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出会い
巡回者とネズミ
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この建物の屋上から見る空はいつだって同じだった。
青くて、埃っぽくて、土気色の建物に囲まれている。
それもその筈で、300年ほど前に流浪の民が定住するために辺りの土や石で建てた
住居というか遺跡に俺たちスラムの人間達は居着いている。
砂漠地帯の割に気候が穏やかでさほど風化もしないからロクに収入にありつけない俺たちでも
飢え死にしない程度に近くの小さな森や畑で食べ物にありつけ、雨風を防げヌルい生活を送れている。
ただ一つ、厄介な存在を除いては。
それは、スラムを仕切る【巡回者】と呼ばれる、言わばギャングだ。
奴らはこそこそ逃げ回っている俺たちを【ネズミ】と呼んでさげずんでいる。
出会ったら運の尽き、その日の食糧が無くなるくらいで済めばラッキー、
下手をしたら命を取られて鳥葬にされるのがここの暗黙のルールだった。
誰かの肉を食べたかもしれない鷹が空を飛んでいる。
石造りの床に寝転んでいた俺は興が冷め体を起こした。
「おい」
さっきまで誰もいなかった筈の屋上の、俺が体を起こした所…というか
モロ眼前に黒髪の目つきの悪い男がしゃがんで俺を見ていた。
「…巡回者…」
「…ご名答。分かってんなら食い物寄越せよ」
男はニヤリと口の右端を吊り上げると俺の腰に結び付けている袋に手を伸ばした。
「あ…!」
「…あァ?」
男が不機嫌そうに俺の荷物袋をにぎにぎするが、
そこには俺の砂除けのスカーフが入っているだけで。
殺される!
と思った俺はとっさに頭を庇って地面に丸くなった。
「…お前これくらいで俺らがお前らいちいち殺るって思ってんのか?」
「すみません!何も持ってないんです!」
「話きいてんのかよ」
苛立ったように地面で震えている俺の顔を無理矢理押し上げた男は、
驚いたように目を一瞬丸くし、厭らしく笑った。
「…持ってんじゃねえか」
「…え?」
意味が分からず情けない表情で震えている俺に、男は言った。
「今日からお前は【ネズミ】じゃねぇ。
巡回者のトップ、ジンの奴隷だ」
俺がその言葉の意味を理解を要するまでの間に、上空を旋回していた鷹が一声、鳴いた。
------------------------------------------------
2020.9.20
書き始めてから期間が空きすぎて設定がブレブレなので少し修正を入れていきます。
青くて、埃っぽくて、土気色の建物に囲まれている。
それもその筈で、300年ほど前に流浪の民が定住するために辺りの土や石で建てた
住居というか遺跡に俺たちスラムの人間達は居着いている。
砂漠地帯の割に気候が穏やかでさほど風化もしないからロクに収入にありつけない俺たちでも
飢え死にしない程度に近くの小さな森や畑で食べ物にありつけ、雨風を防げヌルい生活を送れている。
ただ一つ、厄介な存在を除いては。
それは、スラムを仕切る【巡回者】と呼ばれる、言わばギャングだ。
奴らはこそこそ逃げ回っている俺たちを【ネズミ】と呼んでさげずんでいる。
出会ったら運の尽き、その日の食糧が無くなるくらいで済めばラッキー、
下手をしたら命を取られて鳥葬にされるのがここの暗黙のルールだった。
誰かの肉を食べたかもしれない鷹が空を飛んでいる。
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「おい」
さっきまで誰もいなかった筈の屋上の、俺が体を起こした所…というか
モロ眼前に黒髪の目つきの悪い男がしゃがんで俺を見ていた。
「…巡回者…」
「…ご名答。分かってんなら食い物寄越せよ」
男はニヤリと口の右端を吊り上げると俺の腰に結び付けている袋に手を伸ばした。
「あ…!」
「…あァ?」
男が不機嫌そうに俺の荷物袋をにぎにぎするが、
そこには俺の砂除けのスカーフが入っているだけで。
殺される!
と思った俺はとっさに頭を庇って地面に丸くなった。
「…お前これくらいで俺らがお前らいちいち殺るって思ってんのか?」
「すみません!何も持ってないんです!」
「話きいてんのかよ」
苛立ったように地面で震えている俺の顔を無理矢理押し上げた男は、
驚いたように目を一瞬丸くし、厭らしく笑った。
「…持ってんじゃねえか」
「…え?」
意味が分からず情けない表情で震えている俺に、男は言った。
「今日からお前は【ネズミ】じゃねぇ。
巡回者のトップ、ジンの奴隷だ」
俺がその言葉の意味を理解を要するまでの間に、上空を旋回していた鷹が一声、鳴いた。
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2020.9.20
書き始めてから期間が空きすぎて設定がブレブレなので少し修正を入れていきます。
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