようだった。
ジンより少し背が高いくらいだが、ゆったりした服から覗く筋肉を見たらただ者ではなさそうだった。

次に、無精髭を生やした灰色の髪の男。
ジンやエリル達よりふた周り近く年上なのではないだろうか。
棒術でも使うのか、背中にいつも細い棒を差している。
いつも酔ったような目付きで、目が合うとニヤニヤした笑みを返されるので苦手だ。
名前はショーンとか言ってたっけ。

もう1人は、いつも黒っぽい装束を身につけていて、顔もヴェールでほとんど隠れていていまいち顔かたちが分からない。
黒髪であること、巡回者ウィグル達の中でもかなり小柄であること、名前がユエン。
この辺では聞きなれない名前なので異国と縁があるのかもしれない。
声もジンに小声で耳打ちするので聞いたことがなく、謎の存在だ。

そんな男たちに囲まれている時のジンには近寄り難く、外に出る時にわざわざつけているのだから実力も砦を守っているレイスに引けを取らないのだろうし、こいつらがいる時は脱出など出来ないだろう。


「ユーリ!」

そんな事を考えながらぼーっと見ていると、ジンがこっちに近寄ってくる。

手に袋を持っているのでまたきっと装飾品だかを仕入れてきたのだろう。
やたら機嫌がいいので珍しいものでも手に入ったのだろうか。

「おかえり、ジン」
「ただいま、ユーリ。今日は面白いものが手に入ったんだ」

そう言ってジンが袋を開けると、赤いガラスで出来た小瓶、ガラスで出来たぽこぽこと球体が連なった棒のようなものが出てきた。
…何か嫌な予感がする。

「いつも使っている香油に飽きてきたから行商人に聞いてみたら、これを勧められたんだ。何でも、相手が素直になるとかいう…」
「素直?」
「…ユーリ、その瓶に入っているのは媚薬ですよ。そしてその横にあるのは"ああいう時"に使うモノです」

見かねたように近くにいたエリルが声をかけてきた。

「あーエリル…なんで言っちゃうんだよ…」

後ろにいたショーンが心底ガッカリした様子で肩を落とす。

「素直になるだの…ジンが1人で買うのを決めたようには思えないんですよねえ…」

じっとエリルに見つめられたあと、だはははと間の抜けた笑い声を上げるショーン。

「その通りだ、エリル。こいつがそう言ってジンをそそのかした」

ルイがそう言っている横で、ユエンもこくりと頷いている。


「媚薬…なあ」

ジンが小瓶を摘んで目の前で傾けている。
本当に分かっていて買ったわけではなかったようだ。

「ショーンが折角気を利かせてくれたんだし?使ってみるか」

ニヤリと笑ったジンに、俺は歯向かえるはずもなかった。
せめてショーンをジンから少し引き離したい。
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