ただ、笑ってほしいだけ

古川優亜

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それから、ずっと王子様に質問していった。
最初は何も言わなかったけどずっと、膝の上に座っていたら少しづつ教えてくれた。
「あ、3時になった!!」
慌てて王子様の上から降りて、リンゴと果物ナイフを取り出す。
リンゴの皮をむこうとすれば慌てて止められる。
「何してる?」
「リンゴの皮をむこうとしてる。」
右手にナイフ、左手にリンゴを持った状態で固まる。
焦ったように震えるように肩を掴まれ。
「お、王子様?」
頭を下げて何かをこらえるように。
膝の上にナイフもリンゴも置いてそっと王子様を抱きしめる。


ブライアーside
俺の隣でぐっすりと眠る小さな少女。
名前は知らない。
でも、なぜか懐かれた。
この女の子は俺のことをずっと「王子様」と呼んでいる。
飯を持ってきて、いつもはついてないパンが付いていたり。
俺には理解できないことがかなりある。
それでも、いつも笑顔で気が付いたら俺の隣に並ぶようになっていた。
「まさか、手当てしただけで懐くとはなぁ。」
スカーフを膝に巻いただけ。
それなのに次の日からニコニコと近づくようになって。
ついさっきだってほら。
嫌なことを思い出して馬鹿みたいに震えてる俺を見て。
何も言わずに抱きしめたりして。
こいつは何故俺の所に来た?
あいつらの差し金か??
「・・・あー、考えてもわかんねぇ。」
俺はブランケットを女の子にかけて迎いのソファに横になる。
「いい夢、見ろよ。」
仰向けになって目を閉じる。
するとなぜかすぐに眠気が襲ってきた。



???side
「NO.3068。」
私は頭を下に下げる。
許しが得るまで顔をあげてはいけない。
「計画通りに実行しろ。」
「御意。」
目を閉じて次の命令を聞く。
「次はーーーーーーーーーーーだ。」
「はっ!!」





シャーロットside
「王子様、寝ちゃったのかぁ。」
もう夕方だし、戻ろうかなぁ。
私がかぶっていた毛布を王子様にかける。
「おやすみなさい、王子様。よい夢を。」
王子様の頭を優しくなでておでこにそっとキスをする。
「また明日来るね。」
私は走って母屋に戻る。
「おかえり、シャーロット。」
「楽しかったかい?」
皆と楽しく会話をしながら使用人専用の食堂に行く。
「今日はシャーロットの好きな肉だぞ!!」
「やった!!!」
いつも明るい私。
元気でみんなから可愛がられる。
それが私なんだ。
「・・・。王子様は今頃何してるのかな。」
小さな声で呟き窓の景色を見る。
満点の星。
優しく光る月。
こんなに空は賑やかで一人じゃないのに。
それなのに、どうして王子様はいつも独りぼっちなんだろう。
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