異世界人と竜の姫

アデュスタム

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第6章 何故

02 光属性

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・・・65日目・・・


「おはようございますコースケ様」
 いつもどおりミュゼリアは功助の部屋のドアをノックし中へと入った。
「ああ、おはようミュゼ」
 今起きたばかりの功助にミュゼリアはクスリと笑った。
「コースケ様。頭の後ろの髪が飛び跳ねてますよ」
「へ?あはは、そうだな。けっこう跳ねてるなこれ」
 手櫛で髪を撫でつけるがすぐに跳ねてしまう。
「お水つけないときちんとなりそうにないですね。コースケ様、こちらにどうぞ」
 ミュゼリアは功助を洗面台に連れていくと後頭部に少し水をつけて備え付けの櫛で功助の髪を梳かす。
「はい。これでまっすぐになりましたよ」
「あはは。ありがとうミュゼ」
「さてコースケ様。朝食の準備をいたしますので少しお待ちくださいね」
「うん」
 ソファーに座りテキパキと食事の準備をするミュゼリアを見ていると、そうだ!とミュゼリアが功助を見た。
「ん?なんだミュゼ」
「報告するのを忘れていました。もうしわけございません。えーと、フログス伯爵、いえ、フログス子爵様の幽閉が今朝開始されました」
「フログス子爵の?」
「はい。ここ白竜城の北のはずれにある小さな塔の地下室だそうです」
「そうか。それでフログス子爵の様子ってわかる?」
「えーと、兄上に聞いたのですがものすごく低姿勢で兄上どころか下働きの者にも頭を下げたらしいです。幽閉の塔の見張りの兵士さんにも頭を下げてよろしくお願いしますって言ったそうです」
「へえ、そうなんだ。……改めて思うけど、あの契約の紋章って恐ろしいものだったんだな。フログス子爵は温厚な人だってバスティーアさんも言ってたし。それをあんな邪悪に変えるんだから」
「はい。私もそう思います。でももう紋章で苦しむことはないのです。フログス子爵様もホッとなされてると思います」
 ミュゼリアはティーカップにポットから熱い紅茶を入れながら微笑んだ。
「そうだな。うん、そうだな」
 どうぞお召し上がりくださいと言うミュゼリアに微笑むと功助は朝食を開始した。

  コンコンコン。
 壁の時計が8時を指した頃いつものようにドアをノックする音がして少女の声が聞こえた。
「コースケ隊長。お迎えにまいりました」
「あれ?今日はあの二人組じゃないぞ。一人みたいだ。えーと、この声は…」
 功助が声の主を思い出そうとしていたが思い出す前にミュゼリアが返事をしドアを開けた。
「おはようございますコースケ隊長。おはようございますミュゼリアさん」
 入ってきたのはグレーの髪にグレーの瞳のおっとり系魔法師のカレットだった。
「ああ、おはよう。今日はカレットがお迎え?」
「はい。本日からは魔法師隊の隊員が順番にコースケ隊長のお迎えをすることになりました。まず最初は私、カレットです。コースケ隊長、本日もよろしくお願いします」
 とペコリと頭を下げた。
「へえ、そんなことになったのか…。ま、まあ、お迎えありがとうカレット」
「いえ。それではコースケ隊長参りましょう」
「あ、うん。それじゃ行こうかミュゼ」
「はい」
 三人は部屋を出るとカレットの先導で魔法師隊控室に向かった。

「突然カレットが迎えに来て驚きましたよシャリーナさん」
「うふふ。そうでしょ。でも日替わりで可愛い女の子がお迎えに来てくれるなんてうれしいでしょ?」
 とクスクス笑うシャリーナ。
「あ、いえ、あの…。ま、いえ、そんなことは……」
「そう。でもうれしそうに見えるのはあたしだけかしら?ねえミュゼちゃん」
「えっ、あ、はい。そうですね。いいんじゃないですかコースケ様。ただのお迎えですし…」
 ミュゼリアも苦笑している。
「あはは。ま、まあ。で、なんでこうなったんです?」
 功助は頬をかくとお茶を呑むシャリーナに尋ねた。
「まあ、イリスとモーザへのかわいい嫉妬かしら」
「イリスとモーザへの?なんですかそれ?」
 首を傾げてシャリーナを見た。
「気づいてないみたいね。ミュゼちゃんはわかるわよね」
「は、はい」
 急にふられてあわてて返事をするミュゼリア。
「そうですね。私も他の隊員の方々の気持ちはわかりますよ。コースケ様、本当にわからないんですか?」
 苦笑し功助を見るが、腕を組んでわからなさそうな顔を見て、また苦笑するミュゼリア。
「ダメね」
「はい。ダメですね」
 シャリーナとミュゼリアは互いに目を合わすと肩を竦めて苦笑した。
「……?」
 やはりわかっていない功助だった。

「気をつけぇ!」
 訓練場にラナーシア副隊長の掛け声が響く 。
「正規隊員二十名は5対5ずつになり各種フォーメーションの練度を上げろ。そして新入隊員十名は1対複数での訓練。そして治癒術師十名は基礎訓練。見習い十名は訓練場をまずは十周走れ。その後コースケ隊長と模擬戦闘だ。では訓練開始!」
「はい!」
総勢五十名の魔法師隊隊員が広い訓練場に散らばり午前の訓練を開始した。

「ラナーシア副隊長、カレットってすごいんですね」
 新入隊員のカレットの訓練を見て功助は感嘆した。
「はい。新入隊員の中でも群を抜いております。おっとりしてるようでけっこう俊敏に動いてますし、器用なんです」
 とラナーシア。
 今カレットは一人で二人を相手している。相手の名はラシークとジオラという魔法師だ。
 ラシークの放った火炎球ファイヤーボールを左手で構築した水壁アクアウオールで相殺すると俊二に右手で作った|風刃(ウインドカッター)をジオラに打ち出す
 。ジオラはそれを横に飛び退くことで避けるがカレットは左手で火炎球を相殺した水壁をジオラに向かって飛ばす
 。ジオラは飛んできた水壁を風弾ウインドーインパクトで 飛散させた
 。だがその時には目の前に迫ってきていたカレットに風塊ウインドソリッドをぶつけられ後方に吹っ飛んで行った。
 ラシークもじっとはしていなかった。ジオラが吹っ飛ばされた時にはカレットの後ろから火炎剣フレアソードを構え振りおろした。
 だがカレットに当たる寸前で火炎剣は何かにぶつかったように止まった。カレットは障壁を張っていたのでまったくの無傷。カレットは振り向くと同時にこちらも風塊を放ちラシークも吹き飛ばした。
「なかなかやりますねカレット。俺には動きに無駄がないように見えます」
「はい、確かにいい動きはしていますが、最後背後からの攻撃を受けたのが気になります」
「へ?でも、障壁をうまく使って…」
 うまく使ってたじゃないですかと言いかけた功助に軽く首を振るラナーシア。
「確かにラシークの火炎剣を受け止めてはいましたが、これがもし私やコースケ隊長、シャリーナ隊長相手であれば簡単に突破され脳天から真っ二つになってました」
「うーん…。ま、まあ、俺のことは置いといて。確かに自分より上位の使い手であれば真っ二つだったかもしれませんね」
「はい。しかし、カレットの流れるような動きはやはり他の新入隊員とは一味違います。正規隊員に入るのも時間の問題かと」
 顎に手をやり吹っ飛んでいった仲間に手を貸すカレットをじっと見るラナーシア。
「そうですね」
 と再び訓練を開始したカレットたちを見る功助。

「コ…、コーシュケ隊長。訓練場十周終わりまちたぁ。ぜえぜえぜえぜえ」
 ふらふらの足取りで功助たちに近づいてきたのは見習い魔法師のイリスだった。
「わかった。でもイリス、フラフラだなお前。あはは」
「そ、そりゃそうですよコーシュケ隊長。十周なんてきついきつい。ほんともう倒れそうでしゅ」
 と言って地面にべちゃっと座り込んだ。
「あはは、そうだよな。それじゃ10分休憩したら模擬戦始めようか」
「ええええっ!10分しかお休みできないんでしゅかあぁぁぁぁ!」
 まるでこの世の終わりのような顔をするイリス。
「わかったわかった。15分後にしよっか。ならいいか?」
「はいっ!15分語ですねっ!」
「ああ」
「ねえみんなぁ、休憩15分になったよおぉぉぉぉ!」
 イリスは立ち上がると仲間たちの方に走りながらうれしそうに叫んだ。
「元気だな……」
「やられましたねコースケ隊長」
 苦笑する功助とラナーシア。

午前の訓練が終わりミーティングをする功助たち。
「訓練、どうだったダーリン」
「はい。えーと、カレットの動きはとてもいいんじゃないかな。ただほんの少しだけですが、自分の魔法を過信しているように見受けられますね。相手が攻撃してきても避けずに障壁で対処している。少し横に移動すればかわせるのにわざと攻撃を受けて障壁で受けてました。まあ、相手の力量がわかっているならいいんですけどね」
「そう。ねえラナーシア、他の隊員たちはどう?」
「はい。みんな基礎は固まってきてると思います。考えるより早く身体が動いてるように見えました」
「そう。んじゃダーリン、見習いたちはどう?」
「はい。あの四人組はいいですね。やはりこないだ黒い目玉を相手にしたのが効いてると思いますよ」
「ふふふ。やっぱり十日の訓練より一日の実践ってね。いい経験になったわねあの娘たち」
 と少しうれしそうなシャリーナ。
「うーん」
 頭の後ろで手を組み、椅子の背もたれに体重をかけて伸びをするシャリーナ。
「さあ、そろそろお昼にしましょうか」
 「そうですね」
 ミーティングを終えると四人は控室を出た。

「コースケ様。すぐにお昼の用意をいたしますのでほんの少しだけお待ちください」
 頭を下げると廊下に飛び出していくミュゼリア。ドタドタと足音がして、
  ウギャッ!
  ドタッ!
 ドアをそっと開けて廊下を見ると立ち上がりながらお尻を摩るミュゼリアと目が合った。
「あはっ、あはは。少しお待ちください。あはは」
 顔を真っ赤にしてミュゼリアは再び走り出した。
「はは。お約束になったのかこれは」
 静かにドアを閉める功助。

「お待たせいたしました。あの、コースケ様、今バスティーア様から連絡がありました」
 数分後、ワゴンを押してミュゼリアが戻ってくるとうれしそうに功助に報告する。
「バスティーアさんから?なんだろ」
「えと、あのスマホのことで」
「スマホの?もしかして」
「はい。本日夕刻にリペアさんがお届けにくるとのことです」
「そっか。動くようになったのかな」
「どうなんでしょうね。でも、たぶんそうなんじゃないかと。さ、コースケ様食事の用意が整いました。どうぞお召し上がりください」
「あ、うん、ありがとう」
 功助はテーブルの前に座るといただきますと手を合わせた。


「へえ、あのスマホがなおったって?なんか楽しみ。ねえねえダーリン、私も見に行っていい?ねえねえ」
 スマホが治ったらしいと功助が報告するとシャリーナはうれしそうに功助の腕に抱き着くとその爆乳にムギュッと挟み込んだ。
「あ、あのシャリーナさん。わ、わかりました、わかりましたから手を放してもらえると落ち着くんですが」
「うふっ。もしかしてダーリン」
 と視線を下に向けるシャリーナ。
「うーん。まだか…」
 とますます挟み込んだ腕に爆乳をムニュムニュと押し付けた。
「ちょ、ちょっとシャリーナさん」
  パッコーン!」
「あいでっ!」
 功助の腕を話両手で頭を抑えると涙目で殴った相手をうらめしそうに見た。
「この変態エロ乳女!いい加減にしなさいっ!」
 頭を押さえしゃがみこんでるシャリーナを睨むラナーシア。その手にはスリッパが握られていた。
「た、ただただただただの冗談よ冗談。そ、そんなに怒らなくても、ね、ね、ラナーシアさん。落ち着きましょうよ、ね」
 座ったまま後退りするシャリーナを一歩、また一歩とゆっくり追いかけるラナーシア。
「……」
 無言でシャリーナを睨むラナーシア。
「ご、ごめんって。ね、ラナーシアさん。ね、ね。自重しますから、ね!」
 頭を抱えて蒼白のシャリーナ。
「’自重’なんですね。’しない’とは言わないんですね」
 ふうと息を吐くとスリッパを放り投げた。
「あ、あははは」
 頭を押さえて引きつった笑いをするシャリーナの首筋には一筋の汗がたら~り。


 訓練も終わり自室に戻った功助とミュゼリア。数分もたたないうちにその部屋のドアがコンコンコンと叩かれた。
「お邪魔ぁ!」
「失礼します」
 入ってきたのはシャリーナとラナーシアだ。
 中に入るとキョロキョロするシャリーナ。
「あれ?ミュゼちゃんは?」
「ミュゼは今バスティーアさんのところです」
「ふーん」
 そういいながらシャリーナとラナーシアは功助の前のソファーに座る。
「もうすぐ届くみたいですけど」
「ここに持ってくるのでしょうか?」
 ラナーシアが功助に尋ねると功助は首をひねったが、
「ううん。たぶん違う部屋だと思いますよ」
 そんなことを話しているとドアが叩かれた。
「お待たせいたしましたコースケ様。スマホが届きましたのでこちらにお越しください」
 入ってきたミュゼリアがペコリと頭を下げるとお二人もどうぞとドアを全開にした。

 案内されたのは前回と同じ部屋だった。功助たちが部屋に入るとソファーに座っていた魔具師のリペアは規律し毛足の長いカーペットに片膝を付き叩頭した。
「コースケ様。長らくお待たせいたしました。お預かりいたしました異世界の魔具、このリペア精一杯お役にたてたと自負しております」
「そうですか。それはありがとうございますリペアさん。早速ですが見せてください」
「はっ!」
 再度深く叩頭するとリペアは机に置いたとても立派な箱に手を伸ばした。
 両手で抱えるほどのその箱は色彩鮮やかな布で包まれていた。その布を拡げると立派な箱が姿を現した。リペアはその箱をそっと開けたのだった。だがその中にはまたも立派な箱が。そしてその箱を開けるとまたもや箱が。そしてその箱を開けるとようやく白く柔らかそうな布に包まれた物があった。リペアはそれを細心の注意を払いながら取り出した。
「どうぞお確かめください」
 リペアは包まれていた布をゆっくりと取ると両手でうやうやしく掲げ功助に頭をさげながら差し出した。
「あ、うん。ありがとうございます」
 功助は久しぶりに戻ってきたスマホを受け取ると早速電源を入れた。電源を押し数秒で今まで真っ黒だったディスプレイが発光しOSが立ち上がった。
「うわあ。復活したぞこれ。ありがとうございますリペアさん」
「ははっ。もったいないお言葉、恐悦至極に存じます!」
 リペアは片膝を付き叩頭した。
「あ、あはは」
 どうしたもんかとミュゼリアを見る功助。だがミュゼリアは当然という目をリペアに向けていた。
「どうどうどう?ねえダーリン。もう使えるのそのスマホ!ねえねえ!」
 功助の持つスマホを横から覗き込むシャリーナ。
「えっ、あっ、はい。えーと」
 まずはバッテリー残量を見る。80パーセントだった。そしてやはり電波は圏外だった。
「やっぱりな。でも他の機能は使えそうだ。シャリーナさん、ちょっと後ろに下がってそこでじっとしてて」
「へ?あ、うん」
 少しドキドキしながらシャリーナは功助に言われたとおり数歩下がると気を付けをした。
 功助はカメラを起動させるとシャリーナにレンズを向けた。そしてディスプレイをタップした。
  カシャッ!
 ピカッとフラッシュが炊かれ同時にシャッターを切る音がするとシャリーナは一歩後退った。
「なななな何したの今?!もしかして光魔法?」
「あはは。いえ、違います。大丈夫ですよ。ほら」
 功助はスマホを操作しディスプレイをシャリーナに向けた。
「あっ!ああああ!あたあたあたあたしがいるぅ!」
 指を差してわたわたしている。他の者も「えっ!」と言ってスマホのディスプレイを見ると驚いた。
「コココココ」
「鶏かミュゼは?」
「いえ、違います私は竜族です…って、以前にも同じことがあったような……。って、そうじゃなくてなんですかこれは!」
「す、すごいですコースケ隊長。生き写しのようなシャリーナ隊長の姿があんな一瞬で!もしこのような超精密な絵を絵師に描かせたなら半年か一年はかかるのではないでしょうか…。それをあんな瞬く間で…」
 目を見開いて驚くラナーシア。
「ほお、そのように使うのですか!すばらしい!まさに異世界の魔具!」
 リペアは感動し両手がわなわなと震えていた。
「これは写真と言ってその場の風景とかを一瞬で写すものです。こんなこともできますよ」
 とまたスマホを操作する。
「それじゃ今度はミュゼ」
「は、はい」
「ちょっと何か魔法を使ってくれるかな?できれば説明付で」
「へ?は、はい。えと、それなら、えと、水魔法を…」
「それじゃ号令かけるよ。三、二、一、スタート!」
 功助はまたディスプレイをタップした。
 ミュゼリアは両掌に魔力を集中させてテニスボールほどの大きさの水球を作り出した。
「えと、これは水の球です。ウォーターボールというもので花壇の水やりや水まきに便利です。呑むこともできます」
 そういうとミュゼリアは水球に口を付けるとズズッとすすりゴクンと飲み込んだ。
「はい、オッケー」
「ふう。それでどうなったんですか?」
 功助は再びスマホを操作しそのディスプレイをみんなによく見えるようにした。
 するとさっきミュゼリアが実演した水魔法の動画が再生された。
『えと、これは水の球です。ウォーターボールというもので花壇の水やりや水まきに便利です。呑むこともできます』
 水球に口を付けて飲む姿も再生された。
 これにはまた全員驚いた。みんながみんな食いつくようにディスプレイに見入り目を見開き口をポカンと開けていた。
「コココココ」
「やっぱりミュゼは鶏だな。うん」
 してやったりの顔の功助。
「だから私は竜族で…。じゃなくてですね。コースケ様っ、これっ、これ、すごい魔具なんですね。私感動して驚いてびっくりして目玉が飛び出そうになって…。つまり、夢を見ているようです」
 興奮いまだ冷めずのミュゼリア。他の者も同じのようでラナーシアは突っ立ったまま呆然としているし魔具師のリペアは全身を使い驚きを表現している。
「こんなこともできるぞ」
 今度功助はスマホを操作し今撮った動画をスロー再生させた。
うわっ!」
 みんなが驚いた。水の球が徐々にできてくる様子がスローで再生されたのだ。
 掌の上に小さな水の滴が一粒発生した。そしてそれが徐々に大きくなりテニスボールほどの水球ができていく様子が映し出された。
「い、一瞬で水球ができると思ってたのですがこんなふうにできるのですね!」
 ラナーシアもディスプレイを覗き興奮している。
 だがすぐに大騒ぎするシャリーナが少し静かなのが気になった功助が見たものは……。
 腰を小刻みに揺らし頬を紅くしてうっとりとした目で功助を見ているシャリーナの姿だった。
「シャ…シャリーナさん…?」
 口を半開きにして功助を見つめる目はとても色っぽくそして艶めかしかった。
「……ダーリン……」
「は、はい…?」
 半歩後退る。
「あたし…、あたし…。イッちゃった…」
「へ?」
 その場でペタンと女の子座りをするシャリーナ。いまだ功助を色っぽい目で見つめている。
「そ、そのスマホ……。最っ高よ!」
 そう言うとパタンと後ろに倒れた。
 ゴンッと頭と床がぶつかる音がしたがそのまま目を回したようだった。
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