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変化
警告
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「気にしないでって…ジンに許可は取ってるんですか?コレはエリルさんにしてもらわなくていいからってジンがー…」
「ユーリに触れはしませんから。きちんとできるか確認してるだけですよ」
しれっといつもの天使のような笑顔でそんな詭弁じみたことを言っているが、目が笑っていない。
何を考えているのか全く分からない。
「ねえ、ユーリ」
エリルは庭に転がっている、腰をかけるのにちょうどいいサイズの岩に座ると、天気の話でもするかのように話しかけてくる。
俺がこんな状態で固まっているというのに。
「ユーリはジンをどう思っていますか?」
喉がヒュッと鳴りそうになる。
俺が体を鍛えていたのを先程から見ていたとして、なにか勘づかれたというのだろうか?
「ど、どうって…一応…毎日ああいうことされたり旨いもん食べさせて貰ったりしてるし…それなりには?」
それなりにはって何だ。
自分でもどうかと思う苦しい言い訳をしてみるが。
「一生そういう生活が出来ると思いますか?」
「え?」
ざわざわとした感覚が強くなる。
エリルは先程から一体何が言いたいのだろう。
「俺が最初にここに来たのは8つの頃だった。
ジンはまだ5つくらいで、ジンの親父さんである先代のボスが、スラムの近くのオアシスに立ち寄った俺の両親のキャラバンを襲撃してここに母と俺を連れてきたんですよ。
…俺はもう今年で25歳になる」
17年…俺はちょうど17歳だがエリルはずっと俺が生きてきた間ここにいるということか。
しかも先代のボスの奴隷だとエリルは言っていた。
そしてここでは奴隷は、性的な奴隷のことを言うのだとここに来た日に聞いた。
ジンとエリルは見た目は対照的と言っていいが、自分の子供とさほど変わらない歳の子供をそういう目的で連れてきたというジンの父親に、心底吐き気がした。
「…ジンは先代とは違いますが、人の心は変わりやすいものです。
先代は母と俺の他にも何人も男女問わず奴隷が居ましたが飽きたり気に食わないことがあったらすぐ手にかけたり部下に指図して嬲り者にして殺してきました。
…俺の母もそうでした」
悪逆非道と噂されているあの巡回者を作り上げたのは間違いなく先代、ジンの父親なのだろう。
そしてスラムのネズミ達は俺以外に代が変わったことも知らず恨みを抱えたまま怯えて今も生きているはずだ。
「俺がまだ生きているのは、気に入られるように何でもして先代の機嫌を取ってきたからです。
ユーリはその覚悟がありますか?」
見透かすような鋭い眼光に射抜かれ、言葉が出ない。
早々に砦から逃げ出す準備をしていた自分に正直そこまでの覚悟はなかった。
逃げ出すまでの間でも、それぐらいしないと騙し通せないだろう。
エリルには俺の軽薄な考えが見透かされていたのかもしれない。
「まあ、よく考えて置いてほしいことはとりあえず伝えました。
これ以上になるとジンが帰って来そうですし。
頑張ってくださいね、ソレ」
そう言うとエリルは出てきたあたりの岩陰に入って行った。
どうやら隠し通路があったようだ。
「…油断してたらやばいな…」
盛大なため息とともに俺は膝から崩れ落ちた。
「ユーリに触れはしませんから。きちんとできるか確認してるだけですよ」
しれっといつもの天使のような笑顔でそんな詭弁じみたことを言っているが、目が笑っていない。
何を考えているのか全く分からない。
「ねえ、ユーリ」
エリルは庭に転がっている、腰をかけるのにちょうどいいサイズの岩に座ると、天気の話でもするかのように話しかけてくる。
俺がこんな状態で固まっているというのに。
「ユーリはジンをどう思っていますか?」
喉がヒュッと鳴りそうになる。
俺が体を鍛えていたのを先程から見ていたとして、なにか勘づかれたというのだろうか?
「ど、どうって…一応…毎日ああいうことされたり旨いもん食べさせて貰ったりしてるし…それなりには?」
それなりにはって何だ。
自分でもどうかと思う苦しい言い訳をしてみるが。
「一生そういう生活が出来ると思いますか?」
「え?」
ざわざわとした感覚が強くなる。
エリルは先程から一体何が言いたいのだろう。
「俺が最初にここに来たのは8つの頃だった。
ジンはまだ5つくらいで、ジンの親父さんである先代のボスが、スラムの近くのオアシスに立ち寄った俺の両親のキャラバンを襲撃してここに母と俺を連れてきたんですよ。
…俺はもう今年で25歳になる」
17年…俺はちょうど17歳だがエリルはずっと俺が生きてきた間ここにいるということか。
しかも先代のボスの奴隷だとエリルは言っていた。
そしてここでは奴隷は、性的な奴隷のことを言うのだとここに来た日に聞いた。
ジンとエリルは見た目は対照的と言っていいが、自分の子供とさほど変わらない歳の子供をそういう目的で連れてきたというジンの父親に、心底吐き気がした。
「…ジンは先代とは違いますが、人の心は変わりやすいものです。
先代は母と俺の他にも何人も男女問わず奴隷が居ましたが飽きたり気に食わないことがあったらすぐ手にかけたり部下に指図して嬲り者にして殺してきました。
…俺の母もそうでした」
悪逆非道と噂されているあの巡回者を作り上げたのは間違いなく先代、ジンの父親なのだろう。
そしてスラムのネズミ達は俺以外に代が変わったことも知らず恨みを抱えたまま怯えて今も生きているはずだ。
「俺がまだ生きているのは、気に入られるように何でもして先代の機嫌を取ってきたからです。
ユーリはその覚悟がありますか?」
見透かすような鋭い眼光に射抜かれ、言葉が出ない。
早々に砦から逃げ出す準備をしていた自分に正直そこまでの覚悟はなかった。
逃げ出すまでの間でも、それぐらいしないと騙し通せないだろう。
エリルには俺の軽薄な考えが見透かされていたのかもしれない。
「まあ、よく考えて置いてほしいことはとりあえず伝えました。
これ以上になるとジンが帰って来そうですし。
頑張ってくださいね、ソレ」
そう言うとエリルは出てきたあたりの岩陰に入って行った。
どうやら隠し通路があったようだ。
「…油断してたらやばいな…」
盛大なため息とともに俺は膝から崩れ落ちた。
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